真世界反乱編XIII:理性
照明も内装も何もかも破壊され、ところどころにホログラムや液晶の画面が光る、薄暗い通路を全身加速で駆け抜ける。だが・・・
───姉さん!!!姉さん!姉さん・・・あれ?なんで、こんな時に・・・ねむ・・・眠くなって・・・る?
早坂 零斗は突然の睡魔におそわれ、地面に転がり、眠りに落ちる。まるで気を失ったように。
ウィンディア・葉山・サイクロンの奇襲を庇った王里・ゴルドモンキー・天馬は、膝から崩れ落ちる。
───背中からの出血が止まらない・・・かなり深く切り込まれたんだ!
抱きしめるように、天馬を受け止めた九尾 夜留は、目つきの鋭い黒髪ショートのOLの姿に変身し、肉体再生で天馬の治療を試みるが・・・
「ヘタ、クソめッ!」
「悪かったね!」
ただでさえ、あまり使い慣れていない異能であることに加え、肉体再生は他者に使用すると再生効率が半減する為、天馬の出血量を抑えるので精一杯で、止血すらできていない。
「敵前でハグなんて、お熱いですねー。」
結界の中に満ちる暗闇に、銀色に浮かび上がるナイフを逆手に持ち換え、振り下ろすウィンディア。その刃は背中から天馬の心臓を刺し貫くはずだったが・・・
「やむを、得ん・・・緊急、事態だッ!」
その瞬間、ウィンディアの視界がホワイトアウトするほどの黄色い閃光と共に、辺り一体が吹き飛ばされる。
「うっ!!!」
黒人のような巨大の男に変身して天馬をお姫様抱っこし、突風系で離脱する夜留。
「緊急事態とは言え、君が聖槍級光子物質を閃光弾代わりに使うなんて・・・」
「閃光弾を直視すれば、一時的な失明、視界の暗転、めまい、耳鳴り、吐き気など起きる。光子物質の火力と光量であの異常な暗闇を吹き飛ばしつつ、運良く目潰し出来れば、体勢を立て直す時間を稼げる。確かに、どこの誰ともわからん奴に聖槍級光子物質を使うのは、プライドが許さんが・・・プライドは盾にはならん。」
「そっか・・・変わったね。」
元教え子の成長に、少し方が緩む夜留。
「それより、いつまでこの体勢でいる?おろせ。」
「あっ、ごめん。」
黒い箱を開き、中の肉体再生が自分自身の傷を癒す。
「傷が治り次第、離脱だ。わざわざ面倒な奴の相手をする事はない。別のルートを通って、早坂 一途を奪還する。」
「わかった。」
「ああ、もう止まれねえ・・・」
黒い炎の翼が朝日 焔の理性を侵食していく。
「ハハ、ハハハ!ヴァハハハハハハハハハ!ア、ア!殺せ!ぜんぶぜーんぶ!ぶっ壊して!ぶっ殺して!」
焔は自らの理性を蝕む、黒い衝動に身を委ねる。
「あ、あいつ!?なんかよくわからねえが、力に呑まれてやがる!」
宵崎 桜雅の銃から放たれる弾丸が、黒い炎を貫く。
「オイコラ第二位ィ!テメェ、自分から理性投げ出してんじゃねえ!ただでさえ目の前には人外のバケモンだ!テメェに暴れられたら、もう手に負えねえぞ!」
「・・・。」
驚愕の表情で沈黙する焔。
「理性ねえ状態で何ができんだよ!コントロールできねえ強さは本当の強さじゃねえぞ!」
「・・・チッ!ただのヤクザが、言ってくれるじゃねえか!」
ニヤリと凶悪な笑みを浮かべる焔。
───確かに暴走状態で制御が効かないと、場合によっては味方を巻き込みかねない。それに・・・
『あのね、暴走は本人が制御するものだよ。異能を進化させることが重要で、それ以外は些事さ。』
───あのクソ親父がああいうって事は、制御自体は可能なのだろう。
「やってやる!この炎を超えてやる!」
「そんな状態で勝てるんですか?」
神奈川 奈白の攻撃を翼で受ける。
「あ?誰に向かって物言ってやがんだ!」
火と風の天使の力がぶつかり合う。
「俺は・・・朝日焔だ!」
風のロナズマを突き破り、炎を纏う拳が奈白の横顔を穿つ。
「ッ!」
地面を転がる風の天使。
「痛い・・・」
起き上がりつつ距離を取り、手刀で空を裂く奈白。その手刀に沿うように風の刃が現れ、焔と桜雅目掛けて射出される。
「出番だぞ、ヤクザ!」
「宵崎桜雅様だ!クソガキィ!」
射出された八発の斬撃を一発一発撃ち落としていく桜雅。
「見えない分、早坂零斗の斬撃の方がまだ手強かったなァ!」
隙をつき、接近する焔。
蹴り飛ばされ、奈白は再び地面を転がる。
「・・・黒い翼。科学天使として未完成な筈なのに、どうしてっ!?」
「本体性能の差だな。この力はお前の方が使いこなしてるのかも知れねえが、ランクEX第二位って看板背負ってんだ。」
掌サイズの光球で隙を突こうとする奈白。
「やめとけ。」
桜雅の弾丸が奈白の掌ごと、光球を貫く。
───どう考えても、即席コンビのはずなのにこの連携力!お互いがお互いの隙を補い合ってる。・・・それに、明らかに宵崎桜雅の弾丸の威力が上がってる。どういう原理?
躱した援護射撃の、着弾点の足元地面に転がる弾丸を見る奈白。
「!?」
そこに転がっていたのは、明らかにハンドガンでは打てなそうな大型の弾丸。銃に詳しくない奈白でも、物理的にサイズが合わないのは流石にわかる。
───そうか、銃から弾丸が発射されてから相手に着弾するまでの間に、錬鉄系で弾丸を作り変えたんだ。シンプルだけど、質量の変化に弾道も歪むはず、それをあんな正確に・・・
「投降しろ。これ以上やっても時間の無駄だ。」
「うちの部下を殺ったんだ。どう落とし前つけてくれんだ?」
「お前に渡すんじゃねえよ、高専側で預かる。」
「ああ?テメェ、後から来といてどう言うつもりだ?」
「俺が来なかったらお前死んでただろ。」
「・・・チッ!一つ貸しだがらな、第二位。」
「朝日焔だ。名前で呼んで欲しかったら、そっちも名前で呼べ。」
「ハッ!言うじゃねえか、朝日。」
「んだよ宵崎。」
「なんもねえよ。」
「・・・高専に連絡して捕縛要員を寄越させる。それまで、コイツを捕えてろ。悪いが、俺が陽があるのはこの先だ。」
「はあ、ああ行け行け。ったく、この俺を見張りなんぞに使いやがって、高く着くぞ?」
「そうかよ・・・」
21:02、渋谷駅最深部。
「やっぱり、来たんだな・・・律神。」
「そりゃ、元上司がテロなんてしてたら無視なんてできませんよ・・・ジョーカーさん。」
向かい合う、元上司と部下。元の渋谷駅地下の面影は無く、破壊し尽くされた設備に、照明が辛うじて二〜三個生きてる程度の明かりが薄暗く照らし出すホームは、所々崩壊して、線路に瓦礫が転がっている。
水の真アックア。いや、ジョーカー・ジョーダンは、戦闘体勢は取らず、得木 律神との話し合いを選ぶ。
「久しぶりだな。あんなによくしてやってたのに、裏切りやがって。」




