真世界反乱編Ⅻ:取り戻すための戦い
「空想黎騎・全身加速!!!」
「全身加速?ハッタリだね!君の能力である硬化は状態を保つ、いわば停止の力だ。それをどう応用したら加速になるんだ!」
土御門 満は土の杭を生み出し、じわじわと宙に漂わせていく。その背後から滲み出す気配は、今にも幻術を放つかのように相手の意識を乱す。
「その硬化を剥いで、杭でハニカム構造にしやるよ!」
零斗に狙いを定め幻術を放つ満。
「あ?居ない!」
ほんの一瞬の瞬きの隙に姿を消した零斗を探し、辺りを見回すも、自らが破壊した渋谷の街の瓦礫ばかりで、零斗は見つからない。
「どこへ・・・」
───まさか、僕との戦闘を断念して離脱した?だとしたら、アックアの方に・・・
向かった。その思考を遮るように、実体化した風の魔力の刃が、満の背後から心臓を貫く。
「何ッ!?」
再生魔術の自動行使が刻まれている心臓を貫かれ、少し焦る満。
「い、いやまだだ。魔術がダメなら異能で・・・」
異能、肉体再生で心臓を修復し始めた瞬間、今度は左腕を切り落とされる。
「なっ!」
続いて右腕、左脚、右脚。四肢を切り落とした後は、首を残して圧倒的な速度で満の胴体をみじん切りにしていく。
「遅い。」
その間、わずか1秒。音すらも置き去りにするような包丁さばきで、だるまにする零斗。
「ッ!」
首に刃を振るう直前、満の背で隠れた地面から土の杭を打ち出し、自身を打ち上げる。
「上っ!?」
打ち上げながらオートキャストじゃない、素の再生魔術で心臓を再生し、心臓に刻まれたオートキャストが四肢を生やす。
下から向かってくる零斗。その気迫をそのまま固定し、不可視の刃を生み出す。
「斬!」
無数の斬撃が再び満を切り刻む。
───やっぱり早い!再生が追いつかない!
「グッ!」
───切り刻まれるッ!
「ぐあああああああああああああああああ!!!」
鮮血を撒き散らしながら、落下する人型。
それには一瞥もくれず、零斗は一途の元へ急ぐ。
「姉さんっ!・・・」
生体プログラムもズタズタ、魔力切れで再生魔術も上手く使えない状態で、幻術が切れてショック死しそうなほどの痛みの中、それでもなんとか体を再生させようと足掻く満。
「ぐッ、痛い・・・クソ、あのガキッ!絶対殺してやるッ!」
「それは無理だ。」
痛みにもがき苦しむ満の顔を覗き込む、光と闇の真。
「ッ!なんで見下してるのかなあ!気に入らない!最期にその仮面剥いでやる!!!」
残された魔力で生み出した小さな土の杭が、光と闇の真の仮面を弾き飛ばす。
「は? なんで君が光と闇の真なんだ?」
土御門満は灰色の閃光と共に、骨すら残さず消え去った。
フードをより深く被り、弾かれた仮面を拾う光と闇の真。
仮面つけ直し、呟く。
「加速の力、固定の力、どちらも片鱗でしかない。世界はまだ、その力を隠している。その時が来るまで、固定硬化の本当の力を。」
電磁バリア越しに月の光が差し込んでくる。
戦場となったこの場所の凄惨さが、零斗と満の戦いの激しさを物語っている。
その光景を眺めながら、光と闇の真は拳を握りしめる。
「大丈夫。その時が来ても、零斗は私が守る。」
低く重く艶やかな声の中に、決意が滲んでいた。
「おい、なぜそう急ぐ?敵の首は跳ね飛ばしたぞ!」
王里・ゴルドモンキー・天馬は九尾 夜留に手をひかれ、戦場を離れる。
「貴方は魔術師のことを知らなすぎる。いえ、貴方を責めているわけではないのだけど・・・本当に優秀な魔術ってのは、首を刎ねても死なないのよ。」
「何ィ!?」
「備えてるの!神経の中に魔力を蓄える魔術回路を忍ばせて、蓄えた魔力を使って魔術を使い脳を始めとした細胞組織に酸素を供給する。ああ言うのを殺すには脳を潰すか、魔術回路を破壊するかしないと、本当の意味では殺せない。」
───それに、アイツは悪魔契約とか言うのもしてた。50年の寿命と引き換えに、肉体の再生力を高めるらしい。
「だから早くこの結界から抜けないと。この結界の中はアイツに有利すぎる。」
「みーつけた。」
「夜留!」
咄嗟に夜留を庇う天馬。結界に満ちた闇を裂くように、銀色の光が天馬の背中を撫でる。
「天馬君!」
「ぐッ!小癪な・・・」
「逃さないよー。」
暗闇から薄ら笑いが張り付いたウィンディアの顔が浮かび上がる。
風の科学天使。その認識で間違いないだろう。目の前の神々しい女は。
「荒々しいですね。」
「ッ!余裕ぶっこいてんじゃねえ!」
風のロナズマと朝日 焔の炎がぶつかり合う。
「あの第二位が押されてやがる!」
神奈川 奈白が、風のロナズマの光球や八極拳のような格闘術で、能力特化な焔を追い詰めて行く。
「グハッ!!!」
──なんなんだ、クソッ!動きは八極拳みてえだが、みぞおちやら喉やら気管やら狙いやがって!もはや、八極拳の皮を被った殺人拳じゃねえか!
八極拳に気を取られた隙を狙い、奈白の光球が焔を襲う。
「ガハッ!・・・ッ、ク、ソッ!」
「異能演算能力と異能の使い方は、ランクEX第二位なだけあって確かにすごいですけど、それだけですね。高専の異能力者にありがちな、能力頼りの戦い方そのものです。」
床に伏す焔を見下ろしながら、奈白はほくそ笑む。
「そのタイプなら、拳の方が早いぐらい間合いを詰めれば勝てます。本体性能が違いますから。」
───ああ、白い竜巻の翼にさえ目を瞑れば、普通のJKに見えるが、こいつは科学天使。そもそも人間を辞めた存在だったな。
宵崎 桜雅の援護射撃には目にもくれず、手刀を振り上げる。
「さようなら。第二・・・」
「こんッなとこでッ!時かッ・・・潰してるわけには、行かねえんだよッ!」
一途が捕えられた。たったそれだけの事が、どれだけの波紋を呼ぶか。一途を警戒して侵攻してこなかった敵国が「一途が居ないなら」と、侵攻してくるかもしれない。
───こういうのは、実際に勝てるかどうかじゃない。「勝てるかも」と思われたらバカは攻め込んでくる。国益を損なうのは間違いない。何より、礼夢の日常が壊される!
焔の目つきがより鋭くなる。纏う炎は黒くなり翼のように背後に漂い始める。
「なっ・・・どうしてあなたがその力を!?」
「ああ、もう止まれねえ・・・」
それは、あの時と同じ暴走状態。




