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SEXをしないと出られない部屋に一人で入れられた男の話。

作者: 生田菜摘

──1日目── 

 目が覚めると[SEXしないと出られない部屋]にいた。周囲を見回しても他に誰もいない。二次創作で死ぬほどみた部屋だが入ったのは初めてだ。そもそもこの部屋に一人で入れられたところでどうしろというんだ。こういうのは、両片思いでもだもだしている幼馴染とか喧嘩ばかりで素直になれない恋人とかが入れられているのを見てにやにやするものではないのか。とりあえず何かしないことには出られないだろうからいろいろと試してみることにした。


──2日目── 

 オナニーしてみたが特に変化はなかった。食事は勝手に出てくる。


──3日目── 

 進展なし

──4日目── 

進展なし


──5日目── 

 食事や睡眠はどうにかなっているから生きてはいけるが、変化がなくて精神が死にそうだ。最低限のもの以外は出てこないので暇をつぶすこともできない。


──6日目── 

筋トレをしてみた。


──7日目── 

今日も筋トレだ!


──8日目── 

筋肉痛で動けない。おそらく一昨日の筋肉痛が遅れてきたのだろう。老化を感じる。


──9日目── 

筋肉痛がいくらかましになったので筋トレをする。


──10日目── 

筋トレをする。


──11日目── 

今日も筋トレをする。


──12日目── 

筋トレたのすい。


──13日目── 

筋肉っていいな。





──n日目── 

 あれからすることがなくてひたすら筋トレをした俺は最強の肉体を手に入れた。肩にはちっちゃい重機が乗ってるし、背中には鬼の目が刻まれていた血管はうねうねとマスクメロンのような模様を描いている。腹斜筋で大根もおろせそうだ。

 最初のころに諦めてからは外に出ようとすることもなく昼夜筋トレに明け暮れてきたが今なら扉も壊せそうな気がする。試してみるか。

「でやっ」

 扉は粉砕した。外は憎たらしいほどの青空だったが周りには何の建物も無かった。ここがどこであるか推測できそうなものは一切なく、どれだけ歩いたら人に会えるかもわからない。

 だが家に帰るために一歩前進したことは間違いない。これからどんな困難が襲い掛かるかわからないがこの鋼の肉体さえあれば倒れることはないだろう。俺は、部屋を出て自分の故郷を探す旅へと出た。──


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