彼氏がいつもイケメンで羨ましいでしょ⁉︎ってか、このマフラーなんなのよ⁈
私は、とにかくイケメンが大好き!
やっぱり顔だよね‼︎とにかく見た目が大事
でしょ⁉︎
「香織は、いっつもイケメンの彼氏がいて羨
ましいな〜。」
「うん。まぁ〜ねぇ〜。フフッ。」
いつもみんなが羨むようなイケメンをゲッ
トしまくり。
「トウヤくーん。」
「おー、香織。」
「ねー、今日はどこ行く〜⁇」
「うー…ん。あんまり金ねーからなー。」
「えーっ、つまんなーい。どっか行こーよー。
あと、とりあえずお腹すいたぁ。」
「しゃーねーな。とりあえず飯行くか。」
「わぁ〜い」
イケメンだしやっさしーい。
でも…それもはじめだけ。
付き合いだすとたいがいの男が携帯見なが
らご飯を食べる。
そして、私の話なんて適当にうんうんって
いう。
そして、やたらと女からの電話が多い。
そして、めっちゃ楽しそうに笑う。
私となんか目すら合わさないくせに。
最近は、誘っても忙しいって言って会って
ももらえない。
「もしもし?」
「ん?」
「なんだ。電話出れんじゃん。暇ならなんで
私とのデート断ったのよ」
「あー…、ほんとのこと言うと金欠」
「はぁ?金欠でデートしないとかおかしくな
い⁉︎お金ないなりに楽しませる方法とか考
えたらどうなの⁉︎」
「うー…ん。つーかさ、お前といてもお金か
かるし楽しくねーんだよなー。」
「は⁇」
「で、用事ないなら切るよ」
「えっ、彼女が会いたいって言ってんのにな
んなの⁉︎」
「つーか、彼女っていうかお前の場合女王さ
まだな。ごめん。オレやっぱ無理」
「えっ、ちょっ…」
シーン…
また振られた…。
んもー‼︎なんなのよー‼︎
よし‼︎こうなったらもっとイケメンゲット
するんだから!
かわいいお洋服に、キラキラメイク〜。
いたいたイケメン
「キャッ」
トスン
「おっ、大丈夫⁇」
「ごめんなさーい。アイタタタ…」
「えっ…ちょっと足挫いた?そこ座りなよ」
「はい。じゃあ、手貸していただけます?」
「うん。」
「はぁ〜…困ったなぁ。急いでこれポストに
入れなきゃならないのにー。」
「なら、オレがポスト探して入れてくるよ」
「わぁ〜、いいんですかぁ?」
「うん。オレのせいでつまずいたのかもしれ
ないし。」
「ありがとう〜」
「じゃ、そこで座って待ってて。」
「はぁ〜い」
数分後
「ポストに入れてきたよ」
「ありがと〜う。もう休んだら足大丈夫にな
りました。お礼に何か奢らせてください」
「えっ、いいよ。そんな大したことしてない
し」
「いえ、ダメです!それじゃ私の気がおさま
りませんから。」
そしてすかさず上目遣い。
「うん。ならこれから用事あるからまた後で
もいい?」
「はぁ〜い。じゃ連絡先交換しましょ」
「うん。」
ピコン
フフッ
早速イケメンゲット‼︎
そして次の週
「こんにちはぁ。この前は、どうもありがと
う」
ニコッ
そしてデートが順調に進む。
で、夕方人気の少ないところで
「ねー、チューしてよ?」
「えっ、あの…」
「んーっ」
顔で早くの催促♡
するとたいがいチューってしてくれる。
もう、私のモノ!
「ね〜、次いつ会えるー⁇」
「えと…、再来週とか⁈かな…」
「うん。じゃ連絡待ってるからぁ」
ニコッ
そしてまた友達に自慢。
「えーっ⁉︎あのイケメン彼氏と別れてもう新
しい彼氏ゲットしたのー⁉︎すごー‼︎」
「楽勝〜」
フフッ
もうすぐクリスマスだぁ。
「ねぇ、ねぇ、クリスマス一緒に過ごせるん
だよね⁈」
「あー…その日は大事な仕事があるから次の
日にお祝いしよ‼︎ね⁉︎」
「えー…、でも仕事なら仕方ないかぁ」
って言ってたのに、こっそり携帯見てみた
ら本命の女いるっぽい…。
なんで私を本命にしないわけ⁉︎
バカな男。
「ねー、やっぱり仕事休んでクリスマス私と
すごそう?ねー?おねがぁ〜い」
「ごめん!それは無理‼︎」
フン…。
つまんなーい。
だからクリスマスにたっくさん好きスタン
プ送ってやった。
私を本命にしなかった罰なんだから。
で、次の日
なんであの男待ち合わせに来ないのよ。
この私を寒空で待たせるなんてどういうつ
もり⁉︎
電話も繋がらない。
何⁉︎
私の何がいけないわけ⁉︎
ちょっと雪降ってきたんだけど⁉︎
風邪ひいたらどうしてくれんのさ‼︎
また振られたじゃん‼︎
フワッ
ン?
振り向くと知らない男性…。
何⁇
しかもイケメンじゃないし。
「え?」
「あの…さっきからずっと寒そうだったから
…そのマフラーさっき買った安モンだから
捨てて構わない。じゃ」
その人は、行ってしまった。
なんなの⁇
意味わかんない‼︎
でも…。
でもなんか…。
そのマフラーに顔をうずめて泣きながら帰
宅した。
家に帰り、こんなマフラー捨ててやる‼︎…
って思ったけど…捨てることができなかっ
た。
その日以来イケメンゲットする気力がなく
なった。
そもそも上っ面ばっかり好きになってもな。
私も上っ面ばっかりの人間なんだ…。
そんな付き合い方しても結局中身がさ…
中身が薄いとすぐ捨てられちゃうんだ。
みんなは、イケメンゲットでいいなーなん
て言ってたけど全然そんなことない。
なんなら、みんなこそ同じ彼氏とずっと付
き合ってて楽しそうじゃん。
私なんかより全然楽しそうじゃん‼︎
もうやーめた‼︎
本当はみんないいなぁなんていいながら、
いいなぁなんて思ってなかったのかもしれ
ない。
腹ん中じゃ
「バッカみた〜い。ただの見栄っ張りで、ハ
ートスッカスカじゃ〜ん」って思っていた
に違いない…。
なんで私は…
私は、今まで気づかなかったんだ…。
でも、あのマフラーをかけてくれたあの人
が私を変えてくれた。
もうその人に会う事もないけど、感謝して
いる。
一年後…
私は彼氏なし。
でも、全然寂しくない。
彼氏を作るのは、正直簡単な事だ。
しかし、本当に心から愛したり愛されない
限り一人でも全然楽しい。
だから、一年前ここにいた私とは別人よっ
て思いながらクリスマスの夜一人颯爽と歩
いていた。
あの彼のおかげだ。
「あのっ」
「えっ?」
振り向くと知らない男性。
誰?
「あっ…やっぱり大丈夫です…」
「ん?なんか見たことあるような…」
うーん
「あっ、あなた一年前このマフラーかけてく
れた方‼︎」
「はい…。覚えてくれてたんですね。しかも、
マフラー捨てていいって言ったのにまさか
使っていてくれてたなんて。」
「はい。どうしても捨てられなくて。それに
これすっごくあったかいんです」
「あー…」
「もしかしてこのマフラーお高いんじゃ」
「うーん…高いのかなぁ?よくわからないん
ですが、母がいつも寒い格好してないでこ
れつけなさいってくれたものなんです。」
「えっ、お母さんが。」
「はい。でも未使用ですから。」
「いえ、そういう事ではなくて。お母さんか
らのプレゼントをこんな知らない私なんか
に。」
「いいんです。」
彼は、かなしそうにうつむいた。
もしかして、相当大事なものだったんじゃ。
「あの、今更ですがお返しします。なんなら、
新しいもの買ってお返しを」
「いいんです。どうせつける気もなかったの
で。」
?
「マフラーお嫌いなんですか?」
「そのマフラー…みるとどうしても母の笑顔
が思い浮かんでダメなんです。だからあな
たに…見知らぬあなたがちょうど寒そうだ
ったので。捨てるわけにもいかず…。すみ
ません。」
「そうですか。お母さんから…」
ポロポロ
私は、涙がとまらなかった。
母を亡くす気持ちが痛いほどわかっていた
から。
十年前私も母を亡くしていた。
「あのっ、大丈夫ですか?」
「あっ、ごめんなさい。泣いたりして」
クリスマスに女を泣かせるなんてって街行
く人が白い目で彼を見た。
だから、彼の誤解を解くべく私は彼に
「ありがとう」
といい抱きついた。
すると驚きつつも彼も
「ありがとう」と言った。
それから彼とはよく連絡を取るようになり、
二年後
彼のお母さんのお墓の前で彼との結婚のご
挨拶させていただいた。
もちろんあのマフラーをまいてね。