表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/80

41.作戦会議?

「うーん、これ美味しいね。あ、そっちのも私に取ってくれない? はい、ありがとう。珍しい料理だね、これなんて言うの? へぇ、東の方の……。うん、美味しいね! 話は変わるけれど、この家リッチがいるだろ――。あ、焦らないでよ! 別に私何かをするつもりはないからさ! っていうかクラノスの素顔初めて見たけど――ははぁん、随分と華奢だね? 可愛いじゃないか!」


「……」


 すっごい不満そうな顔をしてクラノスが俺の方を睨んでいる。

 後一秒もギネカが喋り続けていたら、多分爆発するぞ。


「それでさぁ――」

「あぁ! なんでテメェがいやがるギネカ!」


 あっ、爆発した。

 テーブルを叩くのは……流石に我慢したようで、舌打ちと共に勢いよく立ち上がったクラノス。

 今にも胸ぐらを掴みに行ってしまいそうだが……それも自制したらしい。まぁ、ギネカとクラノスの小競り合いでも家が吹き飛ぶ可能性があるので大いに自制して欲しいわけだが。


「はい、粗茶ですが……」

「お、悪いね」

「雑魚は雑魚でなんで持てなしてんだよ!」

「えっ、お客様ですし――というか、雑魚じゃありません!」

「まぁまぁ、クラノス。ギネカも居た方がリグに対しての対処が容易になるだろ?」

「そーそ。仲良くしようぜ、クラノス?」

「……」


 不服そうだが、もう一度座り直した彼女。

 メイムがそういうならよぉ……みたいな感じだけど、まぁ、落ち着いたからヨシ!

 さてと、じゃあそろそろ本題に入るとしよう。じゃないと、クシフォスが寝てしまいそうだった。

 今でさえ、目が閉じつつある。


「クシフォス、起きてる?」

「――! うん、半分」

「じゃあ、完全に寝てしまう前に本題に入ろうか」


 と、俺はみんなをまとめた。

 こういう音頭を取るのは慣れてそうなギネカに任せたいのだけど、彼女は微動だにしないし……一応俺がパーティーリーダーだから花を持たせてくれているのかな?


「いえーい! 待ってましたー! ヒューヒュー!」


 あっ違うわこれ、完全に楽しんでるだけだ。


「それじゃあ、情報を整理しよう」

「じゃあ、この私が君たちに説明するとしようか。まず、リグ君とシルヴァの目的は災害龍の復活だ。ちなみに、この災害龍は生前雷龍と呼ばれていた」

「雷龍?」


 クシフォスがその言葉を反すうした。

 それに答えるように、腕組みをしたクラノスがぶっきらぼうに返事をする。


「ただ動くだけで周囲に雷をまき散らす迷惑な奴だ。通り道は文字通り、雷の雨に晒される」

「そ。そんな怪物の復活を目論んでいるらしいね。じゃあ、どうやって復活させるのか。そう、リグ君の持つ龍の心臓を量産したことで魔力を供給するらしいね」

「でも、そもそも可能なんでしょうか? いくら魔力を供給したからといって……死体が動くなんてことは?」

「無理だろ。死者蘇生の魔法なんざ、確か大昔に消えたって話だぜ?」


 死者蘇生。

 確かに俺も見たことがあるな。失われた魔法、だったか。死者蘇生は教会との宗教戦争絡みで消されたって話も家の図書に書かれていた気がする。

 まぁ、全然今とは関係のない話だろうけど。


「まぁ、ギネカがやるなら可能性があるかもって話だ」

「えっ」

「えっ」


 俺とサクラが声を揃えてギネカの方へ視線をやる。

 彼女は別段驚いた様子もなく、コクリと首を縦に振った。


「まあね? そもそも死者蘇生だって姿形は大幅に変われど、現存するものもある。リッチの不死化魔法なんてその良い例だろ?」

「確かに……」

「本当に失われたのは完全なる蘇生さ。つまり、何の代償もなく、ただの魔力消費だけ。当然の結果として死者を蘇らせる。丁度、君たちが火の玉やら何やらを魔法で扱うようにね?」


 昔はそんな反則がいくらでも使えたっていうのか?

 それはなんともまぁ……恐ろしい世界だ。もし、本当に当然の結果として人の死が覆るのなら、一体その世界では人はいつ死ぬのだろう。

 ダメだ。

 あらぬ方向に思考が逸れた。

 今はリグとシルヴァについて考えないとな。


「でも、あの二人はどうして災害龍を復活させようとしているのでしょうか?」

「どうせあの負けず嫌いなシルヴァのことだ。災害龍を従えてオメガニアに勝とうとでもしてるんじゃねぇか?」

「えー、そんなことのために? シルヴァさんもオメガニアさんも確か貴族でしたよね? だから、貴族って嫌いなんだよなぁ……」

「……」


 サクラのぼやきが俺に少し刺さった。

 彼女には俺がアルファルド家の人間であることは殊更に黙っておこう。嫌われるかもしれないし。


「それで、結局俺たちはどうすればいいんだ?」

「うん。それだね。私たちの勝利条件は二つ。一つ、複製された龍の心臓をすべて潰すこと。そして二つ目が龍の心臓を複製する方法を潰すこと」

「じゃあ、殴り込んで全部ぶっ潰せばいいわけだな!」

「そ。ただ、簡単にはいかないよ?」

「リグとシルヴァか」


 俺は二人の名を挙げた。

 魔導帝と呼ばれるシルヴァの実力は定かではないが、リグに関してはありありとその強さを見せつけられた。

 あれは強い。


「うん。で、相談なんだけど。龍の心臓を潰すことは任せてくれる? あとシルヴァの相手もしよう。君たちにはリグを任せたいんだけどさ?」

「全部オレ一人でもできるが……まぁ、異存はねぇよ」

「はい。私も頑張ります!」


 と、了承するクラノスとサクラ。クシフォスもこくりと首を縦に振っていた。(眠たくてウトウトしているのかもしれないけど)


「ああ、俺もそれで大丈夫だ」


 俺としても反対する必要はない。

 敵がSランク二人なら、こちらもSランク二人。戦力としては釣り合っている。

 恐らくリグの方が強いだろうし、そっちに四人の戦力を割くというのも合理的だ。多分、俺でも同じ結論になる。


「っていうわけだ。今日はもう遅いし、さ、寝ようか!」

「お前もここで寝るつもりか?」

「うん、そうだけど?」

「ベッドねぇぞ?」

「じゃ! メイム君と一緒に寝ようかな! さぁ、行こう!」

「バカ野郎。テメェのクランに帰れ!」

「今回ばかりはクラノスさんに賛成です!」


 何やら揉めている三人から距離を取りつつ、俺は本格的に眠り始めそうなクシフォスを寝室に連れて行った。

 さて、やることが決まったならあとはやるだけだ。

 今回の相手はリグ。ミアですら傷一つ付けることのできなかった相手だが……まぁ、勝機がないわけじゃない。

 どのみち、勝つためには色々と買いそろえないとな。


 というわけで、明日は朝から買い出しに行くか。

 なんて、予定を決めて俺は床についた。もちろん、ギネカが俺の寝床に入ってくることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ