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40.ギネカのお願い2

「災害龍の復活か……そりゃまたとんでもないことをしでかそうとしているね」


 ギネカが腕を組み、大きくため息を吐いた。

 飄々としている彼女も流石に驚きを隠せなかったらしい。彼女の私室で俺とクシフォスの二人はまたも紅茶を頂いていた。


「そんなに強いの? その災害龍は」


 クシフォスが首を傾げてギネカに質問を投げかける。

 俺も強い強いとは聞いているが、半分お伽話みたいなものだ。実際にどれくらい強くて凄いのかは想像するしかない。

 しかし、実際にその強さを目の当たりにしたギネカは災害龍の強さというものを嫌というほど知っているだろう。


「ああ、強いよ。あれは」


 目を細めて、ギネカはそう返事をした。


「まずその図体が桁違いだ」

「図体?」

「ああ、龍の川そのもの――とは言わないけど、生物としての大きさは規格外。次にその防御力。それは、リグの身体の強さを見て貰ったら分かる通りさ」

「……」


 何かを思い出すようにクシフォスを天井へと目を移した。


「あの人、女の人の魔法を受けてもピンピンしてた」

「そう。リグの異常な耐久力は龍の心臓のお陰さ。災害龍もリグと全く同じ……いや、それ以上の防御力を持っていた」


 リグの装甲は恐ろしいものだった。

 あのミアの魔法を受けても無傷。結局、ミアが優位に立っていたとはいえ、最後まで彼が傷つくことはなかった。


「外から災害龍やリグを傷つけるのは難しいだろうね」

「じゃあ、どうやって倒したの?」


 クシフォスがさらに質問を重ねる。

 それだけの装甲を持ちながら、災害龍は結局のところ討ち取られている。誰が、どうやって倒したのだろうか。


「あぁ……それは当時新人冒険者だったクラノス君がね?」

「クラノスが?」

「そうとも、あの子ったら、龍の中に入って大暴れするんだよ? ホント、面白いよね!」

「……」


 それは無茶苦茶だ……。

 俺がドン引きしていると、ギネカは続ける。


「食われた彼女が龍の腹をぶち破って出てきた時は実感したね、あの子――怪物だって」

「新人時代から無茶苦茶だったんですね、彼女……」

「まぁ、そのせいで色々と苦労を背負い込んだみたいだけどさ。龍の一件だってそうさ」

「……?」

「それは本人に確認してくれよ?」


 珈琲を一口、ギネカは微笑んだ。他人のことをおいそれと語るほど、彼女は不粋ではないということなのだろう。

 まぁ、少し話しが逸れてしまったので俺は本題へと戻すことに。


「それで、ここからどうするつもりなんですか?」

「そうだね……どうしようか?」

「まさか! ここからもアドリブですか!?」

「うん、そだよー」


 あっけらかんと返事をするギネカ。

 この人、本当にノリと勢いで生きてるな……? なんて、ジトーっとした目線を彼女に向けていると、ギネカはそんなことを気にしないようにさらに笑った。


「人生エンジョイ勢はこうでなくちゃさぁ? じゃあ、こうしよう。今から、君たちのパーティーの会議に私も混ぜておくれよ」

「え……?」


 当然のように、俺に無茶振りが降り掛かった。当然、断れるわけもなく……。俺は彼女を連れて自宅に戻ることとなったのだ。

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