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「魔法が使えない一族の恥め!!」
そう言われて育ってきた
確かに自分は魔法が使えない。理由は分からないけど、魔法を使うための魔法陣の組み立ての最中に急に使えなくなる。
だけど、恥とまでは言わなくていいだろ!!これでも一応アンタらの腹の中から産まれた娘だぜ?
世の中は、不公平だ。一緒に生まれた双子の兄は天才魔法使いだってのに。自分は落ちこぼれ。
落ちこぼれに権限なんてない。自分は使用人以下の存在で、一族に呼ばれればすぐに駆けつけなければならない。どれだけ酷い扱いも、反論してはならない。
ここから逃げたいなら、強くならなければならない。
だからこそ、毎日毎日毎日毎日毎日……剣を振り続けてきた。もちろん教えてくれる人なんていない。全部独学だ。最初は重くて持てなかった剣もちょっとずつ毎日積み重ねる事で成長した。
勉強も同じ。知識を身につけなければどうにもならないこともある。その為に夜中に図書館に入り込み、公爵家にある1万冊以上もの本を全て読み覚えた。
3歳の頃から剣を振り、本で学び、17歳。ついに、ついに成功した!!!!!
パーティに向かう一族の馬車の護衛中を山賊たちに襲わせてドサクサに紛れて逃げることに成功した。
土砂降りのなか全力で走って出来るだけ一家から離れる。
これから何もしようか?山に篭って余生を送るのも魅力的だし、別の国に行って店を開くのもやってみたい!ああ、世界中を旅するのもいいなぁ
そんな事を考えているうちに、死んだ。
一瞬過ぎた。殺人犯は双子の兄。天才魔法使い。
何が起きたのか分からないくらい速く、一瞬で死んでしまった。
ああ、なんて無謀な計画だったのか。そうだよな。魔法が使える人間に、魔法が使えない人間が勝てるわけがない。
あーあ、なんて無意味な人生。悲しいかな、何も残せなかった。きっとこのまま自分の存在は忘れられていくんだろうな。
でも、一つだけ。この人生でまともに喋ってくれたアイツには感謝してる。誰よりも好きだけど、何よりも嫌い!
バイバイ……
死んだ、はず。
気付けば自分は、いや、私は転生してしまったようだ。
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