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6.旅立ち

お待たせ致しました┏○ペコ

第6話でございます。

今回もよろしくお願いします。

「それでは、世話になったよ。その……襲撃したこと、本当にすまなかった」

「ハイハイ、わかったから。別に誰も死んでないし、いいよ。 ────セスも、早く行ってきなさい……またね」

「おう……またな、ミカ! 今度会うときは俺、チート勇者みたいになってるだろうけどな!」

「どれだけ偉くなっても、その逆になっても、セスがそのままでいてくれたら……その時は歓迎する」


 昨晩の話し合いや、魔法や人機についての授業をとおして、ミカ(長)とクオン(緑髪)との関係がとても親しくなったように感じる。


 親しくなった者と別れるのはとても寂しいが、前世とは違い、旅の準備と戦う力さえあればまた会いに来れる。

 そう思いながら村を出て、また森に入っていく。


 しばらく歩いていると、突然クオンがたちどまり────


「セス、魔物だよ……昨日覚えた魔法、試してみるといいよ」

「りょーかーい♪ それにしてもよく気づくね、俺なんか全然わからなかったよ」

「今まで戦ったことがないなら当然だよ────ほら、きたよ!」


「よしっ見えた────リリース!!」


 そう、この世界の魔法には呪文のようなものはない。 頭でイメージしたものを、魔力で力任せに具現化するため、放つ言葉は何でもいいらしい。


 その為、術者は炎の球一つ作り出すにしても、そこそこの魔力を消費してしまうそうだ。


「グゥルル!! ガゥアアアア!!」


 出てきたのは狼であった。四匹の群れで、俺を狙って飛びかかってくる。


 俺がイメージしたのは、周りに高圧の水を網目状に張り巡らせ、バリアにすることだ。

 すると、狼たちは気づかなかったのか、真っ直ぐ水に切り裂かれ、サイコロ状になってしまった。


「あぁ……随分と物騒な魔法を使うね……」

「正直……突っ込んでくるとは思ってませんでした」

「なら、何をしようとしてたのかな?」

「とりあえず、動きが速そうなので、自分を護りながらじっくり狙いを定めて倒そうかなと……」

「あれだけ細い水の線なんて、なかなか見えるもんじゃないよ……普通の人には使っちゃダメだよ」

「あぁ、うん……使わないよ」


 二人で魔物だったものを見つめていると、クオンが肉片を集めはじめる。

 集めるってことは食えるのかな、売るにしては切りすぎているからな…


「これ、食べるの?」

「焼けば結構美味しいんだよ。村に行くまでも何回か食べたから、味は保証するよ」

「わかった、それじゃあそれ、入れちゃうね」


 そう言うと同時に、空間に穴を開ける。

 昨日の夜に練習したら、特典の一つであるアイテム収納空間を開くことができたので、旅に必要なものを全部詰めていた。


「血とか他の荷物につくかな?」


 血の出ているものを入れるのは初めてだから、正直怖いが、旅を続けるためには必要なことだし、いずれやることになりそうなので、今のうちに試しておきたい。


「血が付いたら洗えばいいだけだよ。それじゃあ入れていくよ」

「それもそうですね……お願いします」


 こちらの世界に来て、既に人を殺してしまっていたので、今更肉塊を見ても不快感などは感じない。

 そのかわり、前世より奪った命には感謝をするようになっていた。


 空間の裂け目に投げ込まれる肉塊を見ながら、俺の生きる糧になってくれてありがとう、と心の中で呟く。


「そういえば、お前の精霊はどうしてる? 一度壊してしまったから、部屋に閉じこもったままだろ?」

「……へ?精霊ってどこかで会えるんですか?」

「ミカに教わってなかったのか……なら、今日寝る時に、「精霊と会いたい!」みたいな感じで意識しながら寝てみるといいよ」

「そんな大雑把でいいんですか……まあ、とりあえずやってみます」

「それがいいだろう、まあ、普通の精霊なら一日くらい放って置いても大丈夫だろうけどね」


 普通の精霊なら……か。ある程度の覚悟はして行った方がいいだろうな。


 そんなことを考えながら、魔物を倒していき、森の中を歩いていく。

 クオンは道を覚えているのか、どんどん前に行ってしまう。前世から森なんか歩いてこなかった俺は、草や根に足を取られ、なかなかうまく前に進めないでいた。


「大丈夫か?」


 と言いながら、いつの間にか目の前にいたクオンがこちらに手を差し出してくる。


「うん、体力的には大丈夫。ただ、森の道が慣れなくてね」

「クハハ、まあ……最初はそうだろうけど、旅をしていればいつか慣れるよ。まだ、焦らなくていいからね」


……クオン、この世界じゃなかったら、ハーレム系の主人公になってたかもしれないな。

 自然に相手を気遣う言動というのは、なかなか出来ることではないからな────正直、キュンときた。


「そんなに見つめられると照れるんだが……早く行かないか?」


 顔を赤くしているクオンの手を、しっかり握り歩き出す。

 しばらく歩いていると、クオンが俺の方を向き、


「セス、足に魔力を送れるか?」

「まあ、出来なくはないけど……体に魔力送るの苦手なんだよね」

「出来るのならば、やっておいた方が歩きやすくなるぞ、草とか根とかなら抵抗なく歩けるからな」


 わかってはいるが……魔力を体に流すのは、とても妙な感じがするのだ。

 例えるならいくつもの手がネットリと絡みつくみたいな感じだ。


 ミカ曰く、体に魔力を通す感覚は、人によって変わるみたいだ。


 なんにしても、これ以上クオンの足を引っ張るわけには行かないから脚全体に魔力を通した。


「うへぇ、やっぱり気持ち悪いな」

「クハハッ、まあそのうち慣れるよ……まだまだ旅は始まったばかりだからね」

「そうだよな、もしかしたら違う感覚になるかもしれないしな。────ってクオン、アレ!!」


 そろそろ森を抜けそうなくらい緑が薄くなった頃に、目の前の少し開けた辺りから、男と女の叫び声が聞こえてきた。

 よく見てみると、乗り物を小さい魔物が襲っているようだ。


「クオン!!」

「そうだね、ゴブリンだけなら数にさえ気をつければ大丈夫そうだね。助けるとしようか」


 そう言うと、二人で同時に駆け出し……俺は敵が全員見えるところで止まり、クオンはそのまま乗り物を襲っている方に向かった。


「リリース!!」

 叫ぶと同時に、見えている敵の足元から、石の槍が飛び出し、脳天まで貫く。


「セス、チューリオを挟んだ森の奥からも、敵が来てるよ」


 チューリオ?と思っていたが、クオンが指を指しているのが乗り物だったので、乗り物の名前だとわかった。

……馬車じゃないんだな。


「了解────リリース!」

 うーん、せっかく魔法使うんだから、雰囲気のでる呪文とか唱えたいな……虚無の果てより〜とか、因果の収束〜とか!


 そうこう考えてるうちに、後続のゴブリンも石槍に貫かれて動かなくなっていた。

 クオンの方は、と思いみてみると、敵は倒していたが……


「お、お前みたいな化物に……助けてなんて頼んだ覚えはない!」

「近づくなよ! 吐き気がする!!」


────何言ってんだ、アイツら


 どうやら、助けられた奴らが、クオンに向かって暴言を吐いているようだが……今の光景をカメラで撮り、題名をつけるなら『ブスの僻み』である。


 いつもであれば、とっくに怒っているのだが、怒りが湧いてこない。まだ『アレクター』を使用した影響が残っているようだ……

 そうこう考えているうちにクオンがこちらに歩いてきた。


「どうしたんだい、変な顔して。早く森を抜けるよ」

「アイツらは?」

「……?あぁ!クハハッ、もしかして怒ろうとしてくれたのかな。大丈夫だよ、あんな奴ら街に行けばもっと多いんだから、気にしてたら疲れるよ」

「……」


 クオンは辛くないのだろうか、何故笑っていられるのだろうか。色々聞きたいことがある……

 でも、まだそのことを聞けるような深い仲ではない。


 だから────


「ほらセス! ボーッとしてると手を繋いでしまうからね、クハハハッ」

「どわわっとぉ……危ないって、まだ足に魔力通してないからぁ〜!!」


────今のクオンが笑っているのなら、俺も一緒に笑っててもいいんじゃないかなと思う。


ということで、6話でした。

いかがでしたでしょうか〜

実は…今日書くつもり無かったんですけど、よく見たらブックマークしてくださってる方がいたので、急いで挙げました( ̄^ ̄ゞ

やっぱり読者がいてくれると、嬉しくなるし、書く力になります。

こんな私ですが、これからもどうぞよろしくお願い致します。┏○ペコ

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