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40.白スクのアイツ

短いです

書かない時期が長かったにもかかわらず短いです

待っていた方がいらっしゃったら本当に申し訳ないですorz

「────!!」


 向こうの土地までの距離が遠すぎる為彼女が何を言ってるのかは分からないが、ここからでも分かるくらいに顔が赤く染まっているということはイライラしているかエロエロしているかだろうことは分かる。


(あいつは一体何をやらかしたのだろうか)


 自分で言うのもなんだが、クオンにとっての「セス」という存在は唯一無二と言っても過言ではないと思っている。

 そして今アイツは「セス」となっている。

 それなのにどうして首筋に剣なんか……。


「お兄ちゃん……あれ、どうするの?」


 レストに近づきながら愛の力のラインを繋げ意思疎通出来るようにする。

 考えるまでもなく、魔界にはアイツがいるから助けに入るまでもないのだが、それではクオンがどうなるか分からない。


「俺が向こうに行ってクオンを助けに行く」

「?? ……クオンってあの女の人だよね?助けに行くんならあの偽者の方じゃないの?」

「まあ見てればわかる。ここには変た……ほら、来たぞ。教育上よろしく無さそうだからあんまり見て欲しくないんだけどな」


 クオンとセスの狭間の空間が突然歪み出すと、突きつけていた剣が歪みに吸い込まれてしまう。

 それと同時にセスも空間に飲まれると、クオンから10メートルほど離れた地点に奴の脇に抱えられながら再登場していた。


「アレが負の精霊の長だ。見るのは少しだけにして置いた方がいいぞ、目が腐りそうだ」


 前回はスク水にマントという露出狂もどきみたいな格好をしていたが、今回はいつぞやの大人のビデオで見たような薄々の白スク水を着ていた……しかもマントなしだからモロに汚い。精霊でもあんなに汚い存在になれることを俺は初めて知った。


 武器の消失に驚きつつも、魔法で武器を新たに作り出すクオンだが、精霊長の強さか変質者的なオーラ故か後ろへと後ずさりすることしかできていない。


「レスト、クローリーが来るまでここで待機していてくれ。クオンもここに来るだろうからできれば引き止めて欲しい。頼めるか?」

「うん、それはいいんだけど……お兄ちゃんは危険じゃないの?」

「ああ、今の俺は誰にも負けない……最強だからな。だから安心して見ててくれ」

「うん!! お兄ちゃんがそう言うなら絶対に大丈夫だね!」


 全幅の信頼を心地よいと思えるのはきっとこれが初めてだろう。

 今までの俺なら重すぎて心地よいと感じる前に潰されていたからな。


「コイツは任せるぞ」

「んにゃうぅ!!」


 背負っていた猫女をレストの方へ摘み降ろしながら亀裂の方へと向かう。

 多少の力を込めて魔界の地へと飛び立つと、前と同じように網のようような感覚と共にゆっくりと地に降りることが出来ていた。


「くっ……ここまで、なのか。結局私は何も果たせず、大切なモノを壊して……ははっ、いやだからこそかな」


 どうやら俺と精霊長に挟まれる形となったクオンが諦めムードを放っているが、この姿で行っても威圧してしまうだけな気がするからクオンを挟まないように遠回りしながら歩いて精霊長の方に向かう。


 遠回りで移動していることに疑問を抱きつつもちょっとずつ移動しているクオンを可愛いと思ってしまうのも仕方ないことだろう。


「久しぶりだな、負の精霊長……と言っても言葉は通じていないかな」

「……呑まれたか」


 精霊長が何かボソッと言ったと思ったら次の瞬間には俺の横へと移動し、いつしか見た緋色の刃をこちらへ繰り出していた。

 本能的に当たってはいけないと察知しバランスを崩しながらも避け、あえて力を込めて地面を蹴り飛ばす。


 一旦距離をとり、更に地面を割ることで牽制しようとしたのだが、どうにも上手く出来ていなかったようだ。


「グゥッ……」

「そんな読みやすい回避でいいのか、前のお前ならどうしていただろうな」

(前の俺だったらさっきので死んでるっての!!)


 心の中で返答しつつ、体だけは迫る緋色を避け続ける。

 と、ここで特になんの前触れもなく精霊長の右腹部の辺りに僅かな隙が出来る。


(こっちは一発当てれば勝てる! あっちが殺す気ならこっちだって!!)


 心底失望したかのような眼をした精霊長に気づくことも無くガラ空きの右腹部を全力で殴りつけるが、当たった感触が一切なく代わりに殴った腕に無数の切り傷が刻み込まれた痛みが生じた。


(今、一体何が……?)


 殴った精霊長は姿を消し、近くにいるのは未だに尻餅をついているセスだけ。

 だが、まだこの近くにいることだけは分かるし、必ずまた仕掛けてくることもわかる。


(そこかっ!!)


 空間の歪みはよく見なければ分からないが、逆に言えばよく見てさえいれば気づけるのだ。


「本能でしか物を捉えられない獣は……ここで終わりだ」

「……!! つぁっ……くっ!」


 歪みはただの歪み、本体は足元の影に潜んでいたようだ。

 歪みに対して殴り掛かる最中ギリギリのところで気づいたが、避けられる訳もなく背中に大きな切傷を受けてしまう。


(鎧をすり抜けて切りつけられるのは……相性が悪い。奴より早く動き続けてもよく分からん空間移動で追いつかれる……)


 そうこう考えているうちに、自身へのダメージは蓄積されていく。

 打撃などの痛みは味わってきたが、大小様々な切傷は経験がなく、正直体が震えてきている。


「そろそろ終わりとしようか……お前となら愉快に酒でも飲めると思ったのだがな」


 そう言うと、片手を真上へと上げ真っ直ぐに振り下ろしたが何をしたのか全然わからない。

 不発かと思い踏み出そうと思ったが体が動かないことにここで気づいた。


(視界が、ズレている……?)


 何を考える暇もなく俺の体はあっさりと真っ二つにされてしまった。

 原理もわからんし、どう対処するべきだったのかもわからない。

 ただ、耳に聞こえるのは今まで俺が追いかけていた偶像の存在の声だった。


「流石にここまでかな」


 そんな言葉を聞きながら俺はゆっくりと膝から崩れ落ちた。


 ────────────


「流石にここまでかな。少しの間とはいえ、自由をくれたこと……感謝するぜ」

「なるほど、お前から奴の意思の波動を感じたと思えば……お前自身が精霊の一人だったのだな」


 そう、俺はコイツの「夢」「希望」「憧れ」。そんな感情の原点にあるゲーム内キャラクター「セス」の精霊だ。

 俺自身はただのゲームキャラではあったが、コイツが自由を与えてくれると言うから条件付きで快諾した。

 まあ、あまりにも遅かったから最初の頃は暴れちまったが、コイツが触れてきた奴らと出会い、話し、拒絶されていき少しずつとはいえ頭も冷めた。


「良いのか? 宿主が死んだ時、精霊は自由になる。その時肉体を授けられているやつはそのまま生きられるのだぞ?」


 分かっている。このままこいつを放っておけばこのまま俺は自由に生きられるだろう。

 しかし、この短い期間とはいえ自由になってみて気づいたことがある。


「良いんだよ……俺には自由は似合わねぇ。自由ってのはそんだけ面倒クセェもんだって気づいたからな」

「ふふっ、そうか。宿主が宿主なら精霊も精霊だな。早くくっついてやるんだな」

「ふんっ言われなくてもやってやるっての……行くぞ」


 コイツの半分になった境目に手を当て、俺はゆっくりと目を閉じる。


(これからお前は『セス』に戻る。その意味、覚悟……忘れるなよ)


 ────────────


 光が見えた。

 暖かいが、俺を置いていく光。

 俺自身が暖かい光になろうともがいたこともある。

 なれなくて、あの光自体を妬んだこともある。

 どうせなれないなら、いっそ消してしまえばいい……いつしか、そう考えるようになっていた。


 そうじゃなかった。

 光は俺を置いていったんじゃない。

 俺が光を遠ざけた、どこかで慣れないと決めつけ歩くのを止めていた、勝手な逆恨みだった。


 だって、手を伸ばしたら──


『いけんのかぁ?』

「やってみせる!」

『ハッ!! 最初からそれくらいだったらなぁ』

「……すまない」

『そういう所だよ! シャキッとしろシャキッと!!』

「……ッ!! 分かった!」


 ──それを見て近づいてきてくれる


「陽光照らす未知の先、雷雲あり」

『闇陰潜む既知の先、業火あり』

「既知を超えし先、我が望む答」

『未知を超えし先、我が望む結』

「『それは掴むことはできずとも、追い続けることは出来る』」

「だからこそ屈せず」『今こそ全てに響け、我らの言の鐘よ』

「『不屈の(ルァスタングジット)夢追い鎧(エィネントリァム)』」



 魔力の奔流を感じ、目を開けるとひび割れた乾いた大地が見える。

 立ち上がろうと手を地につければ砂が手に着く感覚がある。


(あぁ、夢じゃなかったんだな……俺は生きている、いや、生き返ったみたいなもんだな)


「ふふっ、随分と爽やかな表情をするじゃないか」

「ははっ、さっき俺を真っ二つにしたやつが言うセリフとは思えないな」


 軽口を言い合いながら負の精霊長へと近づいていく。

 その最中に戻ってきた収納空間から何かを感じて空間の中に手を突っ込んでみた。


 ゴヅンッ!! となにか重たいものが手甲に当たった感覚があり、それを掴んで引き上げる。


「ちょっとーー!! いつまで無視してるんだっての!! 完成したってずぅーーーーっと言ってるんだけど!!」


 プリプリ怒っているが、久しぶりのラティスに話が耳に入ってこない。

 無性に抱きしめたくなったが、言いたいことが沢山あったらしいので大人しく聞き流してておく。


「おやおや、戦闘の方はもうよろしいのですかな?」

「お兄ちゃん大丈夫? さっき地面に倒れてたけど」

「凄まじいほど美味しそうな感じがするのにゃぁ……くっついてもいいのかにゃ?」

「お前は……セス、なのか?」


 戦闘が終わったことを感じたのか、騒がしい連中も駆けつけてきてくれたようだ。


「皆質問内容がバラバラじゃないか、戦闘は終わったし、俺は無事だから安心してくれ。猫は……後で好きにしてくれ」


 今はやるべきことがある。


「クオン、ただいま。今もどったよ」

「……っっ、分かんない、君が本物なのか分からないよぉ」


 まあ、本物でも偽物でもある奴とずっと一緒にいたんだから分からなくなるのもしかないのかもしれない。

 だからこそ──


「クオン……俺はお前が好きだ。だから、本物も偽物も関係ない、今の俺を見て、今この瞬間からの俺と共に生きてはくれないか」

「く、あぁ……ああぁぁぁ。どうして君はいつも…………そんなこと言われたら、私は、私が……断れるわけがないじゃないかぁぁ」


 泣きながら俺の胸へ飛び込んでくるクオンをしっかりと受け止め抱きしめる。

 二度と離さないように強く、優しく。




「ああーー! いい雰囲気の所悪ぃけどよ、俺の我慢が限界だわッ! 落とすわ、(コレ)

設定も物語の流れも考えないことにしました笑

元々考えていた最後にたどり着けるかも怪しいです(*´ω`*)

今回はバイトを辞めるのをきっかけにとりあえず一話を投稿してみた次第です。


次回はいつになるかは分かりませんが後1、2話程度で締める予定です、次回作は異世界転移ものか現代浮浪者ものを書くかで迷っております(っ'ヮ'c)

それではまた次回〜

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