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39.湯気が出るような体験

注意︰かなり汚い表現があります。こちらの回を見る場合は、ご飯を食べた数時間後に見ましょう。


久しぶりにコメディ雰囲気に戻すことが出来て、作書としてよかったと思っております。

最近の話を書いていると、まるであらすじやタグが嘘をついている気になってしまいますからね〜(●´ω`●)


それでは、明るい話となります。どうぞ〜。

 光が晴れると同時に、『スティリア』の看板とレストとクローリーの笑顔が見えるようになった。

 彼らに俺のもう1つの目的であるラティスの奪還のことを伝えようと思ったのだが、店内から感じていたセスの気配のようなものが消えていることに気づいて、話すタイミングを逃した。


 「うぅ〜、にゃむにゃむにゃうぅぅ〜!! ご主人様〜、もっと純度の高い魔力が欲しいけど、今は我慢するにゃあ……だからもっとくらさいにゃあぁ。質より量にゃのにゃあ」


 耳に聞こえる魔力中毒者の声はやかましいが、彼女の望むものを渡すことが出来ないことを考えるとあまり強くは当たれない。

 あまり構っててもしょうがないし、愛の力を使ってレスト達と話をすることにした。


 「記憶の整理もつかない中、いきなりすぎて本当に申し訳ないが、セスを捕まえるのを協力してくれ」

 「うんっ、任せてよ! 私の成長した所、しっかりと見せてあげるからね!」


 レストは自身の胸当てをドンッと叩いて、大きく胸をはり満面の笑みを浮かべている。

 この子の素直さは時々尊敬する時がある。ここまで人を信じられるのは、中々出来ることではないだろう。


 「私が信じる坊ちゃんの頼みなので、断る理由がありませんよ。それにあのセスさんは……好きになれませんでしたし」


 俺が来るまでの間に彼は一体何をしたのか。聞きたくない気持ちが圧倒的に勝っていたので聞くことは避けておこう。

 とりあえず魔力追跡をしようと思ったのだが、流石にクオンがいる中で一旦休憩を挟めば、魔力を漏らしていたことなどすぐにバレてしまうだろう。俺がすぐに追ってきたのだから尚更だ。


 「あいつ……どっちに逃げんだろうな」

 「あっ、それならシャイネと私に任せてよ。隣にいた女の人の匂いは覚えてるから、それを追えばいいんだよね」

 「レスト様の嗅覚とシャイネ様の感には、様々な場面で助けられてきましたから、心配なさらなくても大丈夫だと思いますよ」


 レストの嗅覚はともかく、魔力中毒者の感など頼りになるのだろうか……。

 猫の感と考えれば少しはマシになりそうだし、深くは考えないようにしよう。


 「とりあえずシャイネがこの調子ならここの扉から出たわけじゃないだろうし、裏の方に回るね」

 「ええ、その方が早いでしょう。シャイネ様は私が運びますので、坊ちゃんはレスト様と」

 「いや、どうせなら2人の話を少しでもいいから聞きたい。魔力中毒者……あぁ、シャイネは適当に俺にひっていてくるだろ」


 街の人から奪った魔力はそこまで残っていないが、セスに追いつけば魔力の心配はなくなる。

 吸収した魔力の中に俺の魔力を感じられたということは、生成は出来なくても多少の変換はできるという事だろう。

 もう少しの間、シャイネには我慢していてもらおう。


 「ここのゴツゴツした所にゃら安定してるから、ここに失礼するのにゃあ……」

 「うわぁ……シャイネがここまで引っ付くのに執着するのなんて見た事ないよぉ。正直、さっきの話とかしなくてもこれを見るだけでもお兄ちゃんだって信じざるを得なかったかもね〜」

 「ふふっ、レスト様と戯れる際にもなかなか見れないですからね」


 むむっ、やはり俺がいなくなったことでレストに迷惑がいっていたようだ……それも、結構よろしくない方の。


 「すまない、レスト……」

 「えっ!? あぁ〜、お兄ちゃん今エッチなこと考えてたでしょ!」

 「……ぷくくくっ、さすが坊ちゃんですね。期待を裏切りません」


 どうやら、またいつかのようにからかわれていたようだ。少し恥ずかしくもあったが、それよりも、ほんの少しの間の楽しかった頃を思い出せたようで嬉しかった。

 ……あとはここにラティスとクオンがいれば。


 少しの間軽い話をしながらお店の裏へと回ると、裏口が軽く開いたままになっている。

 クオンなら、徹底して逃げた通路などの手がかりを残さないようにするはずだから、間違いなくセスが後ろをついていく形で出て行ったのだろう。


 「うん、あまり私は好きになれないけど、匂いはここから続いているね」

 「あぁぁ、すまん……一応こっちに来る前に洗ったっていえば洗ったんだがぁ」


 自分でフォローしておいてなんだが、天使戦の前に戦った時も汗の匂いを感じたくらいだ。匂いを追跡できるレストならより感じることだろう。

 ……俺はあの匂いがたまらなく好きなんだがな。

 まあ、女で男の汗の匂いが好きだなんてのはなかなか聞かなかったし、思考概念が入れ替わっているこっちでもそれは同じことだろう。


 「悪いが、よろしく頼む」

 「うんっ! 頼りにしててねっ」


 元気な返事とともに軽やかなステップで裏道を進んでいくレストに、足場を壊さないように軽さを心掛けて歩く俺。

 そんな姿を見たからなのかクローリーは終始笑顔を崩さずについてくる。

 そんなことを思う俺も、周りからは見えていないだろうが久しぶりに表情が緩くなっていた。


 ────────────────


 ほのぼのとした追跡を続けていると、地面の舗装が無くなっていることに気づく。いつの間にか街の外まで出ていたようだ。

 門をくぐった覚えはないのにどうして街から出られたのだろうか。


 「ん? ああ、そういうことか」


 答えは単純な話で、街を覆っている壁の一部が綺麗に切り崩されていただけだったのだ。

 普通にちょっとオシャレな道だと思ってた……。


 「んん〜、ここまで来ちゃうと匂いも色々混じっちゃうなぁ。お兄ちゃんには悪いけどちょっと急ぐね!」


 そう言うと、返事も聞かずにレストは前方に走っていってしまった。

 クローリーも「いつも通りですねぇ」とか言いそうな顔して見送っていたから、少しのやんちゃ心は忘れていないようだ。


 「さてっ、クローリー……お前の目的、そろそろ話してもいいんじゃねぇか? それとも、まだ力不足か?」


 せっかく二人っきりになれたし、あの日聞けなかったクローリーの目的を聴きながらレストを追いかけようかと思う。

 ちなみにレストは魔力をそこそこ流しながら走っているので、魔力追跡が可能となっている。やんちゃ心ではなく、しっかりとしたチームプレイだと認識を改めておかねばならないな。


 「っ!? ふむぅ……ここで聞かれてしまいましたか。正直予想外です……」

 「それで、どうなんだ?」

 「……目的はまだ言えません。しかし、勘違いなさらないでください、私の目的に力は必要ないのです。何故坊っちゃんを選んだのか……ここが重要なのです。それに、今すぐどうこうなるという急な用事でもないので……それでは、お先に失礼します」


 話を勝手に切り上げられ、レストの魔力を感じる方へと飛んで消える。

 まあ、急ぎの用事じゃないってんなら別に問題ねぇか。なんか、俺じゃなきゃダメ的な雰囲気だったし、必要だったら向こうから言ってくるだろ。

 何となくクローリーの頬に朱がさしていた気もするが、あいつに限ってそれは無いだろうし、問題ないだろう。


 解消させておきたかったことも話せたし、俺もレストを追うか。

 クローリーに先に行くと言われて、負けず嫌いの俺が騒ぎ立ててしょうがない。


 「悪いなクローリー……先に俺がつく」


 軽く足場を蹴っただけで道に窪みができるが、もう街の外だし別に構わんだろ。

 宙へ飛び出した俺は、天使戦の際と同様にレストの方へと空気の層を蹴り飛ばして急接近する。


 「うにゃにゃにゃああぁぁっっ!!」


 耳元からやかましい猫女の声がするのに気づいて「そういえばこいつもいたな〜」と思い出し、向かっていた方とは逆の方へ蹴りを繰り出した。

 突然の急停止に首にしがみついていた猫女の腹部に、俺の頭部がしっかりとめり込んでいくのが、耳元の苦しそうな声でわかる。

 ……でも、女の子が「ぐげえぇぇ」はあまりにも色気が無さすぎるのではないだろうか。


 「うぅぅ……吐いていい?」

 「……下に降りてからな」

 「──うぷっっ!!」


 降りるより先に出してしまいそうなため、可哀想だがリリースしようと、背中辺りの衣服を摘む。

 この不安定な状況で肉体を掴むと、最悪握りつぶしかねないからな。


 「まさか……ほっぽるつも──んぐぅ、うぇっ!」

 「…………あっ」


 対抗心というものは、人に迷惑をかけない程度に燃やすのが適切だろう。

 人に迷惑をかけてしまったら、その分自分に返ってくるのだから……。


『ああああぁぁっっ!!!!』


 右半身を覆う我が精霊達に告ぐ……本当に申し訳ない!!

 後、余裕があれば臭気をシャットアウトして欲しいところだ。最悪、匂いで釣られて鎧内部でお祭り騒ぎが始まってしまいそうだ。


 右半身から垂れ流されている、湯気が出ている何かを見ないようにして、急速落下にならないようにケンケンしながら降りていくと、見覚えのある地面であることがわかった。


 「おっ? ここって魔界の近くじゃね?」

 「うぅ……汚ねぇにゃあ! 魔力も充分補充できたし、近寄るんじゃないのにゃ」


 何故だろうか……あまり腹が立たない。感情がなくなったとかそういうことではない──これはおそらく。


 「お前……二度と俺の魔力吸わせねぇからな」

 「なんか、謝っておかないと後々後悔することになりそうなのにゃ。すまないのにゃ」


 コイツ(魔力中毒者)が俺に逆らうことが出来ないことを知っているからだろう。

 別に自己嫌悪に浸るような事でもないし、さっさとレストと合流しよう。コイツには俺の言葉は届かないから意思疎通が出来ないのだ。


 レストは既に、魔界との境目であるあのデカい亀裂のところにいるようだ。

 クローリーは…………俺たちの後ろにいるようだ。小さな俺の対抗心がゲロまみれでタップダンスを踊って喜んでいるようだ……満足満足っ!!


 「にゃあ、ゲロ人様? 行かないのかにゃ?」

(くっ!! 突っ込みたいことがあるのに言葉が理解されないのがつらすぎる! オイッ!誰か殴る物もってこいっ!!)


 ツッコミできないイライラを発散するところがなく、仕方ないので何も無い真正面を思いっきり殴る。

 殴った衝撃で荒れた大地が抉れながら真っ直ぐ進むのを確認し、ストレス解消方法として正しかったと自己完結する。

 割れていく地面や海を眺められるのは、一生を通してもなかなか無いことだろう……俺は感動した。


 隣の猫女も感動して尻もちをつき、目と口が開きっぱなしになっているが、このままでは進めないので、背を向けて屈み、おんぶの待機姿勢をとる。


 しばらくしてから「進んでいいよ……ごめん」の声と共に立ち上がり歩き始める。

 先程の行動で俺が怒っていると思われているようだが、実際の心中ではなんかの精霊が土下座しまくっている事だろう。

 理解されないことはわかっていても「こちらこそ大人気なかった、すまない」と返せたのは、人間的成長と見てもいいよな……。


 ────────────────


 「あっ、お兄ちゃんこっちこっち! あれ! あれ見てッ!!」


 しばらく猫女を背負い歩いていると、前方でレストが身振り手振りで何かをアピールしているのが見える。

 どうやら亀裂の向こう側に何かがあるようだが……。


 「んんっ? どうなってんだ?」


 亀裂の向こう……魔界の端っこで見つけたのは、片腕がない男の首筋に光の剣を突きつける緑髪の女の子だった。

「ケンジィ……お母さん、もうっ」

「おっかさん! エデンまでもう少し!!」

「んぷっ────ッ!!!!!!」

「おっかさーーーーん…………んぷぅっ」


(´‘▽‘`)<筆者の心情を文から読取りなさい


 一部の性癖所有者には受けるのではないでしょうか『鎧吐瀉物』モノ……。

 ごめんなさい。


次の話はいつになるでしょうか……私にもわかりません。

今わかることは、この話は最悪でも完結まで持っていくということです。


ではまたの機会に!

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