38.仲間
今日なんか凄く書きたい気分になって一気に書いてしまいました(笑)
今回最序盤に食事には合わない文字が一文字。
後半にシリアスブレイカーが二、三ヶ所くらいは存在してます(●´ω`●)
シリアスで行きたかったけど、シリアスが似合わないキャラもいるからそこら辺難しいですよね〜(´‘▽‘`)
魔法が使えない俺が空から落ちているのは、パラシュートなしのスカイダイビングと何ら変わらない状態と言えるだろう。
纏った装備がなければ今頃便を漏らし、泣き叫びながら落下していることだろう。
「アレクター、落下の衝撃とかは大丈夫だよな?」
『ふっ、当たり前だろ。ここに何体精霊がいると思っているんだ』
「ははっ、それもそうか」
『そもそも魂装神器の時点で衝撃すら感じないからな。尚更だろう』
地上に降りるまでの時間が退屈だったため、戦闘中に確認することが出来なかった自身の姿を確認する。
見た目のベースは魂装神器である『アタラクシア』で、それに他の部分がくっついている感じだな。悪くいえばツギハギだらけとも言えるほど各パーツの繋ぎ目は整合性がない。
「全体的にごっつくなってるのな」
『全部乗せとか訳の分からない状態なんだから皆受け入れられてないんだろう』
自分の感情内に庇護欲の精霊であるキアや絶望の精霊であるバスティーカ、その他聞き覚えのある声や聞いた事がない奴の声も次々聞こえてくる。
これを整えて聞こうなんて考えたら頭がおかしくなるだろうが、別に誰かの言葉を聞く必要なんかはなく、感じたままに感じたとおりに動けばいいのだ。
『おらっ、もうすぐ地面だぞ。踏ん張ろうなんてすんじゃねぇぞ……地面に大穴が空いちまうぞ』
「お前も冗談なんか喋るんだな」
『……地面だぞ』
一応おふざけ抜きで力を抜いて落下する。
力を抜いても鎧の重さのおかげで頭から落ちることなく、足から真っ直ぐ落ちていく。
力を抜いていたおかげか、着地地点から十数メートル下に凹むだけで済んだ。
周りもそれに合わせてクレーター状に凹んでいたため、別に這い出る必要もなかったのが幸いだ。
「ホントに全然痛くねぇのな」
『ふんっ、恐怖の精霊が中で泣きわめいてたぜ。俺たち相手に虚勢を張ろうとするな……バレバレだぞ』
「……行こう」
さっきのやり返しなのだろうか。まあ、どちらにせよそこまで嫌な気分ではない。
セスは俺がレストと会った街の方に逃げたらしい。
レストとクローリーが一緒にいるとは限らないし、そもそも別の街に移動したことだって考えられる。
それでも逸る心を抑えず、足場が崩れることも関係なしに跳ぶ。
あの日、ラティスと二人で確認した、塔が見えるところまで飛んだ辺りで、街の方から警鐘が鳴り響くのが聞こえる。
街の外壁から「負魂機がきたぞォー!!」という大きな声が聞こえてくる。
ああ……そりゃそうだよな。こんな装備してれば俺でもそう思うわ。
外そうとも考えたが、これを再び装着できるとも限らないからできれば安定しているこのままで行動していたい。
とりあえず、敵意がないことを知らせるためにゆっくり歩いて街門まで向かう。
その間に魔法や矢などが飛んできても何も感じなかったので、特に何も思わなかった。
父親に対して5歳児の子供がポカポカパンチを出している程度に考えていれば別に怒りも何も湧いてこない。
「すいませーん! 門を開けて貰えませんか?」
「おい、なんか呪文唱えてるぞッ!! 逃げろぉぉぉッ!!」
天使め、特典をほとんど奪いやがったな……。こちらからの言語が全く通じねぇ。
門の付近には誰もいなくなってしまったので、仕方なく軽く門をノックすると、人一人分は入れる位のちょうどいい穴が空いてくれた。
門をくぐると、中には組合員及び兵士達がそれぞれの武器を構えてこちらの様子を伺っている。
レスト達がこの街にいるならここに参加しているか、もしくは……。
「こちらの人数に本能的に恐れているぞ! 動きが止まっている今のうちに全員行くぞぉー!!」
右腕を失ったセスと合流出来たレストなら、最初に治療をしようと思うはずだ。
向かう先は宿屋か、それとも自身の家でもある『スティリア』か。
どちらも見て回れば問題は無いが、煩くなりそうだし、できれば騒動は広げたくないところだ。
と、考えていたところに突撃してきた奴らがぶつかってくる。
……皆頑張ってるし、ケガくらいに済ませてあげたいなぁ。
「なんか殺さないような装備はないの?」
『魔力切れを狙って見てもいいんじゃねぇか? 強者が弱者を殺さないようにすることも、広く言えば庇護欲みたいなもんだろうしな』
『お……お久しぶりですね。正直わたしはまだあなたを許すつもりはありませんが…………ふぇぇ、嘘ですぅ! また話したかったですぅ!! いっぱい言いたいこともありますが、とりあえず全員から魔力を吸って戦う力を奪っちゃいましょうぅ』
キア……レストとの約束を俺が守らなくて、怒って出てこないと思ってたらそうじゃなかったのな。
どこかで俺自身が『守る』ことを諦めていたのかもしれない。
キアの可愛らしい掛け声とともに、右の蒼腕が輝き始める。
同時に蒼腕に繋がっていた赤黒い模様も澄んだ蒼色へと変わり分散しながら兵士や組合員たちの元へと向かう。
『あなたが傷つけたくないものは、私が護ります。あなたはあなたが感じたままにやりたいことを……信じてますから』
あの日、レストを守りたいとキアの力をかりた時の強く優しい声に押し出され、魔力が無くなって弱った兵士たちの間を抜ける。
目指すはレストの家でもある『スティリア』だ。
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前に来た時よりも建物が大きくなってる気がするが、増築って短い期間でできるもんだったっけか?
疑問に思いながら歩いていると、中から騒がしい声が聞こえてくる。
「コイツじゃないぃ!! こいつの魔力じゃあたしは満たされないぃぃ……」
「落ちついて下さいませシャイネ様。その方はどう見ても坊っちゃんではございませんか」
どうやら会話しているのは魔力中毒者の女とクローリーで、会話の流れ的にセスもあの中にいそうだな。
それにしても魔力中毒者のやつまでまだいたとはな……。どうやって今までしのいできてたのやら。
……レストに謝ることが増えてしまうようなことにはなっていないで欲しいのだが。
「待ってくれ! 敵がこっちに来ているみたいだ……頼めるか?」
「……坊ちゃんが私達をこういう形で頼るとは、シャイネの言っていることはあながち間違っている訳では無いようですね」
「ふんっ、兄ちゃん擬きの言うことを聞くわけじゃないけど、敵が来たなら倒さなくちゃね」
レストやクローリーがセスに対して大分冷たい態度で接しているようだ。
少しの間一緒にいたクオンも、今のセスに対して疑問だけでも持ってくれていればいいのだが……。
その時『スティリア』の扉が開き、中からレスト達と思わしき人達が出てくる。
思わしきというのは彼らの見た目がそこそこ成長していたからだ。
レストの背は前より大きくなり、雄らしさが増したと見える。
ふさふさしていた毛並みも、さらに長くなり今ではふわふわと言うよりサラサラと流れるような美しいものへと変わっていた。
クローリーは……今でも評価がつけにくいザ・普通ではあるが、若干年老いたのではないかと感じる。
顔に刻まれたほうれい線は見間違えではないだろう。
おそらく俺が消えてから相当な負担をかけたに違いない。
シャイネと呼ばれていた奴はやはりあの魔力中毒者だった。あの時は尻尾もヨレヨレで呂律も回っていなかったが、今では両足でしっかりと地面に立てているようだ。
容姿に関しては、こちらの世界では受け入れられない位の美しさだろう。
レストと同じく長毛で、全身真っ白である。
猫の獣人だって言うならペルシャ猫とかが該当しそうだな。
相手のことを細かく観察していると、レストが今まで見せたことの無い激しいステップを刻み始める。
……何故だか見ていて心が締め付けられるような感覚に陥ってくる。決して魔法の効果ではなく、彼の心情がそのまま伝わってくる気がしたからなのだろう。
「レスト……クローリー……」
「何を言っているのか分かりませんが、時間を稼がせていただきます……食い散らかせそうにはないですからね……」
時間……か。
俺が本当に負魂機であればその戦法は間違いではないが、あいにく俺はそれを超越する存在になった。
今の俺なら特典などなくてもお前らに心を伝えることすら可能なんだ。
「今の……セスじゃなくなった今の俺なら、彼らへの真実の愛を伝えることすら可能なんだ……! お前だって伝え足りないんだろ」
『ええっ、私の愛はあなたの愛……貴方が伝えたりないと思ったのなら、私もまた伝えたりていないのです。さあ、思う存分伝えなさい! 彼らもまた……愛の対象でしょう?』
前とは違う優しい声……辛い時には激を飛ばし、前に踏み出せない時は優しく背を押してくれる。
今まで感じたことが無いが、これがきっとシンの愛……シン愛なのだろう。
俺が一歩歩き出すより早くクローリーが一直線に向かってくる。何を仕掛けてこようが、普通の存在が相手ではどうやっても俺が負けることはない。
しかし、彼らを傷つけることが俺の敗北と同義なのだ……なればこそ──
「えっ!?」「……ふむ」「あっははぁ! あいつ万歳してらぁ」
この圧倒的な防御力を存分に活かして、堂々とレストとクローリーを抱きしめよう。
その上でちゃんと謝るのだ。約束を守れなくてすまないと……。許されなくても、それだけは必ずしなければならない。
ようやく会えたのだ、彼らへ続くこの一歩一歩をしっかり踏みしめて歩こう。
ガシャッ……ガシャッ……
レストは動きを止め俺の方を真っ直ぐ見つめる。
クローリーは警戒しつつも、レストの元へと進んでいた距離分ジリジリと戻る。
「レスト……クローリー……君たちへの愛と謝罪を伝えよう」
彼らまで、手を伸ばせばもう少しという距離に入った時、空気の読めない猫が俺へと飛び掛かる。
邪魔されたとはいえ、こいつもレストを守ってくれていた一人に違いはないだろうから怒るつもりはない。
それどころか、俺に飛びかかってでも二人を守ろうとする気持ちは素直に嬉しく、そして頼もしく感じる。
細心の注意を払って頭を撫でてあげると、鼻息を荒くして手に頭を擦り付けてくる。
魔力中毒は未だに治っていないのだろうか……。
先程街の組合員達から吹いあげた魔力を彼女に流しながらゆっくり頭を撫でてやると、完全に道に体を投げ出しお腹を見せてくる。
レストやクローリーも勿論だが、俺も驚愕していた。
「ふしゅるるぅ……ごしゅじんさまにゃあ。じゅっとこのまりょくをまっていたのにゃあ」
「えっ! ご主人様って……。あぁ……えっ、えっ?」
「ふむ、何となくわかって参りました」
ちょ……ちょっと待てっ! 今結構大事な所なんだから。
仕方ないので多少強引ではあるが、クオンに使ったのより強い光の壁で彼らを包み込む。
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光に包まれた俺達が着いたのは真白くて何もない空間。
「ここ……は? あなたは一体誰なんですか? あなたの口から本当のことを聞きたいです」
レストの問いかけに覚悟を決めて答えることにする。
信じられなくても伝えることだけは絶対に伝える。そこだけは忘れてはならない、
「俺はセスを名乗っていた者。そして、さっきまで目の前にいた鎧の中身だ」
レストとクローリーは目を見合わせると同時に俺へ問いかける。
「「なら、私達に言いたいことは?」」
「……!? ご、ゴメンなさい!!」
いっぱい謝らなければならないことがあった。
もっと言うべきだったことだってあったはずだ。
それでも彼らは俺の言葉を聞くと満面の笑みを俺に向けて。
「許すよお兄ちゃん♪ おかえり」
「よく出来ました、坊ちゃん。お帰りなさいませ」
「……ぐっ、うぅぐ……た、ただいま!!」
ホントに心が通じ合ってても、これだけで通じてしまうのだろうか……。
彼らの記憶に俺の姿は一切ないはず……。なぜ信じられるんだろう、なぜ許せるのだろう。
「お兄ちゃん、顔……出てるよ」
「ええっ、しっかりと顔に書かれておりますね」
「「仲間だから……じゃ、足りない(でしょうか)?」」
あぁ……こんな、こんな気持ちになれるのなら、どうして俺はもっと早くにここへ来なかったのだろう……。
道を間違えることも、寄り道することもせず真っ直ぐここへ飛んでくればよかったのだ。
「すまないっ……ほんとうにすまなかった!!」
「もうっ、しょうがないなぁお兄ちゃんは……こ、今度は私が頭を撫でてあげるねっ」
「ふふっ、それでは私は背中をさすらせて頂きましょう」
頭と背中に感じる温かさは決して偽りではなく、身体中を熱くさせていく。
「お……俺は、俺でいいのか? 俺のままでも仲間と言ってくれるのか?」
結局、一番気にしていたのはこんなちっぽけで自分勝手な疑問。
理性という枠は自分という絵画を彩る物の一つ。枠がなくては飾れないのだから、絵として見てもらえるのかも怪しい。名を渡したのなら尚更だろう。
今の俺は絵画などではなく剥き出しの絵……彼らはそんな素の俺を受け入れてくれると言っているのだ。
変わりきれない弱虫な自分が「僕を君たちの優しさで殺してくれ」と手を伸ばす。
「当たり前だよっ! お兄ちゃんはお兄ちゃんにしか出来ないんだからっ!!」
「ふふっ、元々私がついて行きたかったのは貴方なのです……貴方じゃないと駄目なのですよ」
彼らの優しさは、今確かに弱虫な俺を潰した。
後はただ立ち上がるだけ。
「行こう! お兄ちゃん!!」
「お供しますよ、坊ちゃん」
「……ッッ! ああッ! 俺についてこい!!」
力強い三人の声は、来た時よりもさらに眩い光の中へと消えていった。
読んで下さりありがとうございます┏○ペコッ
先日デート商法の女性に、アンケートを会して接触され、もしや、俺もデートに誘われるのではと思い、かかってきた電話に出てみると、お礼の電話がしたかっただけらしかったです~( ~´・ω・`)~
おそらく結婚願望があって、職務経歴がしっかりしていると言っていればデート(商法)に誘われていたのでしょうね(笑)
んん、良かったような寂しいような〜って感じの話でした(●´ω`●)
それではまた次回!!(次はいつになるのか自分でもわかりません!)