37.転生
お疲れ様です┏○ペコッ
更新ペースだいぶ落ちております……。
正直エタりたくなった時がありました(笑)
ただ、もう少しなんで……それまでは頑張ります( ̄0 ̄)/ オォー!!
熱い……ただ熱い。
体中の血液が沸騰していると思われるほどに熱く感じる。
「よく分からないけど……今までの『敵』とは比べ物にならなそうだね」
『問題ないだろ、なんてったって「俺とクオンが一緒にいるんだからな」
あぁ、感じる……今間違いなく『セス』が引き継がれ、俺は『前』に戻った。
引き継ぎに関しては俺が自分で考えて行ったことだから問題ない。むしろこの後の方を俺は心配している。
誤算だったのはクオンと俺自身に関してだ……。
漫画やアニメで『セス』が主人公だとしたら、ヒロインパワーとかで駆けつけてくるのもわかるが、まさかこのタイミングでやられるとは思ってもなかった。
……少し離れて、ピンチになったら睡眠魔法すら跳ね除けてくるって……我ながら、凄い人を好きになってしまったものだ。
『この怒りの味……自身を取り戻したようだな。久々にお前と共に暴れたくなってきたぜ』
「まだだ……この後だ。暴れるのはあの城の中のやつが出てきてから」
食われても尚無くならない自身への怒りを抑え、自分の姿の変化を確認する。
腹部の球や蒼の腕装甲、白銀の脚装甲に赤黒い血管のような模様が浮かび上がり、その他の肌の表面に薄い赤黒い装甲が張り付いていた。
比べるのもなんだが、全身タイツなんかよりはゴツゴツしていて、逆にゲームなんかに出てくる凹凸の激しい部分は存在しない。
首から上も何かに包まれている感触はあるが、どういう原理なのか、視界の確保のために俺からは何も見えない。
まあ、攻撃特化って言うべきなんだろうな……装甲薄いし。
『あの城には何がいるというのだ、何も感じないが?』
「予想が正しければ何も感じなくても仕方ない、逆に言えば『何も感じることが出来ない』奴があそこにいる。そしてそれは恐らく…………ッ!! おっ……と!」
蒼腕が光の剣を弾く音と共に風を切る音が聞こえる……右後方にクオンか。
もはや癖なのではないかと思うほどに後方に回りたがる。ちなみにクオンの匂いは少し汗の匂いが混じっているため、結構わかりやすい。
しばらく続く連撃も自分から腕を振ることなく、ただ剣の軌道上に腕を置くだけで防ぐことが出来る。
薄型構造とはいえ、『普通の人間』には削ることすらも難しいだろう。
「もうちょっとだけ……休んでてくれ」
「んなっ!? それはどういう……っっくぅ!?」
右肩から手に掛けての赤黒い模様が突然現物となってクオンに襲いかかる。
直線的な動きのため読まれやすいが、その分速い。相手が逃げれば逃げるほど、戦場には赤黒い稲妻が消えずに飛び交い続ける。
多少の傷をつけてでも戦えない状況にしなければならない……間違ってこの拳で殴ってしまえば間違いなく殺してしまう。
この世界、いや、俺達が生きていけるような普通の世界に存在するものであれば、よっぽどのものでもない限り壊せてしまう……いや、壊してしまう。
それだけの暴力を腹部の球と全身の装甲から感じる。
「クッ! 流石……にっ、全部避けるの……ッッッ!? 『ヴァリアント』!!
「クオンに手を出すんじゃねぇ!!」
名前を譲渡する前とは明らかに違う口調、もう自分の女にした気になってるこのクソクズ野郎が、『お前』は『セス』だが『俺』じゃない。
クオンは『俺』が愛した女だ……テメェが気安く名前を呼んでんじゃねぇ!!
大体、俺も俺で、もうちょっとクオンの寝かし方とかもっと考えておくべきだったはずだ。そこそこきつく縛っててもクオンは怒らなかったはずだ。
まあ、名を渡してもクオンがこちらにくるかも〜とか賭けてたのもあるし、実際にその賭けに負けたのは俺の『持ち前』の運の悪さなのかもしれない。
小さいことで怒り、自分で行ったことが全て悪いことかのように後悔し、賭け事が好きで、よく負ける。
そんな、『自分の姿』を取り返していくのを感じ、理解していく。
(トマラナイ……とまらない……頭の中で自分への怒りが止まらない)
クオンへ追尾していた赤黒い模様は光の剣でなぎ払われるが、何事も無かったかのように追尾を続ける……次第に逃げる場所すら失うだろう。
「くぅっ、セス! 悪いけど本体をお願いするよ!」
「任されたァァッッ、さっさとくたばりやがれぇぇ!!」
(おいおい、我がでてるぞ。もうちょっと『俺』っぽくは振る舞えないのかよっと)
『セス』が真正面から殴りかかってくるが、その握り拳自体をイライラの一部をぶつけるかのように上から被せて殴りつける。
殴られた拳は消し飛び、消し飛んだ反動からか腕までが千切り取られていた。
「セスッッ!! はっ……しまっ、ぐぅぅ……」
クオンがこちらを見て驚愕している間に、赤黒い模様が不意をついてくれたようだ。
まあ、驚くのも無理はないだろう、俺自身もこの威力には少しだけ驚いている。
俺の拳が向かった先が地面で本当によかったと心から思っている。
地面に開けた大穴から見える『地上』を見ながら、赤黒い模様に睡眠魔法を流そうと思い、思いとどまる。
恐らく今の俺自身には魔力がない、この姿になることが出来たのは、クオンの魔法を魔力に分散して取り込んだおかげだと状況的に考えている。
なぜクオンの魔力を取り込めたのかは、何となく想像がついているが、今はそこが問題な訳では無い。
『今の俺には特典がない』そして、『特典がなくてもクオンの言葉は俺に通じている』ここが一番の問題点だ。
(……あぁ、やっぱり俺は転生しても負け組のまま終わるのかなぁ)
ここには『都合よく特典を操作出来る奴がいる』。そして知ってるなかでそんな存在はただ一人。
コツッ……コツッ……
一歩一歩……ゆっくりではあるが、存在感を感じさせる足音が聞こえる。
片腕を失ったセスも、赤黒い模様に囚われたクオンも……『この後』について考えていた俺も、足音の方へ目線を移すことしか出来ない。
(俺は、死んでも選択肢を間違え続ける馬鹿だったか。本当に…………馬鹿は死んでも治らねぇんだな)
来なきゃよかったと内心で後悔すると共に、また自分への怒りが上昇する。
視線の先、城の中から、足音と共にムチムチボディにヒラヒラドレスのお姉さんが現れる。
「いいじゃねぇか、よく育ったもんだぜ。もうそっちの勝負はついたよな?」
目にあまり良くなさそうな紫の髪色と、ドレスにこびりついた古い返り血が、妙なバランスを保ち、彼女の魅力を嫌でも押し付けてくる。
この綺麗な声、乱暴な言葉、あの時のままだ。
忘れてはいけない、俺に『次』をくれた人……いや──
「そんじゃあ」
天使。
「闘るか」
次の瞬間、俺の体は熱さを感じて反射的にジャンプする。
飛んだ際に地面が凹んだことなど気にもならないし、頭の処理が追いつかないからなのか、赤黒模様はクオンを投げ捨てていた。
落下地点には腕が消失しているセスもいるし、なんとか二人で逃げてくれると精神的に助かる。
「ふはっ、いいじゃねぇか! 初撃を避けれるなら戦う資格はあるぜ『メンタル雑魚』。次はお前から打ってこいよ、不意打ちみたいでなんかだせぇからな。勝負はフェアに行こうぜぇ!」
ナニかを避け、自由落下に身を委ねていた俺の背中に、豊かな胸の感触と耳元へのくすぐったい微風と共に贈られる闘いの資格。
本来鼻孔から入ってくる甘い匂いを感じれば安心感を覚えるはずだが、気づけば全身からは冷や汗が一気に吹き出していた。
(いま、どうやって後ろに回り込んだんだよ……ッッ!?)
瞬き一つする間に天使は開かれていた城門の前まで戻っていた。
幻覚魔法であれば匂いも感触も感じるわけが無いし、ただ単に早い動きなのだとしたら俺は今頃風の反動でバラバラにされないまでも、何らかの反動を受けてしまっているだろう。
(ならあれは……)
『オイッ! コイツがお前の言ってた『この後』か……いや、聞くまでもなかった。コイツがヤバイのは嫌でもわかる』
「ヤバいなんてもんじゃない、なんてったって天使なんだからな」
この世界を管理するようなやつなんかと本当は戦いたくなんてないが、やらなきゃ殺られそうだし負けるのを覚悟で向かうしかない。
上手く戦えれば、慈悲として命だけは助けてもらえるかもしれない。
空中で体の方向をむりやり変更し身を縮め、思いっきり空気の層を両足で蹴り飛ばし天使へと肉薄する。
この装甲がなければ俺の全身はバラバラだったに違いない程の速度を出し、その勢いを全て乗せて顔面に叩きつけようと拳を引き、突き出そうとした瞬間……拳を前に出すことが出来なかった。
「へっ! 防がないとは……言ってないぜッッ!!」
「ッッ!? ンガアアァァァッ!!!!」
引いた拳にピッタリと張り付くように、柔らかそうなきめ細かい手が添えられていた。
今の力ならば簡単に撃ち抜けてしまえる筈なのだが、全く動かない。
それどころか、触れた手のひらから雷光を迸らせながら例えようのない激痛が流れ込んでくる。
「また、選ばせてやろうか? 今度はお前が得る強さじゃなくて、お前が受ける強さだけどなぁ!!」
「グゥッ! クソがあぁぁ……あぐぅっっ……」
痛みを堪え、一旦引こうとした瞬間に俺の視界の天と地が逆転した。
投げられたと気づいた頃には背中は地についており天使から見下ろされていた。
「さっきから見てりゃ、自分のやった行動に対して馬鹿みたいに怒ってみたり、後悔してみたり、最初に会った時も言ったよな?『前の世界のことなんか忘れちまえ』って。いつまでも腐った根っこ張ったまま生きてんじゃねぇよッッ!!」
ッッ!? これはヤバイ!!
何をする気かは知らないが、ここで寝そべってれば確実に殺られると直感が告げている。
しかし、先程から逃げようと体に力を入れていても全く動けない。
(ははっ……やっぱり俺は……)
天使がガッカリした表情で腹の球に足をゆっくりと下ろしてくる。
天使の足は裸足であり、ドレスからはみ出した脚部も元々綺麗なこともあり、なかなかセクシーに見えてくる。
「ああ、綺麗な足だ」
瞬間、心の底からドス黒い性欲が溢れ出して来ていた。
自分の意識の変化に気づくことなく、天使の体を舐るように見つめ、足から頭のてっぺんまで余すことなく観察する。
ゴクッッッ!!
周囲に聞こえる唾を飲み込む音、それと同時に天使が俺の意志を読み取ったのか、ニンマリと口元を緩める。
「俺にもちゃんと『穴』はあるぜ、イれたきゃテメェのタマが踏み抜かれる前に何とかしてみな。ここには『前の世界みたいなルール』なんか存在しないんだからな」
ミシィ……
球に重圧がかかり嫌な音が上がる度、頭の中で何かがキレそうになる。
頭の中の冷静な部分が、警告を悲鳴のように上げているのが耳障りでしょうがない。
『戻れなくなる』『俺じゃなくなる』
だからどうした、むしろクソみたいな自分を変えられるならやるべきだ
『良いわけない、ルールは守るべきだ』『考え直せ、また後悔するぞ』
後悔する前に死んだら終わりだ、むしろ変われば後悔もしないだろう
天使からのお墨付きでここにはルールもないみたいだし……もう、いいだろう
「ここ、キメどころだぞ……相棒」
『ここ、キメどころだろ……相棒』
灰も残らぬほどに燃え尽きる怒りは所詮暖炉の中の話。
シンに至るということは、暖炉という枠を壊し、燃やせるものも燃やせないものも全てまとめて燃やし尽くすこと。
枠を壊した先にあるのは『怒り』だけじゃない……『全て』なんだ。
人の本能に最初から備えてある理性という枠、人としての大事な部分……そんなものを持っていたら──
「へへっ!! やっと始められそうだなぁ」
「言っておくが、もう『前』のようにはいかないぞ」
人間を超えられないだろ
思考の奥の奥の方で、理性の枠が灰へと変わる。
「上等だ! かかってきッ……ッガアアッッ!?」
「くっふふ……んはははぁ!! やっと届いたぁ。これなら楽しめそうだッッ!!」
天使がぺちゃくちゃ喋っている間に前から堂々と突っ込み鳩尾に右ストレートをぶちかます。
ダメージも通ってるようだし、このままイかせてもらおう。
「……ペッ! やるじゃねぇかよ……それでいいんだよそれで」
「本当の意味で転生をしたような気分だ、これが正真正銘の『俺』……何をしたっていいんだ、なんだって出来るんだ」
体に纏うのは、もう怒りだけじゃない。
抑えるものがなくなった今……全精霊が俺に協力してくれる。
知らない奴も、知っている奴も一人を除いて全員いる。
「ラティスはいないのか?」
急激に冷める思考と共に、何故彼女が俺の中にいないのかを考える。
ラティスと最後に話したのは彼女が棍棒に移動する時。彼女は未だに収納空間で棍棒と共に眠っているのだろう。あそこだけは全くの別空間みたいなところだからそれも有り得る。
「どうした? 早くかかってこいよ!! 私も久しぶりの痛覚に興奮しちまってんだよ!! 来ないなら……」
「うるさい、お前より優先するべきことができた」
「んなッッ!? チィッ!」
彼女に移動を意識させるよりも早く近づき、顎を打ち抜こうとするが、流石に軽く避けられてしまう。
「お前に時間をかけている暇はない……『リリース』」
「テメェ! なんで魔法を!?」
「答えるルールなんて存在しない……戦わなきゃならないルールも存在しないんだ。俺はなんだってできる」
顎打ちを弾かれた後、天使が転移をして距離を取ったことを確認し魔法……正確には精霊魔法を放つ。
俺自身に魔力がないなら、俺の中にいる精霊に助けてもらえばいい。これを提案したのはアレクターだった。
魔法を使用し、セスの魔力痕跡を探ると、どうやら俺が開けた穴から飛び降りたことが分かった。
……おそらくクオンの提案だろう、なかなかな無茶をする。
「オイッ!! 待ちやがれ、私との勝負から逃げる気かよッ!?」
「言ったはずだ、お前より優先するべきことが出来たと」
「チッ! 冷めちまったやつとやってもしゃあねぇしなぁ。おいっ! それが終わったらまたここに戻ってこいよ!! それまでは……待っててやる」
「……約束しよう。またここに戻ってくると」
今の俺なら約束も守れる……今までの俺が守れなかった分も、全部まとめて。
きっと天使は俺の事が見えていたのだろう、それでも戦う気のない俺と戦うことはしなかった。
その心に答える為にも、俺は必ずここに戻り、そして……。
天使に心の中で一時の別れを告げ、地上が見える大穴から飛び降りながら、魔力の痕跡を追っていると、見覚えのある城の方に向かっていることがわかった。
「ちょうどいい……あいつらにもまた会えるかな」
謝らなければならない、過去の自分が破った約束を……例え、今の俺が誰か分かってもらえなくても。
「レスト……クローリー」
先程までとは違う小さな声は、急速に落下する風音の中へと消えていった。
ここからは、打ち切り漫画のような強引さで終わらせることになるかもしれません……。
疑問に思うことも多々出るかもしれませんが、めんどくさくなければTwitterの方でもいいので聞いて下さい。
恐らくこれを見ている人全ての疑問に思ったことを物語中に出すのは今の私には出来ないでしょうからね(笑)
P.S.完結するまでに50話まで行かない気がしてきました(●´ω`●)