36.『セス』
大分長い間更新してませんでしたね(´;ω;`)
更新しないことをお知らせしませんでしたねカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ
本当に申し訳ない!!!!<(_ _*)>
正直リアルが忙しいって言うのは言い訳にすぎません!…今までだって忙しくても書いてたわけだし!
……エタる一歩手前だったのかもしれませんね〜(気分だけ)
昔話の亀のように鈍足でも、なんとかなんとか最終回までは書き切って見せますよ〜!!
それでは今話もよろしくお願い致します!!
城門を抜け町中を歩くように堂々と進行する二人。
辺りを飛び交う空気感は一部の人には好かれない甘ったるい空間となっている。
どうやら、入る前から現在に至るまで未だに何者も姿を表さないことに、既に警戒心がゆるゆるに緩んでしまっているようだ。
「それにしても淵源の負者ってどんな人なんだろうね」
「俺の予想では、ガチガチのアーマーに身を包んだ小さい女の子辺りだと思うな」
「むう、セスはそういうのが好きなの?」
好きか嫌いかで言ったら好きな部類に入る、というよりも、俺の元々の守備範囲はだいぶ広いのだ。
正直今はクオンのことしか眼中にないが、それでも好みの見た目の女性とすれ違ったら目で追うくらいはすると思う。
……愛と性欲はまた別物ってことだな。
「まあ好きだけど、性の対象くらいにしか考えられないかな」
つい口に出してしまってから失敗したことに気づく。
なんだよ小さい女の子に対して性の対象くらいにしか思えないって……犯罪者丸出しの発言じゃねぇか!
「そうか、それならいいんだ。セスが私を見てくれているならそれで問題ないよ」
……本当にすまないと思っている。
────────────
城門から城までの短いようで長い道を歩ききると、目の前の大きな扉は開かれていた。
「また開いてるのか。もしかしなくても俺達って招待されてるのかな?」
「クハハ、と言うよりかは『誰でもどうぞ』って感じだね。まあ、伝令とかも来ていた可能性もあるし安全な道くらいはありそうだけど」
「んむぅ、出来ればその安全な道に行きたいものだけどなぁ」
そんな期待をしながら城の中に入ると、三つの看板とそれぞれが指し示す道や階段などがあった。
階段以外は3m超えの金属像が道を塞いでいるようだ。
「とりあえず看板を全部見てみようか」
「あぁ、謎解きとか俺苦手なんだよなぁ」
「大丈夫だよ、私もついてる。一緒に考えよう」
「クオン……」「セス……」
イチャイチャ、イチャイチャ
本当に今から戦いに行くつもりがあるのか分からないほどに頻繁にいちゃつく二人。
気を引き締めるような事が起こらないからなのか、抑えられていた欲情が発散しきれていないからなのか、自分達で止めることは出来ないらしい。
前はラティスが止めたが、今回は目の前の行く手を塞いでいた金属像がその役目を果たした。
「……んっ! セス、どうやら階段前の像以外が砂みたいになったみたいだよ」
「そう、みたいだな。一体どんな仕掛けだったんだろうか」
そう言って一つずつの看板を見て回ることにした。
それぞれ像が砂になった道は、その砂によって封鎖されていて通れそうにない。
何がきっかけになったのかはわからないが看板を見ればハッキリするだろう。
「えーとっ、この看板は〜『孤高を貫く者の道』? そっちは?」
「ん、すまない……私には読めないようだ。全部呼んでもらっても良いかな」
(読めない……? てことは少なくとも下の世界の文字じゃないってことか。俺には全部日本語に見えてしまうから元々の文字がわからないし、ここから敵の情報を探ることは出来なさそうだな)
折角のチャンスだったが仕方が無いだろう。
気を取り直して三つの看板を見回ったが、どうやら謎も何も、ただ単に道案内の看板だったようだ。
塞がれた二つの扉はそれぞれ『孤高を貫く者の道』と『心なき群れの道』だった。
要は一人かそれ以上かって話だな。
そして最後に、金属像が残っている看板には何も書かれていなかった。
ここに来た時に、遠目とはいえ何かが書いている位には見えていたのだが、現在は何も書かれていないようだ。
近くでは見れない、道が開いたことで消えた、そもそもが見間違え等、可能性は色々あるが、ここしか道がないのだからここを行くしかないだろう。
「この像、動かないよな?」
「昔、動く岩の魔物を見たことがあるけど、ここまで大きくはなかったよ。ここまで大きいと、動くには相当な魔力が必要なはずだから、魔力を感じないこの像はまず動かないだろうね」
クオンがそこまで言うなら動かないのだろう。
像の股下をくぐる時に、いきなり動いて潰されるなんてことも心配いらないようだ。
「それに──『ヴァリアント』」
クオンがいきなり光の剣を出したかと思うと、像に向かって一閃を繰り出す。
抵抗なく真っ二つにされた像は、砂にはならずそもそもそこには存在しなかったかのように消えてしまった。
「こうすれば何も問題ないでしょ」
「なるほどなぁ。怪しかったら壊して進めば早いもんな」
ゲームじゃないんだから、怪しかったら調べるんじゃなくて、遠くから壊せばいいんだよな。
クオンの場合、壊すというよりも消失させる方が正しいんだろうけど……あの剣、便利だなぁ。
「クハッ、そんな物欲しそうに見ないでよ。セスだって一回見ちゃえばできるでしょ」
「そうだけどさ。なんか人の技を使うのもなぁって思っちゃってさ」
俺が今まで使ってきたものも、創作物で見てきたようなものだけど、それとは別に、目の前にいる人の技って使いづらいんだよな。
「別にもう他人同士でもないんだ、むしろ二人で一人みたいな所もある訳だし……私としては一緒に使ってくれた方が……」
「クオン、大丈夫か?」
感情が戻ってから一度も休眠を取っていないからなのか、大分欲望がダダ漏れになっているようだ。
この調子だと絶対にどこか大事な場面でミスをするだろう。
自分のガス抜きも込めてスキンシップを挟んできてはいたが、一向に覚める気配がなく、むしろ危ない方向に向かっている気さえする。
「敵の本拠地とはいえ危険はない。一度眠るといいんじゃないか?」
「クハハ、なら一緒にねむ「リリース」……れば」
レストに操られたおかげなのか、人を操る魔法も一部の簡単なものとはいえ、扱えるようになったようだ。
ぶっつけ本番だったが上手くいってよかった。
クオンが俺を受け入れていたのも成功の要因となっているのだろう。
立ったまま睡眠状態に入ったクオンを優しく受け止め、元々像が立っていた場所に一旦寝かせておくと、収納空間から旅人用の寝具一式を取り出し、簡単に設置する。
起きないように抱え、寝所を移してあげると表情が少し和らいだ気がする。
静かな寝息を立てるクオンを見守りつつ周囲を見渡すが、像が復活するわけでも魔物が現れるだのが起こることはないようだ。
来る最中に倒していた機会兵で全部だったってことなら万々歳なんだが、そんな訳もないだろうし、必ずどこかで戦うことになるはずだ。
一息つくのと同時にまたいつもの一人の空間に陥っていく。
(今度は何も失わずに済ませたいな)
こちらに来て以来、完全勝利と呼べるような場面は数える程度しかない気がする。
典型的なチート能力は貰ってるし、魔法もゴリ押しだが使えている。
(『セス』として、俺はこの先も生き抜かなければならない。だけど……)
最近になって感じていた妙な違和感……。
クオンの乱れた髪を優しく撫でつつ歯を食いしばって上を向く。
上を向いた顔の両脇から水滴がポツリポツリと垂れてくる。
「 」
何もいわない
口も語らない
落ちる雫の跳音すら何も語らない
『セス』は『何も持ってなかった』
上を向いた顔が強ばる
手に持つ髪の感触だけが彼をここに呼び止める
雫が溢れるその奥に光の鉄塊が急速に近づく
『セス』は『手に入れた……しかしまだツカえない』
俺はずっとお前を使っていた
オレはお前をずっと使ってみたかった
お前はオレにお前をくれた
『セス』は『ナニも持ってナイ……しかし、オモい続ける』
最近になって偶に感じていた妙な感覚……。
心の底から溢れてくるこの『嫉妬』は、最初に捨てた『俺』が感じているんだと、俺の中に巣食っていたのはずっと『俺』なんだと思っていた。
そうじゃナイ
そうではなかった
心が弱い俺が、思いを力にできるこの世界にきたからにはきっとこうなるんだろうって……。『セス』という偶像に頼ってしまったからには、いつかはこうなるんだって。
「クオン、おやすみ」
彼女の頬を人撫でしてから城の外に歩を進める。
『彼』と決着をつける時が来たようだ。
『あぁー、ったりぃなぁ! 漸くオレに『俺』を寄越す気になったのか? んんっ?』
城の外へ出ると、先程は花畑しかなかったはずの庭の中に、四肢が次元のヒビに吸い込まれて動けなくなっている男が一人居た。
男はこちらを睨みつけ言葉をかけると、不機嫌ながらに頬を釣りあげた。
「はぁぁ……ふぅ。ああ、漸くお前に『セス』の名を返す気になった」
『クふひひひッ!! ああッ、それでいいぜッ!! 早く、早くしやがれぇえええ』
『セス』の名には今や何人もの想いが詰め込まれている。
……もちろんクオンも、そして俺自身の想いですら。
それを返すということは、俺自身の力の損失にも繋がり、同時に『彼』が力を手にすることにもなる。
『もうっ、もう我慢できないッ! 彼女は俺が守る! アイツらには俺が謝るッ! ……だから、早くオレに『お前』を寄越してさっさと死ねえぇええええッッッ!!!!』
名を返すという行為は、決して動作がいる事じゃない。
返すと思ったらもう帰っているものなのだ、何せ形がないものだから。
名が帰った『彼』は一直線に俺の眼前へと迫り、顔面へと拳を振り下ろす。
それを俺は、目で見てから受け流す。
力を受け流された『彼』は勢い余ってそのまま地面に転がりそうになるがなんとか踏ん張りそのまま蹴りを放ってくる。
「リリース」
キーワードを喋っても魔法が発動しない。
予想通りの結果に落胆しつつも、直撃しないように少しだけ打点をずらして受ける。
「ぐっ……う、うぅ」
『名』とは存在の証明、言わばセーブデータのようなモノだ。
俺は、この世界に来てからの全てのデータを『彼』に渡したのだ。
もし今、クオンが目覚めれば彼女は俺を襲うだろう。
もし、精霊を起こそうものなら俺の体から感情ごと抜け出し『彼』の元へ向かうだろう。
正直自殺行為とも言えるし、『彼』は俺を自殺しに来たんだと思っていることだろう。
────だがそれは違う
蹴りが入ったと思って喜んでいる『彼』の追い打ちの拳を懐に入ることで避け、『名』を渡しても残り続ける深い青の拳で鳩尾に当たる部分を殴りつける。
『彼』を消すのは俺のワガママに過ぎない。
俺がこの世界で生きたいと……ただ、生き続けたいというたったそれだけの強い強いワガママ。
腹の球は光らない。
それでも俺は殴り続ける。
『彼』の拳は当たらない。
それでも彼は殴り続ける。
────────
『はぁ、はぁ、はぁ……ぐっ、うぅ。テメェッ!! オレに……殺されに来たんじゃ、なかったのかよぉ』
「はぁ……ぐぅ、んぐぅはぁ……。俺は、生きる……生きて、クオンとずっと一緒に…………ッ!? ぐほぁァッッ……あ、あぁ…………ぁぁ」
どれだけ長い間戦い続けていたのか、お互いに疲れきってしまっていた。
その疲労……またはそれとは別の原因からか、背後から迫っていた者への対処が出来なかった。
「ふぁああ、いきなり眠らせるなんてひどいじゃないか『セス』。でも、そのおかげで『敵』の背後をつけたのもあるから怒るのは筋違いだね」
『あ、ああ……サンキューなクオン! また助けられちまったぜ』
「クハハッ、どうしたんだい、いきなりあらたまって。それに『さんきゅー』ってどういう……」
『うわぁああ、そ、それはどうでもいいから、早く淵源の負者を倒しに行こうよ! クオンと俺なら絶対楽勝だからさ!』
俺の胸元には、つい最近金属像が切られた時と同じ剣が突き立てられている。
そう、彼らは今人に剣を突き立てたまま会話をしているのだ。
自分でも同じことをしていた気がするが、いざ自分がされてみるとかなり『腹が立つ』行為だと感じる。
「むぅ、どうでも良くはないけどセスがそういうなら先に進もうか」
この剣が引き抜かれれば、俺も金属像と同じ結末を辿ることになるだろう。
……そんなの『許せるのか?』────答えは『ノーだッ!!』
ガシッッッッ!!!!
『「ッ!?」』
「ここでは……終われない」
焼け付く痛みを掌に受け、燃える熱みを胸に感じて、彼女に……クオンへと刃越しに近づく。
急いで振りぬいてしまおうとしているようだが、俺がしっかりと刃を握り固めて動かすことが出来ないようだ。
「君を一人にはしない。もう、約束を破ることは二度としない」
クオンの魔法剣が腹部の球に吸い込まれるのと同時に、深い青を超え、光り輝く黄を超えて、燃えたぎる怒りを映した暗い赤になるのを見届ける。
「久しぶりだな……アレクター。いや、初めましてになるのかな」
《………………》
どうして『セス』ではなく俺についたのか、どうして魔界にいないのか、他にも聞きたいことはあるが今はこれでいい。
俺の怒りをたっぷりと喰らえッッ!!
我が魂に宿るは《心火》
約束違える弱き己、個では何もできぬ脆き己
魂焔の前に己は焼き消え、真たる己へと至る
我、『怒』の王を超え未だ焼け続く
焼け終えた時、我一粒の灰となりて頂となる
貪り尽くせ、『怒』の魂装神器 《アタラクシア》
アタラクシア=心の平静不動たる状態、乱されない心の状態のこと
らしいです!
……まあ、あれですね、賢⚫モード的な?
とまあ、冗談は置いておきまして、今度Twitterのほうで、焼きマシュマロやってみようみたいな感じに思っております!
元から理解しづらかったり、設定生かしきれていなかったりとか、色々あるので聞きたいことや意見とかあるのかなって思ってました!
他の方も使ってるし、自分も導入出来たらやってみたいなぁなんて思ってたり|´-`)チラッ
まあ、導入したらまた話します!(導入したらね笑
それではまた次回!((・∀・)ゞ