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28.再会、再開

お待たせ致しました!

今回でシリアス話はしゅーりょーです!


このお話においてシリアス回って需要あるのか怖いところですね(笑)

次回からはコメディ風味な感じの話に戻るかと思いますので、またよろしくお願いします。

 生温い風を頬に受けるのを感じ、爽快とは真逆の気持ちで目を覚ます。


 負魂機との戦闘後、ラティスに強制的に睡眠状態にさせられたが、現在俺がいる場所は破壊し尽くされた大地などではなく、窓から赤黒くこびり付いた血が見える家の中だった。


「起きたか」


 聞こえてきた声は少しハスキーだったが、確実に女性のものだった。


「…………!? ………………!!」


 普通に声を出して答えようとしたが声が出ない。

 決して布を口に詰められているとかそういう訳では無く、音が耳に入らないのだ。


 女性の声が聞こえていたことから耳がおかしくなった訳では無いだろう。

 ラティスを呼んだ方がいいんだろうか。


「どうした? すまない、もう少しでそちらに向かう」


 俺の戸惑いを察したのか女性がこちらに来てくれるようだ。


 部屋を見回すと、俺が寝ている木のベッドとくっつく様にテーブルがあり、そのすぐ横に扉が見える。ベッドの真正面には窓があり、外には殺人鬼も真っ青になるのではと思うほどの光景が広がっている。


(ラティスが言っていた魔法は負魂機を壊すことで解けてくれたようだ。となるとここはイレーンの街で、俺は生き残った人に保護してもらったんだろう)


 クオンの居場所が気になるが、敵対心を今のところ見せない人の家を無闇矢鱈に歩き回るのも気が引ける。

 こういう時こそ落ち着いて行動しよう。


 色々考えていると、扉の向こうからギシギシと歩く音が聞こえてくる。

 家の作りとしては頑丈に作っているように見えるので、恐らく重い鎧をつけているか、相当な体重を持っているのかのどちらかだろう。


 コン、コン


 以前に聞いたエルフの荒々しいノック方法とは違い、軽快でこちらを怯えさせないようにするノック音が室内に響く。


 パンパンッ!


 声が出せなかったので手を叩き、大丈夫だと知らせる。

 上手く伝わってくれていればいいんだが。


 ガキギッ……ギギィィィィィ……


「なんだ、声がだせない状況……なの……か」


 どこがどう錆びたらそんな音になるのか分からないドアを開け入ってきたのは、灰色のロングウェーブヘアーの女性だった。


 入ってきた彼女が、ベッドから上半身だけを起き上がらせた俺の体を見た瞬間、頬を赤く染め驚いていた。

 持ってきてくれていたトレイをひっくり返しそうになっていたので、慌てて助けに行く。


「くくく、来るなぁぁぁ────うわぁぁぁ!!」

「……?! …………!」


 俺が近づいたことに驚いたのか、トレイどころか彼女自身がひっくり返りそうになっていたので慌てて背中に手を回す。


 ズシンッッッ!!


 心装人機と合体していなければ、今頃俺の腕は踏み潰されたトマトのようになっていたに違いない。

 そう、彼女の鍛え抜かれた肉体はボディビルダーを超え、筋肉像と表すのに相応しい程の見た目をしていたからだ。


「あ、ありがとう。意外と力持ちなんだな」


 どうやら他人を愛することはないが、色欲や庇護の感情はあるようだ。

 小さいこととはいえ『守ろう』と思うことは出来たし、彼女の割れた腹筋の筋を舐めまわしたい欲望も感じる。


「とりあえず、服を着てくれないか。幾ら腕が人機とはいえお前が男だということに変わりはないんだぞ」


 人差し指を立てながら俺を叱る姿は、俺のイメージしていたアマゾネスの教官そのものだった。

 筋肉質な体にロングウェーブの髪、瞳はどういう原理か分からないが蛇のような縦割れの黒目であった。


「私の顔をジロジロと見てどうした? ……おおっ! 服がなかったのか。それはすまないことをした」


 別に女じゃあるまいし、上半身を見られた程度で恥ずかしがるわけがない。

 そんなことよりもクオンはどこに行ったのだろうか。


 パン、パンっ


 手を鳴らすと女性がこちらを向く。

 それを確認すると、誰もいない空間に肩を回しイチャイチャする仕草をする。

 最後にそこの空間を指さして首を傾げる。


「……んん? お前の彼女かなにかか? すまないが、私はここに運ばれた君やその他の人達を世話する係だから、よく分からないのだが」


 その他の人達? 世話? こいつ、どこから来たんだ?


「そんなに怖い顔をしないでくれ、私は隣国のリンドベルグからこの国の調査及び救護に来た者だ。怪しい者ではないぞ」


 イレーンの街の隣国……どれくらい離れているかはわからないが、よく来たものだ。


「それはそうと君は喋られないのか? なにか話す手段があればいいんだが」


 まあ、俺だっていつまでもジェスチャーし続けるのは無理だと思っていたから丁度いい。


《ラティス、いるのか? らーてぃーすーっ!!》


 しばらく呼び続けたが反応がないので、筋肉美女にはジェスチャーで話をするしかないようだ。

 とりあえず、答えることが出来ないので首を横にふっておくことにする。


「うーん、なるほど。とりあえずお前の知り合いがいるかもしれないから、こっちに来るといい」


 言われるままにベッドから起き上がると胸部と股間部辺りが肌寒く感じる。


「お、おまっ、お前ッ! ちょっと待て、その格好で行こうとするんじゃない! 姉上達に襲われるぞ!!」


 自分で「来るといい」って言っておきながらその反応はないだろう。

 その時、筋肉美女の後ろの扉が音も立てずに開いていた。


「ヌハハッ! 流石に怪我人を襲うほど飢えてはおらんわッ!」

「そうだぞ、妹よッ! 折角こうして小僧の着替えを持ってきてやったというのに」


 豪快な声と共に背後の扉から褐色肌の二人の女性が現れた。

 大きな声での登場よりも、あれだけうるさかった扉を静かに開けたことの方が少し驚きだったりする。


「それにしてもお前の……その、アレは……なかなか大きいのだな」

「うむっ、これには流石のワシでも唸りをあげる他あるまい」

「是非一度手合わせ願いたいものだな! ヌハハハハハッッッ!!」


 ここまで股間部を正々堂々と真正面から見られると、最早羞恥心も湧かなくなり、持ってきてくれていた着替えを受け取りさっさと着替えてしまった。


「ふむっ、度胸もありそうだしなかなかいい男だな」

「腕と脚が筋肉ではなく心装人機だと言うのが、やはり残念なところではあるがな!」


 着替えをしている最中に自分の体をもう一度見てみたが、脚は銀色だし腕は蒼い、腹には球が入っていたが色は黄色ではなく灰色になっていた。


(これ、内蔵とかどうなってんだろうな……)


 変わらずに空腹が訪れることを祈るばかりだ。


 服を着ている間にあちらでも話がまとまったらしく、俺と共に倒れていた女性の元に案内することになっていた。


「どうやら君と共に倒れていたという人を姉上達が知っているようだ。もし知らない人だったら戻っておいで、一緒に探してあげるからね」


 ウェーブヘアー筋肉さんは優しいなぁ。


 でも、流石に一緒に倒れていたのならそれはクオンで間違いないだろうから、お世話になることはないだろう。

 最後に深く礼をして、扉へ向かう褐色二人組に着いていく。


 扉を出た先はミステリーサスペンスドラマにでも出そうな豪邸で、赤絨毯の左右の脇に扉がいくつもある廊下が伸びている。


(結構な豪邸なんだな……いや、この家の持ち主も……)


 隣国の救助隊からしたら、家主のいなくなった豪邸は個室が好きに使える病院みたいな認識なんだろう。

 まあ、使えるものは使った方がいいもんな。


「それにしても、お前達を見つけた場所が街の外だったんだが、よくあそこまで無事に逃げきれたな」

「いや、姉上。四肢と腹部を心装人機に侵食されていては無事とは……」

「馬鹿者ッッッ!! 負魂機を相手に命が助かるのがどれだけ大変なことかっ……」


 どうやら負魂機は相当強い存在らしい。

 まあ、感情を削り力に変えていたのだから強くて当たり前だろう。

 もちろん元が強くなればなる程その脅威も上がるだろう。


「今回死亡が確定した中には、四狂帝のシヴリアとヨネツィが含まれていた。それがどういう事か分かるか?」

「ッッ!! あの二人が殺されたというのですか!? ……だとしたら相手はどれだけの強者だったのか……」


 そこで長女らしき方の女性が俺の頭に手を置き優しく撫でる。

 正直もっとガサツに撫でられるんだろうなぁと想像していただけに、驚いてしまった。


「こいつがどれだけ凄いか分かっただろ? もしかしたら一緒に寝ていた奴が必死こいて守ったのかもしれないけどな。だとしても生き残ったことには変わりはねぇよ」


 実は一緒に寝ていた奴が負魂機の中の人ですとは言えないもんな……

 それにしてもクオン、やっぱりメチャクチャ強かったんだな。なんだよ四狂帝って、しかも二人殺ってるらしいし。


 と、その後は筋肉の素晴らしさと下ネタっぽい話をしながら歩いていた。

 しばらく階段を上ったりしながら進んでいると、突然立ち止まり左の部屋を凝視する二人組。


「「少年、下がっていろ……」」


 息ピッタリに言った後、俺が下がるのと同時に二人共腰から片手斧を引き抜いていた。

 次の瞬間────


 バキィィィィッッッ!!!!


「セスから、離れろ」


 扉が崩れた先に立っていたのは、能面のように表情が動かないクオンの姿だった。

 下着のみを身につけた無表情な美人と、褐色筋肉二人組が向き合う姿はなかなかどうしてかツボにはまってしまった。


「…………!」

 声は出ないが精一杯笑う。

 一度は全ての感情を失わせてしまったかもしれないと思ったのだが、さっきの発言で何かしらの俺への感情が残っていることがわかった。


 それだけで俺は笑えた。


「…………!! ……っっ……」


 そして、それだけで俺は泣けた。


 俺はクオンの方に走り出し、クオンも両手を広げて俺を迎える。

 今はこれでいい、今はこの微かな感情の温もりで俺達は繋がっていることを理解できる。


 ただ、それだけで……。


お読みいただきありがとうございます!


シリアス回、しゅーりょーしましたね〜

一時期はどうなるかと思いましたよ、ってかシリアス回短すぎますよね(笑)


そのうちなんとかしたいと思います(笑)


それではまた次回で〜!!

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