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26.『愛』

今回……短いです!すいませぇん(><)

なんかこう、イメージを言葉にしづらいところがすごい多かったです(笑)


最近新しい話を更新する度にプレビュー数が増えているような気がしてとても嬉しいです。

ありがとうございます┏○ペコ

これからももしよろしければヨロシクお願いします( ̄^ ̄ゞ

 ゴキィィッッ!! ベキィッッ!!



 ふと目を覚ますと、骨を折っているかのような音が聞こえる。


(不思議なもんだな……まだ生きてたのか)


 肉体の感覚はほとんど無く、微かに開く目から体を見るとボロボロの服の隙間から胸部の球が見える。


 初めて見た時はほぼ灰色だったのだが、現在ではこれ以上青くなれないくらい青くなっていた。


 視界の全てを青に覆われ、その中にクオンの幻影が一瞬見える。


「く……ぉ…………ん」


 もう、まともに喋ることすら出来ないが絞り出すように彼女の名を呼ぶ。


(俺は……どうすれば……)


 負魂機の中身は間違えようもなくクオンであった。


 綺麗な緑色の髪を、相変わらず雑に束ねているのを見た瞬間負魂機への怒りはすべて消えてしまった。


 いや……俺があの時抱いていた感情は、恐らく怒りなんかではなかったのだろう。

 アレクターが不味いって言ってたくらいだから、もっと酷い感情だったと思う。


 憎しみとか殺意とか……考えればいくらでも該当する感情はあるだろう。


 でも、そんな感情ですらもクオンの姿を見た瞬間に消え去っていった。


 散々痛い目に遭わされたにも関わらず「クオンが生きてて良かった」と思ってしまった。


(俺は彼女のことをどう思っているんだろうか、そして、どうなりたいんだろうか)


 どうせ今目の前にいるんだ。

 俺の声が届くかなんて知らないけど、今まで思ってきたことも、今思っていることも、これから一緒に何をしたいのかも……全部言ってしまえばいいんじゃないだろうか。


 考えなくてもいい。

 一度口から声を出せば、後は流れるままの感情で吐いてしまえば良いのだから。


「ご……こひゅっ……」


 息すらしづらいのに喋れるわけがない……

 どうすることも出来ずに悩んでいると、骨を折る音が突然止まった。


 しかし俺の頭を持ち上げたことから、恐らく援軍が来たのではなく、俺の体の骨を満足するまで叩き折ったのではないかと思われる。


 微かに開く目から見える光景が、青から緑へと変わる。


(ああっ、綺麗だよ……クオン)


 迫る最後を感じながら緑を目に焼き付けていると、ふと感覚のないはずの唇に柔らかい感触が戻る。


 どういう事なのか分からず、懸命に目を開こうとするが、視界がぼやけて緑しかはっきりと見えない。


 すると突然、左目の視界が一気に開けた……否、クオンが無理やり開いたのだ。


 目の前に映るクオンは、泣きながら嗤っていた。

 そしてゆっくりと左目に唇が近づき、眼球を舐めだしたのだ。


(なんて顔してんだよ……こんなのがお前のしたかった事なのか?)

『失望……しましたか?』


 聞き覚えがあるかのような声が頭の中に響く。


『負魂機とは感情の暴走……あれは紛れもなく彼女の本心からの行動です』

(俺の人機を壊して、腹を貫いて四肢を潰し、眼球を舐めるのが……そんなのが全部クオンの本心だってのかよッ!! お前が誰かは知らないが、嘘をつくなッッッ!!)


 認められるわけがないだろう。

 クオンが俺を嫌いだったなんて……


『私は嘘をつきません。そして、彼女の先程までの行動は全てただ一つの感情でのみ行われています』

(ひと……つ……?)


 眼球を舐め終えたクオンは、視線を俺と合わせ、そのまま近づいてくる。

 唇には先程と同じ柔らかい感触が再来する。



『愛です』



(愛……クオンが、俺に? ありえない……それに、愛してるなら俺をこんなに痛めつけるわけがないだろう)


 自分で言ってて悲しくなるが、俺には本当に取得がない。

 そしてそれは、クオンが一番わかっているはずだ。


『愛には人それぞれの形があります。歪なものもあれば、整いすぎているものもある。中には、誰にも邪魔されたくなくて箱を作って閉じ込めてしまうものもあります』


 愛の形なんて昔からよく聞いたことがあったが、箱に閉じ込めるって言うのは聞いたことがない。


『心装人機とはその人の心を表すモノです。あなたの負の人機で考えて見てください。絶望が身体を包み込む鎖、怒りで相手を傷つけて、嫌な知識から眼を守り幻想を見る』


 頭の中の言葉はトマラナイ。


『彼女の負魂機はドウデショウ。全ての光を吸収するカのヨウナ紫は、あなたという光ヲ取り込む色。アナタの全力の怒りヲ受けナガラ、使用者にダメージを負わせない鎧は、取り込んだオマエヲニガサナイタメノ檻』


 まるで、本当のことを話しているかのように言葉をかけてくる声。

 この声は……キイテイテハイケナイ。


『あなたの、彼女に対する愛を私に捧げなさい。そうすれば勝たせてあげましょう』


 勝てるのか……勝っていいのか。

 何が勝利なのか、わからない、ワカラナイ。



────知りたい



「ら……てぃす……」

『ッッッ!? 呼ぶのをやめなさい!!』


 そんなに狼狽えるなよ……お前が嫌がってることが分かっちまうぞ。

 皆から見た時の分かりやすい俺ってきっとこんな感じなのかもな。


 精一杯、今出来る最高の力を使って喉を動かす。


「ラ……ティス、来て……くれ」

《もう、呼ぶのが遅いよ……セス》


 頭に響くラティスの声は、少しだけ震えているような気がした。


《お前の話を聞かずに飛び出して悪かったな》

《アタシだけじゃないよ、クローリーにも同じことしたでしょ》


 そういえば、そうだったな。

 結局レストも預けてきてしまったし……本当に俺はどうしようもないな。


《セス、疲れたでしょ……もう、全部忘れて寝る? それとも……》


 ラティス、お前っ……泣いてるのか。

 きっと、俺が「それとも」の後に続く選択肢を選ぶことを知っているからなんだろうな。


 本当に、俺の周りの奴らは俺の考えをすぐに見破ってくるよ……


《ああっ、戦う。そしてクオンを元に戻すッ!!》

《うんっ、知ってた……だから、セスの望む勝利を得るためにこの子の封印を解いてきたの》

『…………』


 封印……?


《この子は愛の精霊。正でも負でもない中立感情……契約すると意識ごと持っていかれるかもしれないし、後遺症も負の人機とは比べ物にならないほど大きい……正直、使って欲しくはない》

《でも、コイツならクオンを救えるんだろ。なら、やってみせる!》



 前も考えていたことがあったが、俺は弱い。


 弱いものが何かを欲する時、代償に何かを失うのは当たり前のことだ。

 それは、多大な出費だったり肉体への大きなダメージだったり、そして……心の欠損だったり。


 その代償が怖くないほどの『結果』を、俺は今求めている。



『お前は……私を使うのか。自身の愛を貫くための道具として……』


 そうだ


 他者への愛が削られる。


『お前は……自分が可愛くはないのか。愛していても、他人は他人だぞ……』


 そうだ


 自身への愛が砕け散る。


『愛する者の為なら、お前自身が欲していたこの世界がどうなってもいいと言うのか』


《そうだ》


 世界への愛が……喰われた。


『この世界を望み、欲していながら、一人の女の為だけにそれを求める心を捨てるとは…………良いだろう。使え、使いこなして見せろッッ!! セスッッッッッッ────!!!!』

「────ッッッッ!!!!」


 声にならない痛みが全身を撫でる。

 背骨をギリギリとすり潰したかと思えば、四肢を折っては戻し、折っては戻す。

 喉奥に何かを入れられたかと思えば、肺に水を入れられたかのような感覚に陥る。

 血が沸騰し内から肉を焦がす。


 突然暴れだした俺が逃げると思ったのか、クオンが抱きしめてくる。

 その表情は先程までの嗤っていたのとは違い、大切なものを奪われないようにする必死な表情だった。


(大丈夫……俺はもう、クオンを置いて行ったりはしない。その為の力を、心を……今君のためだけに示すッッ!示してみせるゥゥゥッッッ!!!!)



 瞬間、胸の球が眩く輝き、目の前に光の壁を展開した。

 光の壁の出現とともにクオンが弾き飛ばされる。

 クオンが涙を流しながら必死に壁を殴りつけるが、壁はビクともしない。



 体が再生したわけじゃない。

 声が満足に出せるようになったわけじゃない。

 圧倒的な力を手に入れたわけでもない。


────なら、愛の精霊は俺に何の力を託したかって?



 俺はゆっくりと立ち上がる。

 足が折れていても関係なく、ゆっくりとクオンに向かって歩き出す。


(伝えなきゃ……今の俺の思いを)


「…………!!」


 クオンの表情が必死なものから驚きへと変わる。


 俺がクオンのすぐ目の前に辿り着くと、光の壁越しにクオンを抱きしめる。

 壁は俺の体に同調して形を変える。



────『純粋な愛』以外のものを通さない力



「急にいなくなったりしてごめん、待たせちゃったね」

「……!? 遅いよっ……セス。私の事が嫌いになってしまったと思ったよ……」

「『君が俺のことを好きな限り……俺も君を好きでいる』……覚えてる?」

「もちろんだよ!あの言葉と君が抱きしめてくれたおかげで私は君を……」

「あれは無かったことにしてくれ」

「…………ッッッ!! やっぱり「そのかわりっ!」」


 間違った気持ちが伝わらないように、エルフの村で抱きしめた時よりも強く、二度と離さない気持ちを精一杯込めて抱きしめる。


「君が俺を嫌いになっても……君を愛し続けてもいいかな?」

「…………うんっ……うん!!」



 ────『愛』を伝える力


 光の壁は、触れ合う者同士に強制的に意思を伝える。

 喋ることが出来なくても、意識がなくても、頭のどこかで相手を思っていれば必ず伝わる。

 逆にどちらかが相手に対して何も思っていなければ、この壁は何にも意味を持たない。



 嬉しそうな表情をしているクオンだったが、突然困ったような顔をする。


「ねぇ、セス。私の心装人機が外れないんだ……セスに会えてこんなに嬉しいのに、心の中でずっと暗い気持ちが渦巻いているんだ……」


 負魂機は自分では外せない。

 感情の暴走を止める方法……クオンと初めての戦闘した時のことから、答えは出せている。


「このままだと私は、私を貶してきた者と、セスを殺してしまうことになると思う……だからそうなる前に────私を殺してくれないか」


 抑えられない力で好きなものを傷つけるのを見せられるのはとても残酷なものだ。

 クオンがこれほどの覚悟を決めているなら、俺がそれに答えなくてどうするんだ!


「分かった……きっと辛いと思う。でも、クオンが元に戻るまで、俺が必ずそばにいるから」

「……? 何を言っているんだい? 殺したら人は元には戻れないよ」



「分かってる、だからクオン……君の感情を、殺す」

読んでいただきありがとうございます。


一応愛の精霊の力に関しては、迷っていました(笑)

メッチャ強くすればいいんじゃね?とかも考えていたんですけど、それだとただの暴力になっちゃうかな〜って思ってこんな感じにしました。


次回は戦闘ですね〜!

うまく描写出来ていないことは理解していますが、どうぞお付き合い下さいヾ(⌒(ノシ >ω<)ノシ


それではまた次回(。>人<)

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