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16.獣人界の街

最近バーチャルYouTuberが流行ってきてますね〜

俺も流行に乗ってデビューしちゃおうかな〜なんて思ってたんですけど、パソコンはないし、技術はないし、何よりお金がありませんでした(笑)


俺がデビューする頃にはもうブームも終わっちゃってるのかなぁカタカタฅ:(´◦ω◦`ฅ):

 パチッパチッ……


 夜空を見上げ、焚き火の音を聞きながらウトウトしていると、それを邪魔するかのような小さい足音が聞こえてくる。


 土を踏みしめる音が周りを囲むように移動し止まる。

 そして、勢いをつけこちらに駆け出し────


────重たいナニかが落ちる音がした。


「ふわぁぁ、また食料が増えたな……さっき食ったばかりだけど、夜食にしようかな」


 焚き火の横に置いていた鍋に、水とエルフの村で貰った塩、そして、さっきの魔物を切って洗ってから入れる。


「それにしても、魔法は便利だよなぁ。罠にも調理にも使える」

「セスみたいな使い方できる人、あんまりいないけどね〜」

「……!!ラティスか……起きてたのか」

「昼に寝すぎた〜」


「子供かッ!」と、突っ込もうと思ったが、思っていたよりも眠気が酷く、突っ込む元気すら出ない。


 焚き火の炎のお陰で鍋はしっかり温まり、入れてた水と魔物の肉がいい感じに温まってきているのがわかる。


「まさしく肉鍋だよな……野菜が食いたい」


 前世では、すき焼きの食べ放題に行っても肉しか食わない程肉が好きだったが、野菜がないのはこんなにも辛いことだったのかと、ここに来て初めて知った。


「明日には食べられるよっ! 頑張ってセスッ! アタシも久しぶりに野菜食べたいっ!!」


 ラティスの言う通り、街まではもう少しで着く。正直、今すぐにでも歩いていきたい所なのだが、昼よりも魔物が多すぎるし、何より眠いため、魔法がうまく使えなくなっている。


 そのため、焚き火をして暖を取りつつ、水のバリアを張ってそこに魔力を流し込むだけの即席休憩所を作り出していた。


 そうこうしているうちに、鍋からいい匂いがしてくる。

(魔物……寄ってきちゃうかな〜、まあ、いいか。食おう)


 鍋を焚き火から外し、土の魔法で作ったテーブルの上に載せる。


「そんじゃあ、頂きます!」


 肉をフォークで突き刺し、口の中に入れる……ひと噛みごとに溢れる幸福感に、腹が満たされていくのがわかる。


「やっぱ、何回食っても美味いな……野菜と一緒に煮込むとどれだけ美味しくなることか……」


────────


「ご馳走様でしたっ……て、あれっ?」


 夜食を思う存分楽しみ、気がつくと太陽が昇っていた。

 眠る気がなかったので丁度いいとも言える。


「夜食のつもりが朝食になっちまったぜ……ドヤッ!」

「アッハハハッ!! なにこの顔おもしろーい!」

「面白いって……かっこよくないか?」

「全然ッ! アッハハ!! またやってよー!!」


……どうやら、寝てないから頭がおかしくなっていたようだ。

 俺がどんなに顔を動かしても、「カッコイイ」ラインどころか、「普通」に届くか届かないかの瀬戸際だってのに……


「スマン……忘れてくれ……」

「えぇー!! なんでなんでーッ面白いから皆にも受けるよ」

「んなわけな……あっ、そうか。確かに受けるわ」


 この世界の基準なら、俺はイケメンになれる! 最近妖精としか接点が無かったため、考え方が戻っていた。


(久しぶりにチヤホヤされたい! 早く街に行こう!!)


 そう決めると、焚き火やテーブルなどの片付けを素早く終わらせ、旅の支度を整えていた。


「行くぞぉ! ラティスー!!」

「ハーイッ! セスーッ!!」


 朝になり、遠くまで見えるようになると、ギリギリ見えるかな〜という距離に、塔のようなものが建っているのが見える。


「あの距離なら全力で走っても良さそうだな────リリース!」


 脚に魔力を流しながら、追い風を流し続け走る。


「イエーイっ! はやーいッ!!」


 ラティスも喜んでいるようなので、このまま走っていく。


────────


 特に馬車が襲われているということも、王女が連れ去られていることもなく、無事に城門の前に辿り着いた。

 門番は、秋田犬のような毛並みをしている……とてもモフりたい……


「ひ……人族!? しかも男が一人で……ん、コホンッ……街への入場には身元が証明できるものを提示してもらう……ます。あっ、あと毒物などの危険物がないか、道具を調べさせてもらう……ます」


 普通に門番なんだから「もらう」でいいと思うんだが……まあ、そこら辺はいちいち指摘することでもないか。


「はいっ、組合証です。道具の検査はどうすればいいですか?」

「確認した……しました! あぁ、もう! なれない口調はダメだぁ〜普通に話させてもらう!! 調べるのはこっちだ、着いてこい」


 連れてこられたのは、遠くから見えていた塔のようなもの所だ。

 どうやらここは門番とか見張りの人の寝床みたいだ。


「そこで、服を脱いで待っていろ! ハァ…ハァ…」

(コレは……もしかしたらマズイかも)


 今更ながらに危機感をおぼえる。


(別に獣人が嫌いとかそんなことはない、ただ、知らない人とヤるのはなぁ……)


「あのっ」

「なんだっ?」

「俺と……シたいんですか?」

「……!? ああ、そうだよっ!! だから、さっさと脱げよ」


 このがっつき方、童貞に酷く似ている……俺にもこんな時期があったから、よく理解できる。

 なので────


「ボクっ、初めてなんですよぉ。だから、もっとちゃんとお付き合いして、愛のある行為がいいなぁ。お姉さんとなら、そんな関係になれる気がするんだけどぉ……ダメっ?」


────一人称が俺から僕になったことなんて、頭の沸騰した童貞には気づかないだろう(こっちでは処女だけど)こんだけ媚売ればこういう奴は。


「あっ、あう……そ、そうかそうか! お、俺もそう思ってたところだ……ちょっと驚かせてやろうと思っただけだから、怖がらなくていいぞぉ」

「うん、ありがとうお姉さん! 今度街でデートしようねっ!」


 オェェェェェッッ!!

 自分でやっておいてなんだが、とてつもなく気持ちが悪い……今日のことは今後思い出すことはないだろう……


 こっちの世界の常識は、俺に幸運をもたらすこともあれば、今のような地獄を見せることもあるのだと再認識せねば。


────────


 さて、なんとかこちらの世界での貞操を守った所で、ようやく街に入ることができた。


《セス! あれ美味しそうだよっ、どんな味がするのかな〜知りたくない?》

《あぁ、久しぶりに野菜が食いたかったところだし、食ってみるか》


────街の中心と思われるデカイ道に所狭しと置かれている出店の数々、まるでお祭りでもあるかのようだ。


 緑色の野菜に串を通し、いい感じの焼き加減で焼いている出店があったのでそちらへ向かう。


「はいっいらっしゃいませぇ! 何本にいたしましょーッ!!」

「それじゃ、三本ほど貰います」

「はーい! それじゃ大銅貨一枚でございます!」

「んじゃぁ、コレで」


 あらかじめ取り出しておいた大銅貨を払う。


(このお金を手に入れた時は、まだクオンと一緒だったんだよな……まだ一週間も経ってないはずだけどすごく長く感じる)


「お預かりしました! そういえばお兄さんは今夜の舞踏会に出るのかい?」

「武闘会……ですか?」

「あららっ、知らないで来たのかい? なら店もすいてるし、私が説明してあげようじゃないか」

「あっ、お願いします……」

「はいよっ! それじゃあ何から話そうかね〜。あぁ、串焼きでも食べながら聞いておくれよ」


 そう言われたので、見た感じチンゲン菜の小さいやつを丸焼きにしただけのものに齧り付く。


《セスッ! コレって……》

《ああッ!! すげぇ美味いなッ!》


 絶妙なスパイスと焼き加減で野菜の青臭さが無くなっており、噛み締めた瞬間に水分と旨みが溢れ出す。そして、飲み込んだ後の後味がとてもスッキリしていて、いくらでも食べてしまえそうだ。


「────ということもあり、ここら辺では……ってお兄さん? 聞いてましたか?」

「……ハッ!! す、すいません……この串焼きが美味しすぎて聞いてませんでした」


 どうやら、店の若い男の店員が武闘会について話をしていたらしいが、それどころでは無かった。


「コレ、銀貨一枚分追加でお願いします」

「お、おう、随分気に入ったようだね……お兄さんみたいに人族も野菜を食べればいいのに」

「食べないんですか? こんなに美味しいのに」

「人族は基本肉とパンを食べるからね。スープに入れるとしても一部の野菜……というより薬草とかだね。まあ、街とかに行けば少しは野菜もあるかもだけど……村とかだとやっぱり肉が主流だね」


 随分栄養バランスが偏りそうだな……どうせバランスの崩れた食事をしていて、いざ倒れたりしても流行り病とか、疫病とかって言いそうだけどね。

 もしかしたら回復魔法で治しちゃうかもしれないけど。


 てか、パン作ってんなら小麦あるだろ。

 小麦の生産で手一杯で畑には手が出せないのだろうか……少量しか作ることが出来ないから街にしかないとか? まあ、別にいいか、そこまで関係ないだろうし。


「へぇ〜、そうなんですか。教えてくれてありがとうございます!」

「いやいや、こちらこそこんなに買ってくれてありがとね。美味しいって言ってもらえたのも久しぶりだよ! もし、舞踏会にでるのなら『スティリア』という店に行ってみるといいよ!」

「はーい! また機会があったら、買いに来ますね〜」


 串焼きの男と別れしばらく歩くが人が多く、なかなか前に進まない。しかも獣人が多いのでフサフサとした毛が目に入ることが多い。


 武闘会に出る気は今の所ないが、とりあえず紹介された『スティリア』に行くために、大きい曲がり角ではなかったがとりあえず右側の道に入りしばらく歩く。


────────


「繋がってなかったのか……」


 小さい道は行き止まりになっており、大通りには出られないようになっていた。


(どおりで皆こっちに来ないわけだ……仕方ない引き返すか)


 少々入り組んではいたが、覚えられない程の道ではなかったので、素早く戻っていく。

 その途中────


(こっち行けば大通り行けんじゃね?)

(こっちが駄目ならコッチなら……)

(コレは行ったでしょッ!)


────多少の寄り道をしてしまい、


(完全に迷った……どうするかな)


 どこに行っても行き止まりの状態になってしまった。

 途方に暮れて適当に歩いていると近くから小さい男の子の声が聞こえてきた。


「たす……助けて……おばあちゃんッ!」

「まさかこんな所に……の孫がいるなんてなぁ」

「見た目は最悪だけど、人界の帝国辺りに売ればいい値段になりそうだな〜ヒッヒッヒッ!」


 誰の孫かはよく分からんが、大体こういう時は王族関係だというのがお決まりだ。


 助けた後にお礼とか言われて長く留まるのも嫌だと思い、その場から立ち去ろうとするが、よくよく考えてみると、俺の下働きとしての任務は『困っている人を助ける』だから、助けなければ行けないのでは?


「うーん、うーん」と悩んでいると後ろから足音が聞こえてくる。方向としては声が聞こえた逆からだ。


「おいっ! 人族の兄ちゃんも一人でいやがるぜっ!?」

「最高じゃねえか! こいつもついでに攫っちまえッ!」


 何でこいつら後ろから? と思っていたが、よくよく考えるとここは迷路のようになっているから、聞こえた方角に歩いていっても会えるとは限らないのだ。


 偶然コイツらの目指す場所への道が俺のいる道と重なっても何ら不思議なことは無い。


「運がねぇな……」

「ヘヘッ、そうだなぁ兄ちゃんッ!」

「こんな所で一人でいたのが、運の尽きだ! 大人しくしてれば痛くはしねぇからよ」


 二人組の美人の人族……片方は肩に袋を担いでいるので戦闘は行えないだろう。

 こちらに警戒なく歩いてくる馬鹿は、ガチガチの装甲で固められている。


(魔法で中から焼くか……それとも棍棒で殴るか……)


 二択で迷っていると、俺の肩に手が置かれる。


「いい子だなぁ、ホレッ! アソコの袋にお前さんの仲間がいるから、大人しく一緒に入ってなさい」


 と言うと、袋を持ってた方がゆっくりと降ろしてこちらに手招きをしている。


(こいつはラッキーだ……やはり特典で運を高めてもらって正解だったな。こんな馬鹿な誘拐犯がいるわけないだろうに……)


 袋と女に近づいていく、女は完全に油断し、綺麗な顔が歪んでいる。


(集中しろ……集中しろ……集中しろ……行くぞッ!三……二……一)


 その瞬間、脚と腕に魔力を流す。

 俺を袋に入れようと、袋から手を離した瞬間に袋を抱き上げ適当な曲がり道でたくさん曲がる。


 勿論道がわからないため適当にはなってしまったが、逆に奴らも予想が出来なかった様で、時間を稼ぐことには成功していた。


「袋の中にいる人聞こえるか? 今女達から君を助けて隠れている最中だ……だから袋から出した瞬間にいきなり走り出したりとかはしないでくれよ」


 そう前置きをした後で、袋をゆっくり地面に置き、中の足を引っ張り外に全身を出す。

 猫っぽい獣人の男の子の目や口、手首についていた拘束具を魔法で外すと、泣きながら俺に抱きついてきた。


「よしよしっ」と頭を撫でていると、泣き声を聞きつけたのか二人組の走る足音がこちらに近づいてくる。


 おそらく奴らはここの道について詳しいはず……場所がバレた以上、ここにいれば戦わなければならないのは目に見えている。


「一つ聞きたいことがある、泣きながらでもいいから答えてくれ。君はここの道について詳しいか? 詳しくなくても、ここから大通りに出られる道は知っているか?」

「ヒッグ……ウエッ……じっで……じっでるぅぅぅぅ!」

「そうかそうか、よく答えてくれたね〜よしよしっ」


 これで、奴らがもし道案内もできない状態になっても、大通りに戻ることができることが分かった。

 と、そこへ丁度よく奴らが現れた。


「ハァ……ハァ……俺達を騙して逃げようなんざ……百年はえーんだよッ!」

「大人しく捕まっておけば……痛い目あわずに済んだのによぉッ!!」


「よしよしっ、そのまま泣いてるんだよ。すぐ終わるから、アッチを向いちゃダメだよ────リリース」


 魔法が発動すると、二人に火の玉がぶつかる。

 鎧が魔法を弾いているのか、全くダメージを受けている気配がない。


「ヒヒッ! そんな火の玉くらうわけがないだろ」

「逃げられた分たっぷり可愛がってやるからな〜」


「うーん、ラティス〜、火で包むイメージでいいかなぁ」

「このイメージだと火力が足りてないね〜。もうちょっと大きく火で囲んで……凝縮する感じで〜……そうそうそう! そんな感じそんな感じ」

「ありがとう! それじゃ────リリース!!」


 今度は奴らの周りを囲むように火の膜ができる。そして膜の外側から徐々に炎が侵食していく。


「な、なんだこれ! アチィッ!! 鎧が熱い! アッツッ!! 熱すぎて触れない! 脱げないッ!!」

「クソッ! なんだこの膜はッ!! ぶつかっても切っても反発する……こんな……こんな魔法! どんだけ魔力使えばこんなのが出来るんだよッ!!」


 そして、イメージ通りに膜の幅が縮まっていく。それと同時に中の熱気も高まっている事だろう。

 これ以上の汚い声は、子供に聞かせてもなんの意味もないだろう。


 奴らの声が聞こえない位置に移動して、子供が泣き止むのを待ってから声をかける。


「それじゃあ、行こうか。道案内してもらってもいいかな」

「う、うん。任せて……お……お兄ちゃん……」


 あと少しで俺の中に新しい性癖が生まれそうになったが、なんとか押し止め、子供に手を引かれながら大通りへと向かった。


読んでいただきありがとうございます┏○ペコ


ショタ…ですね。

俺の話の作り方は、思いついたことをポンポン入れていくスタイルなので、自分でも予想がつきませんでした( °_° )


仲間にするか検討中です(笑)

仲間にして欲しい、欲しくないを感想とかに書いてくれてもいいんだけどなぁ|´-`)チラッ


という訳で(どういう訳だッ!)次回もよろしくお願いします(。>人<)

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