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15.一人と妖精達の旅

 肌を撫でる爽やかな風を感じる。

 遠くの空には大きな雲が見えるが、こちらに流れてくるにはまだ時間がかかるだろう。


 足元には草が生えており、チラホラとリスくらいの大きさの小動物も見かけるようになっていた。


「ふわぁぁ〜……こんだけ天気がいいと眠くなるな〜」

「そうだねぇ、アタシも眠くなってきちゃった〜寝ていい?」

「お前が寝たら誰が道案内するんだよ〜」

「案内なんて必要ないよぉ、この方向ずっと真っ直ぐだから、森もないから安心して。んじゃあ感覚共有かけておくから、痛いこととかしないでね〜おやすみぃ……」

「えぇ……マジで寝るのかよ……お〜い、ラティス〜?」


 その後、何回か呼びかけるが返事がなかったので諦めて道を歩いていく。


 あの亀裂を超えてから、しばらく荒野が続いていたせいか、草や花を見ると安心する。


 ここに来るまでに、街で買った分の食料を食い尽くしてしまい、魔界で倒した魔物を大雑把に切り分け、腐った部分のみを削り捨ててから、火にかけて食べていた。


 特典のおかげで病気とかにかからないのはわかっているのだが、明らかに腐っている所は精神的に食いたくなかった……


 と、食料に関して考えていると、「グルルゥ」と唸り声を出しながら、狼の頭をつけた人型の魔物が六体現れた。


「コボルトか、美味しかったから大歓迎だよ、っと────リリース」


 魔法を発動すると六体いたうちの三体の頭が風の刃で切り取られた。

 残った三体は、俺を囲むように散開する。


(接近戦は得意じゃないけど、練習しないと後々困るだろうからなぁ……)


 魔法を使う時よりもさらに集中する。

 三体がジリジリと距離を縮めて来ているので、逆にこちらから仕掛ける。


「ゼェイッ!!」


 真正面のコボルトを棍棒で思いっきり叩くと、ガードしていた両腕が使い物にならなくなっていた。


 続けて攻撃を入れようとしたら、後ろの二匹が慌てて突っ込んできたので、腕を粉砕したコボルトを掴んで、片方に押し出して時間を稼ぐ。


「んッ、ハァッ!!」


 投げた体勢からそのまま力を入れて、無理やり棍棒を振り抜く。

 コボルトは投げたあとがチャンスだと思っていたのか、攻撃の体勢に入っていたので、脇腹のあたりに直撃した。


「フゥ……あと一体か────リリース」


 コボルトが腕が折れた仲間をどかしている間に、棍棒に属性を付与していく。


「よしっ、成功だ! んじゃ、コレでおわり……だ?」


 いざ、叩きに行こうとしていた時、コボルトが仰向けになりこちらに腹を見せていた。


(えぇーと、確か犬が腹を見せるのって服従の時だって聞いたことがあるけど……狼もそうなのだろうか)


 両腕が折れているコボルトも、気づけば腹を見せてこっちを向いていた。


「可愛い……」


 魔物だから騙している可能性もあるけど、こいつら相手なら騙されても返り討ちにできるので、見逃すことにした。


「ラティス! ラティース!! ────ハァ、起きないのな……仕方ないか、ミハク! いるか?」

「ハーイッ! いるよぉ。セスゥ呼んでくれて嬉しいよぉ」


(オイィィィィ!! 直ってねぇじゃねぇかッ!! 美熟女は何してたんだよ!)


「セスゥ……呼んだってことは何か用事があるんだよね?」

「あ……あぁ、魔法で腕とかを治せるのかを聞きたくてな」

「フフッ……頼ってくれて嬉しいっ。大丈夫、できるよ。イメージの仕方はアタシが見せてあげるから、ツ・ケ・テ」


(なんか、ここまで露骨だと逆に興奮しないもんだな……さっさとコボルトの腕を治して、解除するか)

「わかった────負の心装人機、セット!」


 心装人機に関しては、一度起動してしまえば後は魔法と同じで、好きな言葉で装着することが出来るらしい。


 俺は区別してイメージしやすいように、ラティスを正の心装人機、ミハクを負の心装人機と、装着時に呼ぶことにしている。


「ねぇ、なんでそんな感じで呼ぶの? 名前で呼んでって言ったじゃん……」


……ただ、心装人機は妖精達の力なので、気に入られないとそもそも使うことが出来ない。

 もちろん、ミハクの気分が悪くなると使わせてもらえないのである。


「なら、どうやって装着すればいいんだよ……なんだ?『ミハクッ!来いっ!!』とかでも言えば良いのかよ?」


 次の瞬間、俺は心装人機を纏っていた……


「来ちゃったっ……テヘッ♪」


(めんどくせぇぇッ!! なんだこいつ、最初こんなんじゃなかっただろ!)


「セスゥ、この通りにイメージすれば腕を治せるよ」

「あ……あぁ、ありがとう」


 とりあえず、コボルトのことを今は考えよう。ミハクに関して他のやつに聞くのはその後だ。


「ふぅ……リリース」

「グゥルルァ〜」


 コボルトの気持ちよさげな声と共に、腕が治っていく。


────────


 腕が治り終わると、コボルトは俺の前で騎士のように膝をついた。


「「主よ、私達を旅のお供にしていただけないだろうか」」

「ごめん、何言ってんのか……わかる……!?」


 先ほどまで、グルグル唸ってたヤツらがいきなり話し始めたので驚いてしまう。


 特典の一つに全言語が読み書きできるものがあったのを思い出す。

 だがひとつ疑問に思ったことがある。


「お前ら、戦闘中になんか喋ってた?」


 そう、さっきまでこいつらの言葉が聞き取れ無かったのに、いきなり聞こえるようになるのだろうか。


「「いえっ、相手に動きがバレないように、唸り声で合図を取るように普段からしています」」

「なるほどなるほど、それなら納得だ」

「「そ、それで! 私達は……」」

「ダメだ」

「……!!そう……ですか。仕方ありません、元はと言えばこちらから襲いかかったのですから、当たり前です」

「あぁ、いやっダメな理由は……」

「いや、気にしないでください! ただ、腕を治してもらったことは本当に感謝しております!……この礼はいつか必ず。それではっ!おい、行くぞ」

「ああ、私からも感謝を。それでは……」


 そう言うと、コボルト達は仲間の頭だけを持って魔界の方へと歩いていった。


「……コボルトの肉を食べるけど、それでもいいなら仲間になってもらおうと思ってたのに」

「セスゥ、それは言わなくて良かったと思うよぉ」


 まあ、俺だって人間の肉を食うやつとは一緒に歩きたくないからな。言わなくても答えは分かっていただろう。


 とりあえず、残っていたコボルトの体を収納し、人機を解除しようとするが。


「ミハク、戻ってくれ……」

「いーやーだー!! アタシはセスから離れないッ!!」


(だから! こいつなんでこんなに面倒くさくなってんだよ!! アイツらはどうした!)


『おい、いるんだろ! こいつの説明をしてくれよ!』

『ククク、主が助けを求めてくることはわかっていた……が、僕は少しアイツを見誤っていたようだ』


 おっ、ガキがなんか言っているが……前ほど、声に元気がない。何やら落ち込んでいるようだな。


「グガーッ! スピーッ!!」


 恐らくアレクターだろう。よく寝ているようだ……コイツは無視でいいな。


『わ……私が吸えないってことは……ブツブツブツブツ……』


 前に性欲吸ってくれた美熟女……かな? なんかブツブツ言ってて声が聞き取りずらいが……


「セェスゥ……なんでアタシを無視して他の奴と話そうとしてるの? お話したいなら……アタシの耳元で声を聞かせてほしいなぁ」


 この様子を見る限り美熟女は失敗して、ガキはミハクを止めようとして逆に返り討ち……かな? アレクターは興味がなくて寝てしまったと。


(結構なカオスだな……最悪着けっぱなしでも問題は無いが、戦闘技術が上がらなすぎて、いざという時に困りそうなんだよなぁ……仕方ないかぁ)


「ミハク……今度そっちに行った時になんでも好きな言葉言うから、今は戻ってくれ……」

「今なんでもって喋ったからね! 約束っ!だよっ」


 そう言うと、ミハクの声が聞こえなくなるのと同時に、心装人機も解除された。

 コボルトの腕を治すだけだったのにすごく疲れた……


「はぁ……精神的に疲れたよ。とりあえずラティスの言ってた方にさっさと向かおう、だいぶ時間を損したからな」


……答える声がないというのも、やっぱり寂しいかもな。

 そう思いながら、大きな雲がある方向へ歩き始めた。


読んでいただきありがとうございます!


作中に出てくるコボルトは女性です( *´︶`*)

仲間にしてたらハーレムっぽい展開になってたかもしれないですね〜

えっ、顔が狼だって?そんなの後からどうにでもなるんじゃないですかね(適当)

まあ、あとから無理やり顔変えたりとかするのは可哀想なのでしません(笑)


先に言っておきますが、竜とか出てきても擬人化はさせません(><)

楽しみにしていた方は申し訳ないです┏○ペコ


それではまた次回( ̄^ ̄ゞ

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