10.初めての街【和】
お待たせしました〜~( ~´・ω・`)~
今日からまた月曜日…今日は会社から投稿しております(笑)
今週1週間また頑張りましょう!!
雲一つない快晴の空、時間がまだ早いからなのか街には人影が少ししかみえない。
────昨日戦った後宿へ直行し、ベッドを見た後からの記憶が抜けている。
おそらく気を失うかのように寝てしまったのだろう。
朝の街をしばらく散歩していると、休む所がありそうな広場があったので入ってみる。
座れそうなものを探していると、重たいものを振っている音が微かに聞こえる。
(気になるからちょっとだけ見に行こう)
好奇心の赴くまま音がする方に近づいて行き、草むらから覗いてみると。
そこには、長大な斧をおもちゃの剣の様に振り回している人がいた。
(あの後ろ姿は、間違いなくヘレナだな。それにしても、武器を振り回して何をしているんだろう)
疑問に思いながらしばらく見ていると。
「ヌガァァァ!! 舐めた真似しやがってェェ!! 次は武器アリで勝負して、ぶっ倒してやるからなァ!!」
……どうやら、昨日の力量把握の試合で溜まったストレスを発散するのと同時に、練習をしているようだ。
「アイツには予測できない、振り方と速さで……次は、次こそは……勝ってやる……男なんかに負けている場合じゃ……」
どうやら、相当落ち込んでいるようだ……
(流石にこれ以上覗き見するのは良くないな)
と、帰ろうとした時────バキッ!!
下を向くと、木の枝が足元で二つに折れている。
やってしまったァァ!! コレ絶対バレるやつゥゥ!!
恐る恐るヘレナの方を見てみると、目が合った……ん?目が……合う?
よくよく見てみると、昨日ヘレナの顔面にあった無数の生傷が消えて、古傷だけになっていた。
どういうことだろうか……昨日の傷だと、普通は今ある古傷のように残りそうなものなのだが。
「て……テメェ! 見てたのかよ!」
「ゴメン、なんか振り回すような音が聞こえたから……それより、昨日顔にあった傷、どうしたの?」
「……!?み、見るなっ!! クソッ今日はまだ傷をつけてなかった!」
ゲェッ!! 表情がわからなくなるレベルの傷を、毎日自分でつけてるのかよっ!?
自傷行為もここまでいくとただのヤバイやつだな……だが、「オシャレは我慢」という言葉も聞いたことがあるから……いや、限度があるだろ!!
「ちっ! まあ、相手がテメェなら別に嫌われても構わねぇしな……どうだ?顔のパーツがよぉく見えるだろ」
確かによく見える。
左目は本当の傷なのか、治ることなく閉じたままだが、右目は二重で綺麗に大きく見える。鼻も高く、唇はピンク色でとても艶めかしい……
────クオンと同じくらい美人だ……方向性が違うけど、間違いなく美人だ……
「ギャハハッ!! 流石のテメェでも、俺の顔を見たら立ったまま気絶しちまったか!! ……ハハッ、仕方ないよな……」
どうやら、俺はまた一人の世界に没頭していた様だ。ヘレナが知らぬ間に帰ろうとしている。
「待てぇい!!」
ビクッ!
呼び止めようと思い、つい大声で言ってしまったら、ヘレナがすごい勢いで飛び跳ねていた。
「な……なんだよ、いきなり大声出すんじゃねぇよ……」
自分だっていつも大声で喋ってるくせに……というか、
「お前、さっきまで元気だったのに、何落ち込んでんだよ」
「はっ?」
「だから! なんでいきなり元気をなくしてるんだって聞いてるんだよ!」
「お、お前……何なんだよ、近づくなよ! お前だって俺のことをブスだと思ってるんだろ! ホントは吐き気堪えてるんだろッ!」
そうか、こいつもクオンと同じなのか……見た目だけじゃなく、周りからの評価も。
「心配そうに近づいてきたと思ったら、俺の顔見た瞬間に吐きやがって! だったら最初から近づいてくるんじゃねぇよ!」
「お前は────」
「近づくなっ!! 男に嫌がられるのはもう嫌なんだよ! 女ならまだ我慢できる……でも俺だって女なんだ……男に嫌われたくはないんだよ……」
なぜ痛い思いをしてまで顔面を傷だらけにしたのか、なぜクオンには強気でいけたのか、なぜ俺と戦おうとしたのか……これで全部わかった。
「ヘレナ」
「なんだよ! 気安く名前を呼ぶんじゃねぇ! 心の中ではお前も────」
「聞いてくれ」
気づけば、俺はヘレナを抱きしめていた。落ち着かせるように、背中をゆっくり撫でながら声をかける。
「ヘレナは、普通になりたかったんだよね?」
「……ッ!! そうだよ、俺は皆と一緒に話とか買い物、依頼達成後の打ち上げとか……皆が普通にやってるようなことをやりたかったんだ……」
「クオンと会ったときに貶していたのは、自分と同じだと思ったから?」
「……アイツは、クオンは……俺と同じだ。場所も相手も違うが、虐げられてきたということは変わらない……ただ、違うことがあるとすれば……俺はこの顔から逃げ、クオンはありのままの自分を貫いたことだ」
「そして、ヘレナが俺と戦ったのは────」
「ああ、『男』への八つ当たりとクオンへの嫉妬さ……不思議だな、あんたに抱きしめられると、言いたくなかったことが何でもなかったかのように言えてしまう」
きっと、俺じゃなくても良かったと思う。
誰かがそばにいて、親身になって話をする……それだけでヘレナは素直になれたと思う。
ただ、その誰かが今まで出てこなかっただけの話だ。
「ありがとう、こんな俺を抱きしめてくれて。でも、もういいよ……無理すんな」
「もし……もし辛いなら俺と────」
「私たちと一緒に来るか? ヘレナ」
……へっ?
「それにしても、起きたらセスがベッドから消えてて焦ったよ……起こしてくれても良かったんじゃないかな?」
こ……この声は!?
「「クオン!?」」
「クハハッ、息ピッタリだね。それで、答えを聞いてないんだけど、どうかな?」
さらっと流してしまったが、俺のセリフ奪われたよね? 結構いいところだったと思うんだけど……てか、いつごろからいたんだよ〜!?
頭の中で色んな疑問が出ている間に、クオンとヘレナは何やら話しているが、こちらにはよく聞こえない。
《んん〜! よく寝た〜おはよう!》
ん〜、どうしよう、クオンとは別に付き合っているわけじゃないから不倫ではないし、やましいことは無いはずだ────
《お〜は〜よ〜う〜!! ……ハァ、もう怒った!!》
「おはようって言ってんでしょ!! セ〜ス〜!!」
「ドゥワァッ!! ……なんだラティスか、おはよ。大声出さなくても聞こえるんだから、驚かさないでくれよ〜」
「聞こえてる……ですってぇ〜!!」
クソッ、ラティスに構ってる場合じゃないのに〜!!
────クオンside────
「どうだいヘレナ、私もセスも、君が来ることは構わないんだよ」
「で……でも俺は、こんな顔だから、あのセスって男も嫌なんじゃ」
ヘレナに自信が無かったのはあの頃からだね……いや、『私たち』には……かな。
「クハハッ! なら、何で私は嫌がられていないんだろうな。私とお前は、『同じ』なんだろ?」
「!? それは……」
「セスは少し特殊でね、『私たち』みたいなのが美人に見えるんだってさ」
「んなっ!? そんな奴存在する訳────」
そうだね、私も存在なんかしないと思っていた。でも────
「抱きしめられて、背中まで撫でられてたのに、まだ信じられないかな」
────一回抱き締められれば、セスが本当に嫌がっていないことが……しっかりと受け止めてくれていることがわかる。
「体の感覚ではわかってるけど……」
「なら、セスについて少し教えようか。私も聞いた時は半信半疑だったんだけどね」
────────
「という訳なんだ」
「確かに、それを信じろと言われるのはなかなか厳しいな」
それはそうだね、私もいきなりセスが異世界人だって聞いても嘘だと思ってたから……これは、体験してもらった方が早いかもね。
「ちょっとセスの方見てるといいよ」
ヘレナがセスの方へと顔を向けて、私から視線が外れた瞬間に後ろへ周りこみ────
「セス!! こっちを見てくれ!」
────ヘレナの胸を揉んでやった。
「んなっ、なにしてるんだよ……クオン」
「クハハッ! ほら見てみなよ、セスのあの、舐め回すかのような目……まるで女が男を狙う時みたいな目をしてるでしょ」
「まさかそんなわけ……ホントだ……」
「少しはわかってくれたかな、セスは『特殊』なんだって」
「……もう少し、考えさせてくれ……明日には答えを出すから」
────落ちたね
「わかった、それじゃあ今日はここまでだね」
「ああ……クオン! ……その、ありがとな!」
「クハハッ! お礼を言うならセスにいいなよ。私とヘレナがまともに話ができるようになったのは、彼のおかげだからね」
「そうだな……うん、そうだな!!」
ヘレナはもう大丈夫だろう。
とりあえず今日は、昨日できなかったモンスターの素材の換金と、買い物をしなければね。
セスとなら、今までやってきたことが何倍にも楽しくなる……ヘレナにもその喜びを共有してほしい。
そんなことを思いながら、ラティスと言い争いをしている、彼の方へと歩き始めるのだった。
ハイッということで今回はクオン視点も入れてみました。
もしかしたらいらなかったかな〜とかも思ったんですけど、ガールズトークって一応必要かなって( ̄▽ ̄;)
という訳で、第10話でした。
読んでいただきありがとうございます┏○ペコ
感想とか、作者に聞きたいことなどお待ちしております( *´︶`*)
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それではまたヨロシクお願いします!