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短編まとめ

桃とおじいさん

作者: カタタン

初投稿です。

 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

 ある日、おじいさんは川へ洗濯に、おばあさんは山へ熊狩りにいきました。

 おじいさんが川で洗濯をしていると、川の上流から、大きな桃が、ゆらゆら、ゆらゆらとながれてきました。

「おお、なんと大きな桃じゃ」

 おじいさんは大喜びで、その桃を取ろうと川へ入っていきました。

 すると、なんと言うことでしょう、おじいさんは足を水に(すく)われて転んでしまいました。

 川の勢いが思っていたより速かったのです。

 おじいさんは、川の流れで手が流されなかったことから、体も流されない、そう思ってしまったのでしょうか。

 それより、一番の失敗は、おじいさんが大きな桃を川岸まで運ぶことが出来ないのに、桃に釣られて川へ入ったことです。

 大きくて米俵位ある大きさの桃を、おじいさんの腕力で水中から持ち上げる、そんなことは無茶なことでした。

 おじいさんは元気な頃より腕力が幾分も落ちているのです。

 これらの無茶なことをしでかしたのは、思考力の低下だと考えられました。

「ああ、助けてくれ、助けてくれ」

 おじいさんは膝下より低い深さの川で、溺れたと思い込み、手足をばたばたさせました。

 ちょうどその時、山から熊を背負って帰ってきたおばあさんは、大変な思いをしているおじいさんを見て、

「まあ、おじいさん、大変!」

 と言って川からおじいさんを引き上げました。おじいさんを助けることに関して洗練されている、そんな動きでした。

 ついでに桃も熊の横まで運びました。

「おじいさん、いつも言っているじゃありませんか。危ないことは私に任せて下さればいいのです」

 おばあさんは、おじいさんを(たしな)めるように言いました。

 その通りです。おばあさんは見かけは力があるように見えない、と良く言われていますが、実際にはかなり力があります。なんたって熊を背負って山を下りることが出来るのですから。

「じゃがなあ、(おら)は桃が大好きなのじゃ」

 なんとおじいさんは、大の桃好きだったのです。

 これが、思考力の低下の原因の一端だったのかも知れません。

「なら、仕方がありませんね、帰って一緒にかわを剥きましょう」

「いやあ、あんたさんが来てくれて、助かったわい」

「あんたじゃなくて妻ですよ」

 人のことはちゃんと呼んだ方が喜ばれるものです。

 おじいさんは、熊を背負い、桃を頭に乗せている、おばあさんの隣を歩いて家に帰りました。

 その後、おじいさんの手によってほとんど皮に実が残らない位綺麗に皮を剥かれた桃を、二人で仲睦まじく食べました。

 熊は、いつも通り、お隣さんにあげました。

 お隣さんは熊の肉が大好きなので、とても喜んでお米をくれるのです。

 そんな風に近所付き合いも上手くいっている二人は、ずっと幸せに暮らし続けたのでした。


 人は、一人で生きるということはとても困難なことです。自分には出来ないことでも、他の人が簡単に出来る、そんなこともあります。そんな時、人をどこまで頼ることが出来るか、自分に出来るのはどこまでか、そんなことを考えてみるのもいいでしょうね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 古典作品のパロディですが、発想が面白いと思いました [気になる点] おばあさんが怪力なのに理由の説明がなかったのですが、なにか裏設定のようなモノがあるのでしょうか? [一言] こちらの作品…
2017/11/26 10:05 退会済み
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