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4話:ただの強豪校選手

日曜日の静岡駅近くにある全国に展開されているカフェに俊哉が入ってきた。

「えっと・・・カフェモカ一つ」


と飲み物を頼み、飲み物のカップを乗せたお盆を持ちながら誰かを探す。



「お~い、こっちこっち」


と奥の方から声が聞こえると俊哉はすぐに声のした方向へと向かう。

そこにいたのは二人の少年。

一人は少し長めの髪にジェルを塗り固めた見た感じチャラい感じの少年と、坊主頭で眼鏡をかけジト目が特徴の少年が座っていた。



「やぁやぁようこそ~」

「ようこそじゃあ無いよ竹下」


とチャラい感じの少年の言葉に返事をする俊哉。

このチャラい感じの少年の名は竹下隆彦、そして眼鏡の少年は山本寛史。

二人とも中学時代は俊哉と対戦相手として立ちはだかった選手である。


三人でテーブルを囲む俊哉、竹下隆彦(以降より竹下)、山本寛史(以降より山本)。

少し沈黙が続こうというときに、竹下が切り出してきた。


「まぁ、俊哉を呼んだのは一つ。高校の事だ」


やっぱその話か、と予想が当たった俊哉。

俊哉の記憶では竹下も山本も県内の強豪校から誘いを受けているはずであり、おそらくはそこへの勧誘であろうか。


「あぁ悪いけどもう高校は・・・」

「聖陵学院に行かねぇか?」

「・・・はい?」



聞いたこともない高校の名前にどう反応していいか分からない俊哉。

竹下はそんなことはお構いなしに話をつづけた。


「万年初戦敗退の常連で県外は勿論だが県内でも完全の無名校、しかも今年は人数が足りないって話だ。そこでだよ俊哉、俺らと一緒にそこ行かねえか?無名校から強豪校へ喧嘩売ってやろうぜ。」


「うおぉ・・・」


またしても情けない言葉を発する俊哉。

確かに話は魅力的ではある、しかし俊哉にとってデメリットの方が圧倒的に大きすぎるその話に乗ることはできない。


「悪いけど俺、もう高校決めてるんだ」

「どこ?」

「神奈川陵應」


間髪入れずに淡々と会話をした俊哉と竹下。

しばしの沈黙が広がる中、竹下はズッとカップの半分ほどに減るまで飲み物を飲み込むと俊哉の目をジッと見ながら話を始める。


「俺も、静岡なら明倭や桐旺やほかの高校に誘われてんだ。確かにそこに行けば割と簡単に甲子園へと行けるかもしれん。んでもよ、それじゃあなんか物足りねぇんだ。ただの甲子園に出た強豪の選手ってだけだと思うんだ。だったら俺は、誰に笑われようとも馬鹿にされようとも無謀な夢に挑戦してみたいんだ。俊哉、お前はただの強豪校の選手でいいか?」


その竹下の話に俊哉は言葉を詰まらせた。

竹下の考え方は一理あるし、俊哉自身が今この話を聞いてものすごい興味が出てきている。

しかし、彼にはそこまでの事を言う自信が無かった。


「俺は・・・」


言葉小さめに話し出そうとする俊哉、しかし携帯の着信音で俊哉の言葉がかき消された。

着信があったのは竹下の携帯。


「あ、わりぃ。少し空けるわ」


と言い立ち上がり携帯で会話を始める竹下。

その様子を俊哉がボッと見ていると竹下の隣にいた山本が口を開いた。


「悪いな突然こんな話を切り出して。アイツな、これでも真剣でこの前も・・・ん?どうした?」


と話をしていると俊哉の視線に気が付いたのか言葉をかける山本。

俊哉はカタカタと震えながら言葉を漏らす。


「しゃ・・・しゃべった」

「おい!」

「しゃべれないかと思ってた」

「おい!!」


と、この世の物を見たとは思えない表情で話す俊哉にツッコミを入れる山本。

その後も「まさか喋るとは・・・」や「日本語上手ですね」という俊哉の言葉にツッコミを入れていく山本だったが、ため息をつきながらぼやく。


「クソ。初対面の竹下と同じこと言いやがる」


と頭を抱える山本だったが、すぐに頭を上げると再び話し出す。

俊哉はというと未だに驚いていたのであった。


次回へ続く。

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