5日目
記憶の中の彼はもういない…。
その事実を受け入れながらも…。受け入れなかった少女
一方的なバトルの末…。彼女らに救いはあるのだろうか…。
少年は目を覚ました。
そこは戦場で、体を起こせば其処には先ほどまで暢気に話をしていた兵士の無残な遺骸がありその直後爆音が聴覚野を揺らし、視界がくらむ。
「くっそなんだよ!何だってんだよ畜生…。畜生…。」
逃げ場なんてなかった。逃げて、愛しの彼女のもとへ…。そんな現実逃避を行いながら少年は銃座に座りなおす
「くっそったれ!食らいやがれ畜生!」
口汚く罵りながら迫りくる敵兵に鉛玉をばらまく。
しかし、いかんせん敵が多すぎた。
右腕、左脚、左わき腹…。と徐々に被弾個所も増え血が口から零れだす。
すべてを投げ出し、少年は仰向けにぶっ倒れる。
「あーやめだやめだ。クソッタレ…。俺もそろそろ年貢の納め時か…。またあいつに会いたかったな。」
脳裏に浮かぶ村で出会った少女。可憐な瞳に美しい容貌…。少年の一目惚れだった。お互いに他愛のない会話から始まり、部隊が離れるまでの1週間彼女と過ごした。
叶うならまた会いたい。また会って話がしたい…。
少年の想いは虚しく彼の灯火は消えかけていた。
「おや?死体かと思えばまだ生きてますね。んーでも男か…。」
不意に少年の耳に聞きなれない男の声がした。いつの間にか迫ってきていた敵の軍勢も物言わぬ骸となっており、少年は困惑する。
「…。何もんだあんた…。」
「?私かい?」
「あぁ、見たところ…。軍医か?」
白衣を着ていたため少年はそう思った。
「ははっまさか軍医とはね。君、面白いよ」
「OKわかった。手を上げろ。捕虜としてなら扱ってやる。」
「ははは。死にぞこないが…。その体で死霊術師に勝てるとでも思っているのかね」
「死霊術師…。まさか…。」
「さてと、ここは戦場。死体が豊富に手に入る。私の身を守る程度なら何でもいいしな。…。と少年。物は相談だが君、生きたいかね?」
「…。何を言って…。るんだ…。そんなの…。当たり前…。じゃないか…。」
先程の元気はどこへやら、少年は息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
「当たり前…。か。OK気が変わった。君を助けてやるよ。まぁ半分くらい運だが君ならきっと大丈夫だろう。」
ズブッグチャ…。
少年の見た最後の光景は喜々とした死霊術師が自らの肉体に手を突っ込み内臓を引きずり出している姿だった…。
ギィィィ
酷く錆び付いた鉄の扉をしなる肉の鞭が引きはがすように扉を破壊する。元々壊れていたとはいえ警戒するに越したことはない。
中には20体近い歩く亡者、ゾンビとそれの警備のためか武装したゾンビが10体ほど。それから10数体の女性型のゾンビがうろついていた。
「うっゾンビが多いね…。」
「見っ見て。あそこ。」
眞樹が指さす方を見やればそこに大型の肉体で構成された哀れな屍人がいた。
その姿を恵は既視感を覚える。当たり前だ。忘れる筈がない。忘れていいわけがない。幸せな記憶…。
しかし、そこにあるのは記憶の中の彼とは似ても似つかぬ醜悪な肉のオブジェクトとなり果てていた。
「恵、気を確かに持って。彼を壊すのはつらいだろうけど…。」
千春の思いやりに恵は力なく笑うと刀を握る手に力を込めた。心なしか肉の鞭も戦闘態勢に移行しているように感じる。
『侵入者…。はっけ…。ん…。自動…。防衛…。システム…。作…。ど…。』
「へっ?私何も触れてないよ!」
「しッ静かにッ」
「あっ」
その声か動き始めたからか防衛システムか犬のアンデットが近づいてきて、咆哮を上げる。
その咆哮にゾンビや武装ゾンビ、女性型ゾンビが群がってくる。そして、肉のオブジェクトにも動きがあった。ガチャンという音とともに肉塊の手かせが外れたようだ…。
「ガァァァァァ」
耳障りな音共にすべてを蹴散らしながらn69が迫ってくる。
「仕方ないッ戦闘だよ。」
恵と千春が前に出る。後方には眞樹、京香の順で少女たちは戦闘態勢をとった。
しばらくお互いを確認するためか時間が停止する。最初に動いたのは京香だった。
「まずは…。女型のゾンビ…。」
轟音と共に大口径の銃口から放たれた銃弾は5体ほど女性型ゾンビを破壊して地面に大穴を開ける。
それに動揺することもなくゾンビたちはにじり寄る。そこには恐怖やおびえの表情もない。さすがは死者といったところだろうか。
「皆、一斉に行くよ!」
千春の一言で全員が攻撃を行う。恵が日本刀を振り、千春が足に仕込まれたナイフでゾンビを切り付ける。続いて排莢を済ませた京香が爆音を再び鳴らし女性型ゾンビを一掃した。
残ったのはゾンビが半分ほどと犬、少し離れたところで銃を構える武装ゾンビ、後方から移動し続けるn69だけだった。
「まだ終わらないよ!」
恵足から伸びた肉鞭がゾンビをさらに減らした。そろそろゾンビも4分の1程になってしまっていた。
犬が襲い掛かってくる。その口を大きく開けて死肉を食らうために恵に襲い掛かる。犬の間に入ったのは眞樹だった。やぶれたひまくをうまく使い犬の攻撃を防ぐ。
「眞樹?」
「へへ千春姉ぇ達に怪我はさせないよ」
「…。ありがとう。」
そんなやり取りをさせる暇を与えぬよう為か武装ゾンビの銃口が恵に向く。
「恵!来るぞ!」
「わかってる!」
恵は背中に生えた翼を使って銃弾を防ぐ。なんとも便利な翼だが、使いすぎたのか最早穴だらけになっていた。
身軽な千春が前へ行き仕込みブーツで武装ゾンビを蹴散らす順序良く蹴散らしていくと最後に戦場に残ったのはn69だけだった。
その大きな体から生えた剛腕が床材を穿つ。そこに転がるゾンビの肉片も一緒にまき散らしていく…。
「次弾…。装填…。発射!」
爆音とともに化け物の下半身が吹き飛ぶ。血と、臓物がまき散らされ恵と千春の顔にこびりつく。
べちゃ…。という不快な感触を覚えた気がするがおそらく気のせいだろう…。
「壊さなきゃ…。壊してあげなきゃ…。私が…。引導を…。渡そう…。」
この荒廃した世界で死ぬこともできぬまま壊されることしか…。壊すことしか…。自分にはできない。恵は自分に与えられた人並み外れた膂力で刀を振りぬく。メキ、ブチャ…。と耳障りな音を立てながらn69その場で崩れ落ちた。
その時だった。再び恵の脳裏に過去の記憶がフラッシュバックする。
花壇で世話をしている自分、そこに兵士姿の男が現れる。
『君この村の人?』
『…。そうだけど?』
『急に話しかけてごめんよ。その花…。とてもきれいだね。名前はなんていうの?』
『風見…。恵…。』
『いや、まぁ君の名前…はは、俺は秋元健二。よかったら少し話さないかい?』
『…。』
花の咲き誇る村の中でとても懐かしくとても美しい…。記憶だった。
「ご…ごめん…。こんなことでしか…。あなたを解放できなくて…」
自らが引き裂いたn69...いや、秋元健二を抱きしめながら…。少女は目から透明な液体をこぼす。その肩にクロウが降りたちその姿は慰めているようだった。
『n69が破壊されました…。この状況を鑑みシステムはこの研究施設を爆破します…30秒後…。施設を…ば…。く……しま…す…。』
「どうしますか…。今更爆発で死ぬとは思えないけど…。」
「やっやばいよっ千春姉ぇ。みんな死んじゃう…。」
「いや、眞樹…。もうみんな死んでるから。」
「京香、眞樹、今はそんなこと言っている暇はないでしょ?」
「あれ?恵…。その…。ボクが言うのもなんだけどもう…いいの?」
「うん…どんなに泣いたって…記憶の中の彼はもう…戻ってこないから…」
その陰鬱な空気を破ったのはクロウだった。
「ほらお前ら脱出路はこっちだ。急げ!!」
ダストシューターの様になった脱出路に4人は駆け込む。最後に恵は背後を振り返り、短い黙祷をささげた。直後爆発音と圧倒的な熱が恵の背中に迫る。
「あっ」
荒廃した世界に爆発音が響き渡った。それと同時に急激に熱せられた空気が新たなキノコ型の雲を形成する。どうやら機密保護のために核爆弾を隠してあったらしい。確かに爆発すれば灼熱により研究資料も消えてなくなり、その後何百年と生ける人間の行動を制限できる。証拠や資料の隠滅にはもってこいの方法だった。
「皆…無事?」
「ん…。何とか…」
「千春姉ぇ恵が…!」
「あらら…」
恵の体はバラバラだった。腕や足が捥げているのはもちろん無事なのは皮膜で守られた頭と胴体。表情はこちらからはうかがい知れない。その破片をクロウが咥え次から次へとまるで働きアリの様に運んでいく。
「おい…。お前ら気が付いたなら手伝ってくれねぇか?これでもお前らを守るためにいろいろ無茶したんだぜ?この阿保。」
「…恵………。」
恵を構成する物質をすべて直した後、恵は目を覚ました。
「あ…。皆…。えっと…。ん…。ごめん。」
恵の静かな声音が確かにそこにある存在として…。自分たちが外に脱出していること
それらを理解した後少女たちはそれぞれ泣き崩れた…。
涙などすでに枯れ果てたというのに…。
はい
あけましておめでとうございます。
2016年は…。まぁいろいろ…。あったのかな…。
2017年もいろいろあると面白そうですね!
では恒例の誰得情報。今回はチームの盾眞樹です
中野眞樹 ポジション オートマトン
メイン ゴシック
サブ ステーシー
スキル 【無茶】【肉の宴】【背徳の喜び】【庇う】
パーツ 頭【基本パーツ】【カンフー】【アドレナリン】
腕【基本パーツ】【よぶんなめ】
胴【基本パーツ】【しんぞう】【やぶれひまく】
脚【基本パーツ】
はい、メイン盾です。
庇うとやぶれひまくで庇って背徳の喜びで再使用といった感じですかね。
次回は今回の戦闘で得たものでちょっとパーツを追加しようかな…。
妄想は膨らむ一方。
少なくとも…。災禍は取らねば(恵が)
最後に…。今年も頑張ります(!w!)