2日目
死霊術師…それは終わってしまった命を身体に吹き込み改造を施す。
戦争の勝利を勝ち取るために。戦争を終わらせるために…。
たとえ争う国が度重なる核兵器のせいで消滅していたとしても…。
たとえ世界が崩壊し、戦争の残骸である生ける屍…。アンデットが闊歩していたとしても…。
そんな世界で少女は歩き出す。世の不条理を、絶望を、全て受け入れられない哀れな少女…。
アンデットになって最初の夜が来た。日が沈み、視界は闇に飲まれてしまっている。
寒い…人間であればそう感じるであろう風が吹きすさぶ。
「ねぇ、あそこに見えるアンデットって敵なの?」
「さぁ?ただ、奴らにはお前のように意識はない。壊すのか?」
「あれらを作ったのは誰?」
「先ほど殺した研究員だ。」
「何のために…」
「彼を守るためさ。彼の研究はアンデットによる破壊だからな他の勢力から身を守るためその辺の人間の肉を適当に継ぎ合わせて作ったのさ。」
「悪趣味な…」
どうして見えているのか…そんなもの自らの体がアンデットだからとしか言いようがない。迫りくるアンデットに刀で応戦し、破壊する。徹底的に、もう二度と復活できないように…。
刀を一振り、吹き飛ぶ足や腕、足に生えていた肉塊の鞭をしならせ吹き飛ぶアンデットを構成していた肉片。
三日三晩目につくアンデットを片っ端から破壊しつくしていった。それは疲れや睡眠の必要ないアンデットの身体だからできたことなのかもしれない。
気が付くと最初の目的地の研究所が見えた。
警備に出ていたアンデットはすべて肉塊に変えた。そのまま肉の鞭でシャッターを破壊する。シャッターの先には地下へと続く階段が現れ、何を気にするわけなく突入していく
「鳥眼なんだが…。」
「平気でしょ。アンデットだし」
確かに暗い。だが、アンデットの目にかかれば昼間のように見える。
昼間のように見えるからこそ、研究所の廊下には武装した人間が何体も転がっている。
「戦争…。もう…。終わったのかな…。」
「あ?あぁ、終わったんじゃねぇの?敵対できるほど人間の数も減ったしな。」
「そうなの?まぁこんな世界じゃしょうがないのかもね。」
警戒しながら歩を進める。階段を下りきり、廊下を突き進む。行く手を塞ぐ隔壁もアンデットの膂力と肉の鞭で破壊し、突き進む。T字路から飛び出したちょうどその時…。
ズドン
脚に何か大きな質量がぶち当たり、膝から先を失う。
突然のことで受け身をとる暇もなかった。
「あっがっ」
無様にもすっころび、クロウは宙に浮きながら笑い声をあげる。
「おいおい、大丈夫かよ」
「うっうん、いったい何が起きたんだ?」
眼を開けばそこに転がる自らの脚。
「あっあ…。私の…。脚…。」
痛みはなかった。生前ならパニックに陥るほどのダメージだというのに…。何一つ感じなかった。
「当たった!よし、侵入者を捕まえろ。」
駆け寄ってくる異形の者。声を発しているあたり同じようなものなのかもしれない。
「おや、こんなところに話の出来るアンデットがいるとは思わなかったな。」
鎖でがんじがらめにされ、さらに腕ともう一本の足も持ってかれた。けれど痛みは感じない。そうしたことに感謝しながら周囲を確認する。
「ねぇ、千春姉ェこいつどうするの?」
千春と呼ばれた少女が声を上げる。その姿形は人間のように見えるが、胴体から見える歯車が人間ではないことを示している。
「こいつは外から来た。だから、何か…。知っているはずなんだ。ここが何なのか。私たちの姿がなぜこんなおぞましい姿になっているのか…。」
「貴女達も…。私と同じ…。アンデットなの?」
「そうだよ。忌々しいことにな!記憶だって朧げだし!ここはどこだよ!」
「落ち着いて。眞樹。」
眞樹と呼ばれた方を見てみればなるほど背中から生えた翼のようなひまくと腕にギョロリとこちらを見つめる眼…。確かにアンデットなのだろう。
「京香だって…今の自分の状況を説明できるかもしれない唯一の存在なんだよ?今こいつから何か聞きださないと私たち…。これからどうすれば…。」
京香と呼ばれたアンデットは大きな対戦車ライフルを担いでスコープの付いた目でこちらをにらんだ。
「さぁ、答えてもらおうか…。あんたのことは見ていたよ。おぞましい速度で表にいたアンデットを始末した。だから君の主な攻撃手段も奪ったし君を壊すようなことはしていない。」
「こちらに友好的に接してくれるなら君の失ったパーツを元に戻せるよ。」
「この状況で…。友好的って…。まぁいいけど。」
「こいつも生まれたばかりだ。何も知らないよ。」
クロウが部屋の中央に降り立つと声高々にそう告げる。
「なっなにこの烏」
「烏がしゃべった…?」
「っくこいつも敵かッ」
「待って京香。」
「くくく、どいつもこいつも烏烏って…。まぁいい。俺はそこの風見恵からクロウと呼ばれている。お目付け役だ。その俺が保証しよう。こいつは何も知らない。むしろ今から知っていくんだ。この荒廃した世界でな。」
「…。本当なの…。それ…。」
「俺が嘘をつく理由はなんだよ?え?嘘をついてどうなるんだよ。ほら、わかったらさっさとそいつを直してやれよ。」
「……。」
鎖が解かれちぎり取られた足と腕を接合される。修理とは簡単でそのまま脚と腕の感覚が戻ってくる。
肉の鞭をうねうね動かしながら自己紹介を開始した。
「まずは私から紹介しよう。先に仲間の非礼を詫びよう。私は堀田千春。17歳だ。この二人からすれば姉に当たるかな」
「ボクは時村京香。16歳」
「私は中野眞樹。16歳だよよろしくね」
「…。風見…恵。17歳」
「お前ら…。ここの状況を探索したのか?」
「いや、実は目覚めた後一度地上に出てみたんだがこの通り我々の攻撃手段なんて仕込みブーツと対戦車ライフルくらいでね。外にたくさんいるアンデットを破壊しつくすのは怖くて出られなかったんだ。」
「…お前らさぁ…ここが何の施設なのか調べたほうがよかったんじゃないか?何か聞こえるし。」
「え?」
耳をすませば確かにかすれた音楽が聞こえる。
「確かに…。聞こえる。」
そのまま廊下に出てみれば少し先に大きめの扉があり、プレートには「第一倉庫」と書かれていた。
「ボクの銃は屋内では向かないよ?」
「確かに…。この施設が一体どういう施設なのかは知らないな外の情報を聞くよりそっちの方がいいのかもしれない。」
「取り敢えず…。先に進もう。」
廊下にでて、日本刀を構えながら肉の鞭を伸ばし、ドアを開ける。
「大丈夫だよ。なにがあっても私が皆を守る!だから、安心して。」
眞樹はそういうと前に出て周囲を警戒し始めた。
その光景を見て少し安心した自分が居た。久々に話が通じる自分と同じ立場の存在にあえてうれしかったのかもしれない。
ドアを開けると視界に広がるのは人間の工場とでも形容すればいいのだろうか…。吊るされた肉塊、つぎはぎで構成されかけた肉片。
朽ちた研究員の手には紙束が握られていた。
「うっげ」
「悪趣味…。」
「私たち…こんなところで生まれたの?」
「この研究員の持っている紙になんて書かれているのかそれが重要だな。」
千春が研究員から紙を奪い取るとさらさらと読み上げていった…。
はい、というわけで
キャラクターの紹介(この物語はつぎはぎ本舗様製作の「永い後日談のネクロニカ」の影響を受けて製作しています)
キャラクターにしてもキャラシまで作っているという
ちょっと何言ってるかわからないと思う方は「へーそうなんだ」くらいまで思ってもらえれば…。
風見恵 ポジション/ジャンク
メイン /バロック
サブ /タナトス
スキル 【足掻く】【怪力】【歪極】【死神】
パーツ 頭 【基本パーツ】
腕 【基本パーツ】【日本刀】
胴 【基本パーツ】【しんぞう】【やぶれひまく】【スチールボーン】
脚 【基本パーツ】【ほねやり】【にくむち】
といった構成です。
守りも攻めもできる構成で組んでみたかった…。だけです。
次回も同じようなボリュームになると思います。
しばらく年末なので余暇が多いのですぐまた投稿できると思います