1日目
研究所…色々な研究があった。
人々を救う研究、人々を破壊する研究。
人々を救うために人々を破壊する。
人々を破壊するために人々を救う。
全てが矛盾しているようですべてが正常に動いている
そんな最中に生まれた異常…
その異常の物語
気が付くと白い部屋にいた。
どこだかは見当もつかない。先ほどまで自分が何をしていた?どんなことをしていた?
分からない。何も…何もかも霞がかった記憶がオレンジ色の明かりのようなものが見えて…消えた。
「ここは…」
気づくと頭が猛烈に痛い。
顔をしかめながら頭を抑えると手に違和感を覚えた。
「冷たい…」
そこには人間が本来有している温かみ、体温が無かった。
「やったぞ!完成だ!」
目の前で歓声に似た声を上げる白衣の男。
何もかもが分からなかった。
ふと、白衣の男に視線を合わせると男は真っ二つに切断されていた。ヌチャリ、と赤い液体と臓物が壁を伝って白い床を濡らす。
「え?」
気がつけば手には日本刀を持っている。いつからだ?気が付かなかった。だが、使い方を知っている。
目の前には鏡…。そこには血にまみれた刀を持ち、目にはスコープのようなもの、背中には白い翼のようなもの…とても人間には見えない…。
「どう…いう…こと?」
周囲をよくよく見渡せばそこには人間を構成する部位があった。一つや二つではない。大量のガラスのような入れ物に緑色の液体が詰められ、そこでぷかぷかと浮いている。
「あぁぁぁぁ!!!」
どうしたのだろうか…何もわからない。ただ、ただ、この不快な空間を一刻も早く破壊したかった。
「落ち着いたか?」
不意に声をかけられた。
声のした方を見れば一羽の烏がこちらを見ていた。
「烏…?」
「正気に戻ったか?ルーキー」
「どうして烏が言葉を…。それにルーキーって…。」
「烏でも言葉くらいわかるさ。もうお前は人間じゃないってことは理解できてるだろう?」
「…。認めたくはないけどね。」
「お前は死体をあれこれいじくられて蘇らされたんだよ。悪趣味な死霊術師共に。」
「さっきの…そこの肉片?」
「いや、死霊術師が自分の生み出したアンデットごときに負けるかよ。」
「そうなの。貴女はなんなの?」
「お前の目付け役ってところか?起動早々施設を破壊しちまったからな」
辺りを見渡せば臓物とガラス片が飛び散り、かすかに異臭を漂わせていた。
近くに落ちていたガラス片を烏めがけて投げつける。
人間の時とは違うおぞましい速度で烏にガラス片が飛んでいく。
そんな破片を烏は羽で防ぐ。かすかに肉を抉る音が聞こえたが深手ではなかったようだ。
「っぶねぇな」
「流石。ねぇ、名前、教えてくれる?」
「名前?あぁ…だいぶ昔につけられたけど…何だったかな。もう忘れちまったよ。こんな俺もアンデットだしな。」
「じゃ呼びづらいからクロウで」
「OK。お前は?」
「…風見…恵」
「わかった。さて、これからどうする?」
「何のために私を作ったの?」
「戦争さ。兵力として最強だろ?疲れも恐怖もないんだから。」
「…それはアンデットの話でしょう?私だけ何か…違う気がする…」
「さぁ?どうだろうね」
ふと、烏から視線を逸らして空を仰ぐと赤い夕日が地平線に消えていこうとしていた。
「ん?あぁ珍しいな夕日が見えるだなんて。核戦争で巻き上げられた土砂で地上じゃほとんど日差しが入らないからな。」
「そうなんだ…」
「近くに別の研究所がある。まずはそこを目指してみたらどうだ?」
「…操作されるみたいでなんか癪だけどまぁほかに当てなんてないしいいよ。」
こうして、屍人としての1日目は過ぎていった。
あとがき…。は重いものではなく、ソフトに…
はい、というわけで…今後…頑張ります
予定としては1週間に1話くらいで…
今回は短めですが次回はもうちょい長いです。