君のおかげ…?
「うーん…」
「おや、ようやく目を覚ましたのかい」
「あれ、魔女さん」
ウェイが目を覚ますとそこには魔女の姿があった。
「僕またスライムに負けちゃった…」
「うん、知ってるよ。見てたから!」
「ええっ、見てたなら助けてよ」
すると少し考えた素振りを見せる。
「でも、見てた方が面白いから!」
そう言ってアハっと笑って見せた。
「ひどい…」
そんなやりとりをしていると急に後ろから声がした。
「よう、ウェイ。またスライムに負けてたな」
声がする方を見るとそこにはシバがいた。
シバはウェイと同じ時期に勇者になった1人だ。体が大きくとにかく力が強い。それにいつも高圧的な態度で人を見下している。
「やぁ、こんなところで何してるの?」
「なんでも森に珍しいスライムが出るらしいんだよ。そいつの素材は高く売れるらしいからな。取りに来たって訳さ」
「シバも?偶然だね。僕たちもなんだ」
「そうだな。まっ、スライムにすら勝てないような奴には無理だからさっさと諦めな!」
「やっぱりそうだよね…」
ガックリとうなだれるウェイ。
シバはいつもウェイを馬鹿にしていてる。
お前は弱いだの、さっさと勇者をやめろたの言って来るのだ。
基本的にシバはウェイが嫌いなのだ。
「そんなことないさ。確かにこの彼じゃスライムにすら勝てないけど、役に立てることもあるさ」
魔女がウェイを庇う。
「魔女さん…」
(魔女さんが優しいとちょっと気持ち悪いな……)
「はっ、お前らじゃ無理だよ」
シバは鼻で笑う。
「さっきの見てたぜ、お前こいつがスライムにやられるの木の陰で見てただろ。しかも、こいつがやられた後になんか魔法使ったけど不発だったしな」
(いないと思ったら木の陰にいたんだ…)
「なら、君なら勝てるって言うのかい?」
魔女が質問するとそんなの当たり前だろと威張り散らしてくる。
「でもゴールドスライムはEランクのモンスターだ。普通のスライムより強いよ」
「所詮はスライムだろ。俺がスライムに負けるなんてあり得ないんだよ」
「どうだろうね」
魔女が不適に笑うとシバが睨み付ける。
「俺がスライムなんかに負けるってのか!」
「そんなことは言ってないさ。ただ君よりも先に僕たちが倒してしまうから君には倒せないよ。」
魔女も負けずに睨み返し、魔女とシバの間で火花が散る。
先に目を逸らしたのはシバだった。
「まぁ、せいぜいスライムに勝てない同士仲良くしてろ!」
そう言うとシバは踵を返し張り詰めた空気を残して森の奥に姿を消した。
「ねぇ、魔女さん…Eランクってなに……?」
ウェイがばつが悪そうに聞いてきた。
「君は勇者なのにそんなのも知らないの」
魔女が少し呆れた感じで返してきた。
「うん、ごめん…」
いつもだったら魔女はウェイの事をいじってくるような内容だか今はそんな気分じゃないのかもしれない。
「しょうがないなー、教えてあげるよ。モンスターにはG~SSSまでランク分けされていてGが一番弱くてF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの順で強くなっていくんだよ」
「へぇー、そんなの有ったんだ」
「君本当に勇者なの?これくらい勇者なら知ってて当然だよ!」
「ごめんなさい…」
「だいたいさっきの奴にも言われっぱなしで勇者ならしっかりしなよ」
「はい……」
急に魔女に叱られてさらに落ち込む。だが、顔をあげると魔女が必死に笑いを堪えていた。
またいじられていただけらしい。
「もう、ひどいよ」
そう言いつつもどこか安心した。
「アハハ、君は本当に面白いね」
魔女がそう言って笑っているのを見ていたら急にウェイも可笑しくなってきて2人で笑い合っていた。
「そう言えばなんでシバはこの森に珍しいスライムが居るってしてったんだろう?そんなに噂になってるのかな?」
「ああ、彼は昨日宿で話してたとき盗み聞きしてたから」
「ええっ、そうだったの」
「うん。さっ、いつまでも話してないでそろそろ行こうか」
「うん、でも今日中に見つけられるかな…」
「大丈夫さ!さっ、こっちだよ」
そう言われると急に手を引っ張られて、どんどん奥に進んでいく。
まるでいる場所が分かっているみたいに。
「魔女さんもしかして場所知ってたの?」
「ううん、知らないよ。でも分かるんだ。君のおかげでね!」
「えっ、僕の?」
「そうだよ」
「でも僕なにもしてないよ…」
「それでも君のおかげさ。さっきも言っただろ、君でも役に立てるってさ!」
魔女はそう言うとウェイの方を見てパチンッとウインクした。