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鏡下の秋桜  作者: 晴嵐
序章:旅の始まり
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第3話

 俺はこの少女をよく知っていた。


俺「枡野・・・恵梨香・・・・。」

エリカ「?」


 いや、そんなはずはない。こんな偶然あってたまるか。


俺「・・・・・・」


 一応聞いておこう。


俺「なあ、タイガー。この方は・・・」

タイガー「だから、この人がエリカだ。」

俺「フルネームは?」

タイガー「エリカ・シュヴァルツ・・・だが?」


 やはり、そうか。だが、まだだ。


俺「・・・・・・」

エリカ「え?」


 俺の目の前にいるエリカは、少し驚いたような表情をしていた。だが、その驚いた表情もても似ている。


俺「・・・・・・エリカ。」

エリカ「・・・・・・?」

俺「正直に答えてほしい。桝野ますの 恵梨香えりかという名前に心当たりは?」

エリカ「・・・・・・」


 彼女は答えた。


エリカ「ますの・・・?」

俺「そうだ。君はエリカ・シュヴァルツという名前なのは知っている。桝野という姓に心当たりは?」

エリカ「・・・・・・」


 彼女は俺のことを見つめて言った。


エリカ「あなた、本当にカイ?」

俺「うっ・・・」

タイガー「わお。」


 ・・・勘づくの早えよ。


俺「ど、どうして?」

エリカ「いや・・・ちょっとそれは・・・」


 エリカは頭を掻いた。


エリカ「お、一昨日までの会話からして、明らかにおかしいからよ。」

俺「一昨日?」


 タイガーに聞いた。


俺「一昨日、俺がエリカと何か話したのか?」

タイガー「へ?俺は知らねーぞ?」


 タイガーは手を振って否定した。


俺「マナ、ミナは?」

マナ「一昨日は・・・ちょっとわからないわね。」

ミナ「私も知らないよ。」


 お、いつの間にかミナが復活・・・というのはどうでもいいか。


俺「マリーは・・・?」

マリー「・・・」


 マリーは何も答えない。


俺「サンディ先輩は?」

エリカ「え?」


 あれ? いつの間にかサンディ先輩の姿がないぞ?


サンディ「コソコソコソ・・・・」


 すると、いつの間にか教卓の裏から抜け出し、机の下のほうに隠れいているサンディ先輩の姿がそこにあった。


エリカ「サンディ先輩!? どうしてここにいるんですか!?」

サンディ「フィ!?」 


 サンディ先輩はまたひっくり返る。


サンディ「ほっほっほ。ばれたか。」

俺「・・・ん?どういうことだ?」


 すると、タイガーが耳打ちしてきた。


タイガー「サンディ先輩はここのクラスの人じゃないんだよ。」

俺「え?じゃあサンディ先輩は・・・?」

タイガー「エリート組のお人だ。クラス4以上の魔法使いが受けることができる、エリートコースさ。」

俺「へ?」


 俺は目を見開いてサンディ先輩を見た。


俺「じゃあ、サンディ先輩は・・・」

タイガー「クラス4のマッド・スミスだ。」

俺「なんと・・・」


 道理で異様なわけだ。見た目が丸メガネの少女とはいえ、喋り方と性格が一風変わっている。


エリカ「コホン、サンディ先輩。どういうことか説明してもらえますか?」

サンディ「何、簡単なことじゃ。そこのカイという少年が道端に倒れてたから、わしが救助してここに連れてきただけじゃ。」

エリカ「え、カイが?」


 カイが倒れたということを聞き、エリカは非常に驚いた様子だった。


タイガー「まあ待てよ。エリカ、これには深い事情があるんだ。俺から説明するよ。」


 その後、ことの詳細がタイガーの口から説明された。


エリカ「カイが・・・記憶喪失・・・?」

タイガー「そう、だが記憶喪失っていうより、別人になっちまったって言ったほうがいいな。」

エリカ「・・・・・・」


 するとエリカは、俺に話しかけた。


エリカ「ねえ、今のアナタは、ヤスミケイゴ。でいいわけ?」

俺「そういうことだ。」

エリカ「じゃあ。」


 エリカはみんなのほうを向いて言った。


エリカ「本物のカイはどこにいるの?」

全員「え?」


 ここにいる、エリカ以外の全員が目を見開いた。


エリカ「だって、昨日まで懲罰部屋にいたカイが、朝になったらカイが別人になってたってことは、本物のカイはどこに行ったのかって話よ。」

タイガー「だから、記憶喪失だって言ってるだろ?どこに行った云々じゃなくて、頭の問題だよ。お前も小説とかで知ってるだろ? ある日、人が別人のように変わってしまったって。」

エリカ「カイが夜中のうちにカイそっくりの別人とすり替わったって可能性もあるじゃない。」

タイガー「そりゃ無理だろ。あの懲罰部屋からは出られないぜ。」

エリカ「じゃあ捕まる前にこの人をとっ捕まえて、自分は変装して逃げたって可能性は?」

マナ「カイはクラス1よ。変装魔法なんて使えるわけないわ。懲罰部屋に閉じ込める際も入念にチェックしたし。」

エリカ「だっておかしいじゃない! この人、どう見てもカイとは別人よ! 昨日まで何ともなかったカイが、今日になって別人って、そんな都合のいい話あり得ない!」


 当然だ。朝起きたら覗き魔の汚名だなんて冗談じゃない。


エリカ「だいいち、いつどうやって入れ替わりが・・・」

マリー「私の雷魔法が原因よ。」


 ここにきてマリーが大きく主張した。


エリカ「マリー、それってどういう?」

マリー「私、朝来てから懲罰部屋に来たのよ。そしたら、のびのびと寝てやがったから雷魔法をぶちかましたってわけ。」

エリカ「アナタ、またカイのこといじめたの!?」

マリー「当然よ。覗き魔に対するふさわしい制裁だわ。」


 ・・・・・・いやいやちょっと待て。


俺「おい、何言ってる。俺は朝起きた時点でカイの姿になっていたんだ。雷魔法はその後のはずだ。」

マリー「それはアンタの思い違いよ。それが原因としか考えられないわ。」

俺「思い違いだと・・・?」

マリー「私、雷魔法は2回放ったの。」


 に、2回だって?


マリー「ほら、やっぱり吹っ飛んでるじゃない。記憶。」

タイガー「じゃ、じゃあ。カイが記憶を失ったのは・・・」

マリー「私のせいってことになるわね。」


 すると、エリカがマリーを睨み付けた。


エリカ「アナタ、どうしてそんなこと黙っていたのかしら?」

マリー「だってイマイチ確証が持てなかったんだもん。仕方ないじゃない。」

エリカ「人の記憶消しておいて、まだそんなことを・・・」


 だが、エリカは突然ハッとした。


エリカ「・・・っていうかそれどころじゃなかった!!! どうしよう!?」


 俺のことを睨んでいたエリカが、突然焦りの表情を見せた。俺は一応聞いてみることにした。


俺「一体どうしたんだ?」

タイガー「おい、エリカ。まさか!」


 タイガーまで震えだした。


俺「おいおい、一体何が・・・」

エリカ「抜き打ちテストよ! 魔力の抜き打ちテスト!」




 ・・・・・・・・・・・・・へ?




マナ「・・・・・・はぁ。」

サンディ「わお。」

エリカ「よりによってこんな時に! あの・・・馬鹿ティーチャー!!!」


 いやいやいや・・・


俺「魔力の・・・テスト?」

全員「・・・・・・」


 おいおいおいおい・・・


エリカ「あのさ、聞くけど。」

俺「はい、何でしょう。」

エリカ「魔法は?」

俺「使えません。」

サンディ「あ~あ。」


 すると、タイガーが言った。


タイガー「いや、まだわかんねえぞ。中身が違っても体がカイのままなら・・・」

俺「ああ、そうか!」

エリカ「・・・・・・」


 俺一人が浮かれていたが、周りの視線は冷たかった。


マナ「そうね、確かに使えるかもしれないけど。」

ミナ「使えたところでカイの魔力なんてタカが知れてます。」

タイガー「だよな。」

俺「」


 そ、そんなにひどいのか・・・? カイの魔力って・・・


俺「じゃあ、その抜き打ちテストとやらに落ちると、どうなるんだ?」

エリカ「まあ、落ちる以前に、しっかり事情を説明してから受けることを考えると・・・」

タイガー「良くて試験取り止めだな。」

俺「悪かったら?」

エリカ・タイガー「落第。」


 ・・・・・・・・。


俺「なあ、そんなにヤバイのか? 抜き打ちテストって。」

タイガー「違う、そこが問題じゃない。」


 エリカは言った。


エリカ「重要なのは、今のアナタが魔法を使えるかどうかよ。魔法を教わる学園にきて、魔法が使えないっていったら、話にならないじゃない。」

俺「ああ、なるほど。」

ミナ「早速やろうよ!」


 そうとなれば話が速い。実践あるのみ。


俺「よし! それで、魔法ってどうするんだ?」


 ・・・とは口で言ったものの、できる自信なんてどこにもなかった。もし魔法が使えなかったら学園は落第か。そうなったら俺はどうなる?


俺「・・・・・・」


 いや、それだけじゃない。今までここで学園生活を送っていたカイはどうなる? カイの家族は? 友達は? カイ自身は?


エリカ「・・・悪いけど、時間がないわ。まずは簡単な魔法を試してみましょう。」


 エリカがそう言うと、自分の右手を差し出した。


エリカ「今からやるのは、マジックボールっていう技よ。」

俺「技?」

エリカ「まずは適当に力を込めて、魔力の玉を生成するの。」


 すると、エリカの右手から一瞬で赤い球体が現れた。


俺「これは・・・?」

エリカ「これがマジックボール。自分の魔力が詰まった球よ。まず、これをやってみるの。」

俺「・・・と、言われても適当に力を込めるっていうのは・・・」

タイガー「そうだな。言うなれば、右腕の血液を絞り出すって感覚だ。」

エリカ「マイトラ、表現がグロい!」


 おいおい、魔法とはずいぶん生々しいやり方だな。


俺「はははっ、それさえ聞ければ大丈夫さ。やってみる。」


 だが、この技が本当に自分の魔力を球にするだけの単純な技だとしたら、これが出来なければ一貫の終わりだ。


俺「・・・・・・」


 やるぞ、俺は。


俺「スゥーーー。」


 まず、俺は右腕を差し出す。その次に右腕の血液を絞り出すように・・・


(キューーーーーー)


俺「お、おお・・・おおおおお!!!」


 年甲斐もなく興奮してしまった。白い球だ。俺の右腕から白い球が浮かび上がった。


エリカ「ふぅー。どうやら魔法は使えるようね。」

タイガー「ああ。」


 だが、なぜかみんなの視線が冷たい。


俺「な、なあ。みんなどうした?」

エリカ「いいえ、ただマジックボールは出せた。でも・・・」

タイガー「それだけじゃな。」


 いや・・・俺、頑張ったぞ?俺は初めて魔法というものを使ったんだぞ?


エリカ「まあ、何とかなるでしょう!」

タイガー「だな!」

マナ「後は掛けるしかないわね。」

ミナ「ケイゴ! がんばれ!」

俺「お、おう!」


 ・・・みんな目が笑っていない。仕方ないか。


(初めは、魔法を使うことにあまり戸惑いはなかった俺だった。しかし、ここで俺はこの世界における魔法の恐ろしさを思い知らされることになる。)


~ミニ登場人物紹介~

・八角慶吾(24歳)

 東京都に在住、ホビー会社ヘンゼルカンパニーに努める普通の会社員。・・・と自称しているが仕事内容は過激。ある日目覚めると魔法が存在する別世界に飛ばされた。小・中学校は優等生だったらしい。


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