9ー間違いー
9ー間違いー
「困ってますね?」
!?
背後から声がした。
振り向こうとしたが振り向けない。
体を動かそうとしても動かない。
これが金縛りというやつか?
走って汗だくなのに今度は冷や汗が背中を滑る。
声を出そうとしてもでない。
「私は死神というものです」
あぁ、そうか。
俺は死ぬんだ。
親を殺してバチが当たったんだ。
仕方ないよな。
俺の代わりにこいつが連れて行ってくれるんだ。
「殺してしまった母親に会いたくありませんか?」
え?
何言ってんだこいつ。
「私があなたの願いを叶えましょう」
すると口元が軽くなった。
「...お前は何者なんだ?」
声が出るようになった。
だが、相変わらず口以外はどこも動かなかったが。
「私は死神です」
仕方なく話を合わせてみる。
「願いを叶えてくれるって言ったよな」
「えぇ、叶えてあげましょう」
でもだいたいこういう話には対価がある。
「ただし、」
ほらきた。
「人間の魂を私に差し出しなさい」
人間の魂?
「人間を一年間、一日一人殺しなさい」
なに言ってんだこいつ。
「信じると思うか?」
「...信じられないのも無理はない、
だがあなたにはもう逃げ場がない」
それは事実だ。
「あなたは母親に謝りたいんですね?」
「ああ、そうだよ。だったらなんだ?叶えて
くれるのか?この願い」
「えぇ、叶えましょう。対価さえくれれば」
どうせもう後に引けないんだ。
何人でも殺してやるさ。
「先に願いを聞いておきましょうかね」
「母親を蘇え...」
考えた。
これでいいのか。
「俺の犯行を無しにしてくれ...」
「と、言いますと?」
「俺が最初に人を殺す前の時間に戻してくれ!」
死神笑った気がした。
「なるほどタイムスリップですか。それなら何人殺しても過去に戻れば罪から逃げられますからね」
「いいのか?だめなのか?どっちなんだ」
「いいでしょう。対価をくれたらあなたの
記憶をその時間に戻して差し上げましょう」
「わかったなら消えろ!」
「ははっ、あなたの母親はいい人ですね〜」
「何も知らねえくせに」
口だけしか動かないのが辛い。
こいつを一度ぶん殴りてえ。
「あなたが殺した死体はこちらで
回収するようにします。死体が消えれば証拠が出にくいですしね」
「...そうしてくれると助かるよ」
「でも、あなたの母親の死体は邪魔なんでこちらが片ずけますよ」
「邪魔なんかじゃねー!!」
すると身体が軽くなった。
振り向いたが、誰もいなかった。
家に帰えっても母さんはもうどこにもいなかった。