2ー日々ー
2ー日々ー
9月24日
どこまでも青い空。
それを作り出す青い海。
せっかくの修学旅行だ。
思う存分楽しまないと。
「あちー、あちーよー」
義一がだらけた声でぼやいてる。
「溶けちゃう。溶けちゃうよ」
こっちはこっちで柊がバカ言ってる。
「だいたいお前らなんで暑いの嫌なら北海道
にしとけよ」
「まさかここまで暑いとは思わねーよ」
「私達3人で一つだもんね」
俺もだれてきた。確かに暑い。
もうすぐ10月なのになんだこの暑さは。
アスファルトからもうもうと煙のような陽炎
が立ち込めている。
35℃越えか。
地球はもうダメかと思わせられるほどの暑さ
だ。
「今日はパーっと泳ぎたいね!しょーちゃん
ヨッシー!」
「あれ?お前知らないの?この後...」
「だな〜、泳がないとやってられないぜ」
遮られた。どうやらこいつらはなにも
知らないらしい。
「なあ、お前ら知らないの?」
「何が?」
二人合わせて答えた。
「ホテルについたその後...」
空には雲ひとつない。
海の匂いが風に乗ってくる。
そんなことを思わすほどの場所。
いい思い出になるだろうな。
そう思った。
「はあー、暑かったー」
義一はそう言いベッドにそのままダイブした。
「やると思った、おい起きろよ他の奴らも
来るんだから」
「やってらんねーよ〜、なんで海が目の前な
のに山登りなんだよ」
それは同感だ。どうかしてるよ。
殺す気かよこの学校。
するとそこへ太っちょのデブがやってきた。
「おい、そこどけよ邪魔」
そう言って俺を突き飛ばした。
なんだよ。こいつ。殺されてえの か?
こいつは 柴田 康夫...だったと思う。
俺が文句言ってやろうとしたその時、
「おい、お前翔矢に謝れよ」
「あ?」
義一が男前に見えた。
多分今だけ...
「謝れって言ってんだよ、ゴリラ」
だけど、相手が悪い。
相手は義一よりでかい。それプラスデブだ。
「あ?やんのか?おい」
止めなければまずい。
俺が止めようとしたその時。
ドアから誰かが覗いた。
「もうすぐ玄関前に集合な。忘れ物
がないように以上」
先生だ。
それだけ言って去っていった。
行くなら今だな。
「義一早く行こ」
「そうだな」
荷物を持ち部屋を後にした。
あんなのと関わるとろくなことがない。
「あっちー」
「あっちー」
義一と柊はそればかりしか言っていない。
まだ登り始めたばかりだぞ。
「まったく、さっきの男前はどこで失くした
義一」
「邪魔だったんでー、捨てましたー」
はぁ...、ため息しか出ない。
「ねぇ、男前って?」
柊が興味深々に尋ねた。
「すげーんだぜ!翔矢がいじめられてたから
俺がそいつを一撃でぶちのめしたんだぜ」
「別にいじめられてねーよ」
「しょーちゃん、いじめられてたの?」
はぁ、だめだこりゃ。
「許せんだろう?」
「許せないですねー」
こいつら結局元気じゃん。
「で、そのいじめっ子はだれなの?」
「柴田とかいうやつだったかな、
ま、俺がぶ ちのめしたから安心だ」
「柴田ってあのでかい人かー、あの人
ほとんど一人だよ」
「まじか、ぼっちか」
「かわいそうです」
こいつらなんなの?
話せば元気になるの?
呆れながらも頂上を見た。
....全然見えない。
「おいおい、どうした翔矢」
「だまりこくっちゃってー」
ここは少し気が利いたことでも言ってやるか。
「息ぴったしだなお前ら、もう付き
合えよ」
こんなことを言っても乱れず
「俺は、イチャイチャしすぎて、神に嫉妬
され離れ離れにされたのだ」
またなんか始まるのか。
「神よなぜ私達を離れ離れに?」
「仕方ない一年だけ合わせてやろう」
「お前一人二役かよ!」
「さすが我らのツッコミ!」
「しょーちゃん抜きじゃ始まらないね!」
まだ変なコントは続いてるようだが
俺は聞いて見ぬふりをした。
と言ってもあと少しで頂上だ。
「お前ら、もうすぐだぞ」
「うお?!まじですか?!」
「俺が一番乗りだー!!」
そう言って義一は頂上めがけて走り出した。
「ちょ、ヨッシー置いてかないでよー」
そう言って柊も走り出した。
あと少しって言ってもまだ10分はありそう
だぞ。
呼び止める気も失せ、俺はあと10分間ゆっくりと登った。