11ーあの頃からー
11ーあの頃からー
「私はこの青春ラブストーリーが見たいなー」
今、俺たちは映画の受付をしている。
後ろの人たちを待たせてるのにまだ決まってないん
いや、決まっていた。
だが、柊が直前になって宣伝映像に影響され他のがいいと言い出したのだ。
「ねぇ〜、いいじゃん〜」
俺は青春ラブストーリーなんて見るなんて
ごめんだ。
「諦めろ、もう遅い」
「えー?じゃあいいのかなー?あの事言おうかなー?」
...はぁ、やっぱこうなるのか。
「あの夕日に向かって走るぞ!」
「おー!」
男と女の大群が夕日に向かって走っている。
結局俺たちは青春ラブストーリーを見る羽目になったのだ。
俺は柊に弱みを握られている。
俺と柊は幼稚園からの仲で、俺がおもらしをしたことをまだ覚えている。
そんな過去の話で揺すられる俺も俺なのだが。
バレるのが恥ずかしいわけじゃなく義一に
バラされると本当に面倒くさいことになりそうなので俺は恐れている。
それにしてもこの映画が恐ろしくつまらない。
でもまあ、まだ映画は中盤らへんだし。
もしかしたら最後まで見ると面白くなるかも。
「いやー!面白かったね、しょーちゃん」
最高につまらなかったです。
なんかほとんど夕日に向かって走ってた
シーンばっかだった気がするぞ。
ま、柊が満足そうだからいいか。
「ねぇ、しょーちゃん」
「ん?どうした?」
「あの夕日に向かって走るぞー!」
柊がビシッと指した先はでかいビルがある
だけだった。
「...どこに夕日が?」
「いまから昇ってくるんだよ」
「夕日は落ちていくんだぞー」
「気にしちゃまけってやつ」
しかもまだ3時半だ。
まだ夕日は見れないだろう。
相変わらずだな。
「柊、俺ちょっとトイレ行ってくる」
「行っトイレ〜」
低レベルな親父ギャグはスルーして俺は近くのデパートの外にあるトイレに入る。
トイレの入り口の付近に『清掃中』の看板があった。
これはつかえるかもな。
もちろんトイレはする気がない。
確かに俺たちは誰かに見張られていた。
そんな気がする。
もしかすると朝にきた警察かもしれない。
考えすぎかもしれないが、万全の状態と状況で殺さないといけない。
見張りがいない場所トイレが丁度良かった。
俺は個室に入る。
そしてポケットから護身用のスタンガンを
取り出す。
最近はなんでも手に入る時代でよかったよ。
手順は簡単だ。
俺の隣の個室に入ってきたら一旦外に出て
他に人がいないかを確認する。
いなければトイレの入り口付近にあった『清掃中』の看板を入り口においておけば誰も
近寄らないだろう。
そこでゆっくりと暗殺ができるってわけだ。
するとそこへ...
「おトイレ漏れちゃうー!」
そんな事を言いながら隣の個室に入る人がいた。
相手はガキか?
声はおっさんだったが。
いい歳したおっさんがそんな事言うはずないよな。
うん。
そんな事を思いながら俺は早速取り掛かった。




