10ー二人ー
10ー二人ー
9ー入れ違いー
ピロン♪
メール?
俺はベッドから起き上がりケータイを見た。
柊 香奈。
そう表示されていた。
その文は、
『映画行くぞー』
それだけだった。
『今起きたばっかだから無理』
返信っと。
『えー起きたばっかってことはまだ家?』
何を当たり前なことを。
『当たり前だ』
数秒たってから、
ピンポーン。
チャイムが家に響いた。
...嫌な予感がする。
覗き穴で覗く。
柊がいた。
言質取られたのか...
「えー、淵本 翔矢は今家におりません」
ドア越しで言ってやった。
「えー、それなら私は帰ってくるまでここにいます」
だめだこりゃ。
「はいはい、いますよ」
ドアを開けたら自分の顔に太陽の光があたり眩しかった。
「ヤッホー、来たよ」
「いや、早すぎんだろ」
「暇だったから」
「女子と遊んどけ」
「昨日遊んだ」
はぁー、とため息をつく。
「寝癖すごいよしょーちゃん」
「直してくるから待ってろ」
「ほーい」
バタン。
はぁー、とりあえず顔洗って寝癖直すか。
水が冷たい。
顔に冷たい水が染みる。
少し肌寒くなってきたな。
そう思いながら顔を洗う。
あれ?
タオルがないぞ?
取り行かないと...
「はい、しょーちゃんタオル」
「ん?ああ、ありがと柊」
俺は気にせず顔を拭く。
「そこは、ありがとじゃねーよ!なんで柊が
家の中にいるんだよ!!が正解かな?」
ツッコミの模範解答は無視して、朝ごはんを食べるためキッチンへ向かった。
「へー、しょーちゃん全部一人で作ってるんだー」
「まあな」
作ると言っても食パンを焼くだけだが。
「しょーちゃんのお母さんは海外出張だっけ?」
「ああ」
一応世間にはそう通してある。
さっき警察に言ったのでどうなるかはわからんが。
生活費はというと、さすがに死神が出してくれるわけもなくゆういつ行方不明と知っている親戚が手助けをしてくれている。
「いつもパン食べてるの?」
「これしか作れない」
とは言っても夜はちゃんと作るがな。
「ふーん。じゃ、なんか作ってあげるよ」
「やめろ、失敗する気しかしない」
「まあまあ、期待して待っててよ」
「期待しないで待っててあげます。
テンポがいい会話が終わると俺は席について期待をしないで待った。
5分ほど経った。
「はい!お待ちどお様ー」
テーブルに置かれたのはご飯にお茶とお茶漬けの素がかけられている。
「まさかのお茶漬け」
このお茶漬けは冷凍してあった米にお茶漬けの素を振りかけて熱いお茶をかける、それだけの作業。
「ま、いいや。いただきます」
「お代わりいる?」
「いや、まだ一口も食べてない」
お茶漬けを口に運ぶ。
「どう?おいしい?」
「ただのお茶漬け」
「はいかいいえの二択です」
「おいしいんじゃない?」
それだけで柊は満足そうな笑顔をしていた。
全く変な奴だ。
「で?今日はどうするんだ?」
「映画だけど?」
「義一は?」
「誘ったけど一人旅してくるって」
「何してんだあいつ」
「ロマンを求めてるんじゃない?」
ロマンねぇ〜。
義一がいないと心なしか柊が少し静かな気がする。
少しだけ。
「柊よ」
「ん?」
「義一がいないと静かじゃの」
「え?なに?もっとうるさい方がいいの?」
「いや、遠慮しときます」
そうして柊はいつにも増してやかましくなった。




