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研究編・中期

はい、こちらは研究編中期編です。さすがのBLOGも、文字数制限がありました。ということで、初期編・中期編・後期編を分離します。それでは、始まり始まりぃ~。

<研究編・中期>


「ねぇ、カナブン。特許よ、とっきょ」

いきなりイマがタカに話しかけた。

イマ「ソラはね、今まで誰もやれなかった事をやってくれるものだと思う。だから、今のうちに特許申請しようよ」

タカ「特許申請ですか?かなり面倒な書類を作らなきゃならないですし、申請すればその内容が公開されますからね。先にモノにされたら、私たちの研究はパァですよ」

イマ「だからぁ、何だっけ、ソラの技術は全く新しいものなんでしょ?え~っと、そう基本特許!それを取るの!」

タカ「発想の元が太陽光発電ですから・・・」

イマ「関係なぁ~い!カナブンが書類作るの面倒だったら、イマが勉強して書類揃えて、申請してあげる。決定!」

タカ「例によって決定ですか。・・・判りました。イマ、書類を作成することは並大抵のことではありませんよ。未だ私の頭の中にしか無いこともありますから、この研究室に散らばってるメモの類を全部整理して、理解して、その上で私に質問して、作成してみて下さい。出来れば、そうですね、今年中に。お願いしていいですか?」

イマ「りょ~かぁい!イマ、頑張ります!」

タカは、中学生のイマに果たして何処まで出来るものやら、と思った。

イマは、本気だった。ソラを大事にしなくちゃ。狙うは大金持ち! 中学生らしい発想であった。


イマは本当に勉強した。母親に相談して、暫くは毎週末研究所に通い詰めることにした。メモを整理して、自分なりの理解で順番を整え、タカのパソコンにあるメモと摺り合わせて、ダウンロードしてきた特許申請用紙に必要事項を書き込んだ。それから先は、時にタカと相談しながら書いていった。図面は、CADソフトを独学で覚えた。記号端子も、Webで検索した他の特許書類等から覚えた。ついでに書き方も。データは慎重にセーブした。タカのパソコンの他に、研究所のメインサーバにも保存した。


所長は、サーバの記録から、タカの研究内容と、特許申請準備をしていることを知った。しかし、タカがここまでまめにやるわけもない。きっと彼女がやっているんだな。しかし中学生にしては凄いもんだ、と思った。

一瞬、所員として迎えることが頭をよぎったが、馬鹿言っちゃいけない、彼女は未だ中学生だ、とその考えを振り払った。

タカは、いいパートナーが出来たな。年は離れすぎてるが。

しかし、本当に特許を取ってくれれば、また我が研究所に箔が付く。

所長は満足げだった。


その年の暮れ。

イマ「出来たぁ!出来たよ、カナブン。基本特許申請書類。印鑑持ってる?それを此処に押して。それから表紙の処と、此処に署名して。はい、申請出来ます。・・・・でもね、イマが持って行っても受け付けてくれるかな?」

タカ「よく此処まで頑張りましたね。イマさんは偉いです。一応、内容をもう一度点検して、私が来週申請してきます。本当にどうもありがとう、イマ」

そういってタカはイマの頭をくしゃくしゃなでた。

イマは、タカが時々そうやってなでてくれるのはうれしかったが、後で髪型を直すがちょっと面倒なんだけど、と思っていた。


タカは、イマとの約束通り、週明けに特許庁へ申請に行った。 守っていなかったのは、中身をざっと見ただけで表紙を見なかった事だ。

受付自体はそれほど難しいものではない。問題は、特許として認められるかどうかの審査の方である。


審査結果は、異例の速さで2月に届いた。特許取得である。通常、基本特許の審査はもっと時間がかかるものである。明らかに他とは違う事が明確であったのか、それとも何か他の要因か。タカは、後者であることをほぼ確信していた。


後日。

イマ「ねぇ、今度は応用特許とか、実用新案とかも取ろうよ。電源の要らないTVなんて素敵じゃない?取っちゃおう」

タカ「これこれ、先走ってはいけませんよ。もう基本特許は取れたんですから、応用特許は研究がもっと進んでからにしましょう」

イマ「はぁい。でもね、イマの頭の中には、タカの研究がぜぇ~んぶ入ってますからね。未だ実験とかのお手伝いは出来ないかもしれないけど、事務とか、研究が進んだら応用特許申請とか、全部私に任せて」

タカ「確かに、イマさんの理解力は凄いです。基本特許の申請書類も、間違いはありませんでしたからね。でも、学校の勉強もちゃんとやって下さいね」

イマは、タカが否定しなかった事に気づいた。やらせて貰える。嬉しかった。

ふと、タカを見ると、既に何かぼーっと考え始めていた。

イマは思った。タカは私が助ける。私が支える。イマは、決めたことは守る。それが恋であったのかどうか、未だ自分でも判っていなかった。


イマが中学2年になるとき。

母親から、ノートPCがプレゼントされた。

母親「これは、必要最低限のものしか入っていませんわ。必要なものは、カナブンさんの処で入れさせて貰いなさい。それから、たぶん研究資料が入るようになるのですよね?電車で置き忘れたり、盗まれたりしたら、大変な事になりますから、大事に使うんですのよ。学校に行くときには、持って行ってたら却って大変ですから、その他の時には、肌身離さず持ち歩くようにするのですよ。それから、来月から家の電話はフレッツ光にしますのよ。この意味はお判りになりまして?」

イマ「はい、判りました。お母さん、どうもありがとう!」

イマは大喜びした。早速、ノートPCを立ち上げてみる。チェックすると、タカの研究室の古い方のパソコンよりよっぽど能力が上である。それに光回線である。VPNクライアントは、既にチェック済みである。それをこのノートPCに入れれば、家でもカナブンのお手伝いが出来る。カナブンを助けられる。嬉しかった。

イマは、VPNでも傍受出来る事は、未だ知らなかった。

タカにPC持ち込み申請と、VPNクライアントをはじめとした各種ソフトの導入をお願いした。

レベル2セキュリティでは、通常ノートPCや記憶媒体の持ち込み・持ち出しは出来ない。

レベル4セキュリティのタカがエスコートすることを条件に、特別に認められた。

タカは、最初にVPNクライアント、そして各種ソフトとイマが研究室に行くたびに手を入れてくれた。

イマは、研究室と自分との間でメールが送受信出来るのが嬉しかった。

ついでに、ネットワークディスクも使ってよければ簡単なのに。だが、それはタカが許さなかった。

代わりに8GBのUSBメモリをプレゼントされた。


イマは、中学2年の時には既に英語と数学と科学については、ほぼ中学校の教育課程分の学習を終えていた。

それは、執念のようなものだった。やりたかったのだ。通称「国際特許」という名の、各国特許取得。

余った予習・復習の時間を、英語の勉強に充てた。

まずは、あの国を手始めに、特許を管理する部局のある国と宛先を検索した。特許申請は、基本的に英語で通じる。イマは、片っ端から特許申請書類の送付を始めた。簡単な国では、電子メールにPDFを添付するだけでよかった。難しい国は、申請書類の原本を全部寄こしなさいという。イマは、プリンタやコピー機との格闘もしていた。いかに効率よくcopyしていくかなどという、他ではあまり役に立ちそうもない技術もマスターした。

イマは、ついでに慎重に付帯事項を付けた。「軍備・兵器・装備・施設その他一切の軍事目的利用は、これを禁ずる」 いつか、きっとこれが役に立つ。イマは確信していた。

申請に直筆サインが必要な処の分は、カナブン(タカ)がぼーっと考え事をしているタイミングを見計らって、「ねぇ、これに英語でサインして。イマがまねっこ出来るくらい一杯書いて。これと、これと、これと、これと、はいこれ。またお願いするかも」とタカの隙を突いてサインさせた。ついでに、内緒で自分の名前も横にサインした。

イマは、手当たり次第に申請した。認められるには、かなりかかるだろう。それは覚悟してあった。


中学校では、学校単位で英検(英語検定)を申し込む事が出来た。

イマは、力試しに準一級で申し込んだ。

間もなく、担任から呼び出しがあった。

担任「吉井さん、準一級なんて、中学生にはまず無理ですよ」

イマ「一級の自信がちょっと無くって、準一級にしたんですが、まずかったでしょうか?」

担任は呆れかえった。中学生で、帰国子女でもないのに、準一級に受かるわけがない。

暫くして、試験を受けた。イマは、簡単じゃん、なめてんの?と思いながら全ての回答欄に記入した。

さらに暫くして、また担任から呼び出しがあった。

担任「吉井さん、本当に準一級に合格ですよ。おめでとう。素晴らしいですね」

イマ「あんなに簡単なんだったら、ちゃんと一級を受けておけば良かったと思ってます」

担任は更に呆れた。それに、この子は何なんだ、と恐れもした。


イマは、ついでにTOEICの試験も受けてみた。

問題は、判る人には至極単純である。イマは、途中で飽きてしまった。

後日、点数が郵送されてきた。790点であった。恐らく途中で飽きなければ、900点は軽くオーバーしていただろう。

考えてみれば当たり前である。イマは、英語で各国に特許申請をしていたのだから。



あるときから、タカの研究室宛に、沢山の国際郵便が届くようになった。時には、大きくて重たい荷物もあった。

受け取りは、週末イマが行っていた。事務室はレベル3セキュリティである。イマの入館証では、事務室は入れない。いきおい、事務室手前の内線電話で、毎回お願いしていた。事務員達も、イマが気の毒になったのと、あまりに頻繁なやりとりのため面倒になったのと、両方の理由で所長に相談した。

間もなく、事務棟の事務室の手前の廊下が、前室に改装された。前室のセキュリティレベルは、2である。

イマは、すっかり馴染みになった事務員にお願いして、前室入室の登録をして貰った。それは、事務室全体の本意でもあった。

前室には、メールボックスが置かれるようになった。細かい書類トレイである。

但し、タカとイマのためには、事務員が特別に、ランドリーボックスのようなメールボックスを用意してくれていた。

2段式。上段は、タカ・イマからの申請書類入れ。下段は、タカに届いた書類入れ。

時には、書類入れに付箋が付いている事があった。「イマちゃんへ。大きくて重たい荷物が届いています。内線で連絡して下さい」 イマが早速連絡すると、大抵は耐荷重300kgの平台車に山盛り、台車が軋むくらいの荷物があった。「大変だと思うけど、よろしくね。台車は、前室に戻してくれればいいから」 それが通例となっていった。

事務棟では、イマは既に職員と同等の扱いであった。

ちなみにこの件では、他の研究室の臨時職員や助手達もイマに感謝していた。自分たちもレベル2セキュリティ、事務室の敷居は高かった。おかげで簡単になる。イマは彼らからアイドル扱いとなっていた。

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