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研究編・後期

はい、こちらは研究編・後編です。様々な謎のピースが、どんどんと当てはまっていく、予定です。

でも、未だ終わりではありませんよ。大団円は、最後の最後に書く、予定です。

それでは始まり始まりぃ~。

<研究編・後期>


タカとイマは、黒塗りのクルマに乗せられて、鎌倉を遥かに見下ろす高台の広大な屋敷までやってきた。

黒服の男にドアを開けられ、降りるように促された。

車寄せから玄関まで、それなりの道のりだった。いったん客間と思しき部屋に通され、暫く待たされた後、また呼ばれた。

屋敷の奥、よく磨かれた木の廊下の先の部屋に、「そのお方」は居た。


小さな、老人。立派な電動ベッドの背を起こして、こちらを見ていた。

禿げ上がった頭に、所々に老人斑。口元はいわゆるアルカイックスマイルで、表情は読み取れない。

殆ど線のようになった目から、確かな視線を感じる。

周囲には、点滴とバイタルを測る機械。

老人「よくいらしてくれましたね、金澤君、それに吉井、さん。二人とも立派な大人になったもんだ」

イマは、眼鏡を拭くふりをして、老人を「見た」。殆ど気配が無い?微かにぼーっと三角上のものが見えた。

この眼鏡は、タカが作ってくれたものだ。可視光以外の光や電波を、ほぼ遮断してくれる。イマの思考が集中出来るようにと、作ってくれた。

眼鏡をかけ直したイマに、老人は言った。

老人「吉井さん、いやイマさん。あなたは賢いねぇ。私を「見」ましたね?どんな風に見えましたか?いや、もう、私も自分の先行きにそれほど時間が無いことは知ってますから」

この老人は、イマの秘密を知っている。恐らく、タカの事も知っているだろう。

老人「金澤君、いや今だけ、君のお父さんと同じようにカナブンと呼ばせてくれ。お父さんも、お母さんの真理子さんも、賢い人だった。君も賢いね。両親と道は多少違うが、君は君だけの道を拓いてきた」

タカは、自分のことだけでなく、自分の両親の事をこの老人が知っている、しかもかなり詳しく、ということに驚いていた。

イマは、カナブンのお父さんもカナブンと呼ばれていたこと、それにお母さんが自分のお母さんと同じ名前であることに驚いていた。

老人「先ほども言ったが、私にはあまり時間が残されていない。カナブン、君の研究の結果を、早く製品化出来るようにはならんかね?私は君を潰すつもりはない。これまで通り、助けられるように、手配はしておく。

とにかく私は、君の成果を、この目で見たい。それまでは死ねん。

イマさん、カナブンを助けてやってくれ。これまで色々あった事は知っている。恐らくこれからも色々あるだろう。だが、彼を信じて、助けてやってくれたまえ。「目」のことは、気にせんでもいい。ごく僅かのものしか知らんし、これからも自分で気をつけていれば、知るものは殆ど無いだろう。君を、「実験材料」にはさせんよ。これも君の邪魔にならん程度に、手配しておく。・・・・少々疲れた。おい」

最後のは控えていた黒服の男に向けられた呼びかけである。

黒服の男は、車寄せまでタカとイマを送った。恐らく、屋敷の他の処には一切行かせる気は無かったのだろう。

来たときと同じように、黒塗りのクルマに乗せられて、タカとイマは屋敷を後にした。


「お目通り」が終わった。これは、ある程度以上のクラスの人間にとっては、彼らに特別なステータスを与えられたのと同じ意味を持つ。


-----


タカとイマは、研究所の自分達の研究室に戻ると、着付けないスーツを脱いで、一息入れた。研究室には、片隅の「生活スペース」に、数年前からイマのために洋服店の試着室のようなものが置かれていた。イマはそこで着替えた。


実は、「あのお方」は、「ソラ」の製品を見ていたことになる。

イマがかけている眼鏡。入所祝いに、タカが作ったもの。

可視光線以外をほぼ遮断する眼鏡。普通に見る分には、まるで素通しのように見える。だがある角度から太陽光をあてると、きらめくことがある。これも「ソラ」の技術の応用で作られたものであった。

それに、高校卒業祝いに贈ったイヤリングも、付けていた。

イマの目のようにキラキラと色んな色に見える「色の輪」。注意深い人物が手にとって見ると、きっと驚く。イヤリングの金具とその「色の輪」は接触していない。タカの研究の秘密がそこに隠されていた。


そう、その頃の「ソラ」は、電気を自分で賄う他に、電気系を閉鎖回路状態にしたり、機能を特定したり、様々な形に加工出来るようになっていた。ちょっとした問題点は、イマのイヤリングのように、閉鎖回路状態にしたとき、飽和した電荷で金属と触れ合わない状態になってしまうことであった。だから、眼鏡のフレームは、プラスチックで出来ていた。眼鏡もイヤリングも、イマ自身の身体を「アース」として、電荷を逃がしている。イマの「目」にその電荷が廻らないように、タカは注意深く研究した。このため、ここ数ヶ月は「ソラ」の研究は表面上進んでいないように見えていた。先日は、所長にもせっつかれた。イマを高卒で特別に入所させたのだから、もっと研究が進むんだろうと。内実は、驚くべき進化をしていたのだが。


タカもイマも、判っていた。「あのお方」が見たい「製品」とは、こんなワンオフものではない。量産品のことだ。一番製品化に近くて、インパクトがあるものは、「電気コードの無いTV」だった。画面部分は、ほぼ問題ない。制御部の様々な電気ノイズをシールドして、実際に画面に映したい画像の電荷を載せる、その部分で苦労していた。「ソラ」が敏感過ぎるのだ。事は制御部だけではない。家庭内にも様々な電気ノイズがある。これらにも反応してしまう。タカは、この点で悩んでいた。


-----


「ねぇ、カナブン」コーヒーカップを両手に持って、ソファベッドの前のテーブルに起きながら、イマが言った。

イマ「カナブン、今日、あのお方の処に行ったときのこと、未だ全部頭の中では整理出来てないんだけど、ちょっと思いついたことがあるんだ。聞いてくれる?」

イマがこういうふうに言うときは、その「思いつき」がかなりのヒントになる。

タカ「コーヒー、ありがとう。はい、何でしょうか?」

イマ「あのね、私のこの眼鏡作ってくれたでしょ?かけてみたら、今まで随分気が付かないうちに「目」と頭に負担がかかっていたんだなぁって判ったの。かけたら随分楽になったから。それでね、ちょっと考えたんだけど、「ソラ」を2枚とか3枚とか重ね合わせて、それぞれに機能を分けて上げたらどうかなぁって。例えば、1枚目は不可視光や電気ノイズを取り除くソラ。これで発電してもいいかも。2枚目は、本来のソラね。3枚目は、シールドの替わりに1枚目と同じものか、完全遮断で閉鎖回路系のソラを使えば、かなり薄いTVが出来るんじゃないかな?」

タカは、はっと思った。「ソラ」は、一つで何でも出来るから、一つでどうにかならないか考えてきた。重ねる。間には薄いカラス板のような絶縁透明板が必要だろうが、出来そうだ。

タカ「イマ、やっぱり君は賢い。きっと出来る。やってみよう。ありがとう」

やった、また助けることが出来た。イマは久し振りに単純に喜んだ。




-----


系列の電機会社から、「電源の要らないTV」が大々的に発表されていたとき、タカとイマは所長室に呼ばれていた。


所長「おめでとう。ようやく日の目を見たね。他にも色々応用出来るらしいね。これからも頑張ってくれたまえ」

タカ「はい、ありがとうございます。TVは未だとっかかりです。これからもっと違うものを色々考えています」

所長「それはいいね。・・・・ところでだ。今日呼び出したのには、2つ理由がある。2度と言わないから、よく聞くように。

1つは、君達の研究だが、その研究内容と資料の全てを、あるところに提供することになった。まぁ、共同研究だと思ってくれ。もちろん、君達はそのまま研究を続けていって欲しい。ここまでは、判ったね?」

タカ「・・・・理解しました」

そうだろうな、国が利用するだろう。我が国が直接利用しなくても、あの国なら積極的に利用するだろう。資料に残してしまったが、やり方によっては「ソラ」は軍事利用が出来る事を示唆している。こればかりは止めようがない。仕方がない。

所長「それともう1つ。これは吉井君にも、聞いて貰った方が良いと私が判断したが、金澤君、君のご両親の事だ。吉井君には席を外して貰うかね?」

タカ「いえ、構いません。イマは、私のパートナーです。一緒に伺います」

所長「そうか。では。金澤君は、君のご両親はどうして亡くなったと聞いているかね?」

タカ「夜の交差点で、信号無視のトラックにはねられた、と聞いています」

所長「実は、それは真実ではない。金澤君、「あのお方」にお会いしたとき、何か言われなかったかね、ご両親のことを」

タカ「はい、あのお方は、私の両親をご存じでした。名前まで」

所長「では、判るね。そういうことだ。君のご両親は、あのお方にお目通りするくらい、あるクラス以上のものには有名な研究をしていた。この研究所でだ。開所直後の事故の噂は聞いたことがあるかね?」

タカ「はい、何でも爆発事故があって、怪我人も出たけれども、隣の研究室では揺れた位だったと」

所長「君のご両親は、その爆発で亡くなった。そのことは一般には伏されたんだ。研究内容も内容だったからね。ご両親が研究していたのは、「常温核融合」だ。もう数十年前になるか、一時期世界的に話題になったが、「出来ない」と「証明」されて、話題から消えた。だが、出来ないのではなかったんだ。各国政府と研究機関、大学が協力して、出来なかったことにした。実際には、ある環境下では、常温核分裂までは確認出来ていたんだよ。もちろん危険な実験を伴う。此の研究所は、そのために作られたと言ってもいい。セキュリティや分厚い壁、おかしいとは思わんかね?ついでにだ、地下には噂通り核シェルターの設備がある。私は今としては東京大地震対策だと思っているがね。研究室の話に戻そう。君の研究室には、トイレと100V電源がやたらにある一角があるね。それについて疑問を持った事は無いかね?」

タカ「・・・・いいえ、ありません。他の研究室には無いのですか?」

タカは、所長の話を消化するのに一所懸命だった。散らばっていたピースが、どんどん当てはまってくる。

所長「他の研究室には、そんな設備はない。他のものは、研究棟の両端にあるトイレを利用している。それから100V電源だが、あれもない。あれらは、ご両親が寝泊まりして研究出来るように準備されたものだ。つまり、君が今使っている研究室は、君のご両親が使っていた研究室だった、ということだ。だだっ広いのも、そのときの研究内容の名残だ。何十人もの研究者が、一緒に研究していた。中心はご両親だがね。

・・・・をっと、時間だ、ちょっとすまんが中断する。そのままそのまま。」

所長は、机の引き出しから、何やら取り出した。

タバコ?所長、所内禁煙では?と言わずもがなの事をいいかけて、気が付いた。火は、付いていない。しかし、煙は出ている。更に、あの独特のタバコ臭が一切しない。

所長「あぁ、すまん。これは別の研究室の試作品だ。私が検体という訳だ。これはね、タバコの逆に、呼吸器の中の異物を、肺胞の中のレベルから取り除く、というものだ。煙は、私の肺の中にあった異物ということになる。今はね、特に味はしない。これにフレーバーを付けて、タバコの代用物として世間に認めて貰おうということだ。もちろん商業ベースに乗せる意味もあるが、この肺フィルターには、その機能を発揮出来る限度がある。それを、タバコサイズで、タバコを吸うのと同じくらいの時間に調整しようとしてるんだよ」

タカはちょっとめまいがした。此処でも逆転の発想か。しかも最初から商業ベースを考えている。民間の研究所としては、当たり前と言えば当たり前だ。私達の研究の方が、この研究所としてはよっぽど異端だろう。


この間、いや最初から、イマは一切発言しないで、一所懸命聞いていた。考えていた。私は、それでもタカについていく。タカを助ける。


所長は所定のテストが終わったのか、そのタバコ様のものを置いて、何かメモを取った。

所長「いや、中断して悪かった。続きだ。君の研究室は、ご両親が使っていたものだ、という処まで話したね?・・・彼らは、まさに現代のキュリー夫妻だった。研究室内に、更にシェルターを作って、主な実験はその中で行っていた。他の研究員の被爆を恐れたのだ、という話になっている。もちろん、ご両親も防爆装備をしてからシェルターに入っていた。あるとき、ちょっとした異物を挿入すると、すぐに臨界点に達することが判った。夫妻は、一番適するものは何かを、それこそ一所懸命実験していたそうだ。すぐ臨界点まで達するなら、さらにその先の核融合までは目の前だからな。ところが、あるとき、遠隔操作のロボットハンド自身が、臨界点に達していた中心部に触れてしまったらしい。ビデオの映像からの推測だがね。そして起きたのが、大爆発だ。シェルターの中は、ひとたまりもなく一切が吹っ飛んだ。残念ながらご両親も、だ。シェルターの外の研究員達も、吹っ飛んできたものや爆風に巻き込まれて、重軽傷を負った。それがさっきの話の真実だよ。後始末にはだいぶかかったらしいが、不思議なことに残留放射能は殆ど無かった。そこから先は、他の研究員達がすぐに、常温核融合まで持って行くことが出来るようになった。安全にな。

そこから湯沸かし発電とか、ややこしい事をしなくても、直接エネルギー源として発電等が出来るようになった。何しろ、核融合なのに放射能レベルは通常の屋外と同じレベルだったからな。資料を執拗に要求していたあの国の軍事企業は、最初はがっかりして、その後あることに気が付いた。これは、この技術は今世の中に出すと、稼働中の原子力発電所の存在意義が問われる。それではペイしない。・・・・そうして、完成した常温核融合は、未だに発表もされていないということだ。なに、既存の原子力発電所達ももう寿命だから、そのうち発表されて、直ちに新しい発電所建設となるだろう。そして、国と特定の企業は儲かるという訳だ。まぁ、我が国も我が社も一枚噛んでるがね。・・・・地下には、超小型強力発電器があるという噂も聞いたことがあるだろう?タカなら、そこまで行くことも出来る。その発電器は、この技術を使っている。稼働すれば、この研究所全体の電力を賄って、更に近在数万世帯まで賄えるだけの電力が発電できる設計だ。試運転には私も同席したが、その能力は凄いもんだぞ」

タカ「・・・・それで、私の両親は、見殺しにされたんですね?業績を称えられることもなく。私も見捨てられたわけですか。いや、違いますね。小さい頃から色々助けられてますから。でも、それで済む話ではないでしょう?所長、放っておくと、私はこの事実を公表しますよ」

それまで黙っていたイマが、初めて発言した。

イマ「カナブン、それは止めましょう。社会が混乱します。ご両親の事は、私も悔しいです。ですから、この技術が発表されるときには、ご両親の名前で発表して貰いましょう。どの国での、どの会社での発表も、ですよ、所長。此処の会話もモニタされてるでしょうから、モニタされてる方々、よろしいですね。この約束が守られない時は、私達は私達なりの方法で戦います。よろしいですね、所長。タカ、これでいい?」

タカ「イマ、ありがとう。私は少し頭を冷やす必要があるな。君は本当に機転が利く。イマが言ってくれた方法で行きましょう。あのお方は当然このこともご存じですよね。私達の決意をお伝えしておきます。所長、よろしいですね?」

所長「う、うむ。判った。・・・・私も年を取ったかな?君達には負けてしまったよ。とりあえずは、今まで通りに活動、ということでいいですね?」

タカ「はい、結構です。所長、年を取ったなんて言うと、何をほざくかこの青二才が、とあのお方から叱られてしまいますよ。では、失礼します」


-----


タカは、自分達の研究室に戻るまで、ため息をついていた。

イマは、タカを慰めるように、手を握って並んで歩いた。


研究室に着くと、盗聴されていることを利用して、堂々と「あのお方」に電話した。すぐに取り次いでくれた。タカとイマの研究成果が発表された事はとうにご存じのようで、祝福してくれた。タカは、所長と交わした約束を話した。あのお方は、「私もそうなるように約束しましょう」と言ってくれた。これで、多少溜飲が下がった。


「電源の要らないTV」の正式製品第一号は、「あのお方」に届けられた。

あのお方は、大変に喜んだ。

「カナブン、よくやりましたね。カナブン、これで私も思い残すことがなくなりましたよ。もうじきあなた方の処に行きますから」


間もなく、「あのお方」の訃報が、「お目通り」した人達に伝わった。

公式日程が詰まっているお偉いさん方は、深夜にひっそりと弔問に訪れた。

タカとイマは、胸を張って、というのは少し場違いだが、堂々と通夜と葬式に出席した。あれだけの権力を持っていた方の葬式だったが、拍子抜けするくらいの小さな規模の葬式であった。イマは、いつだったか父が「葬式は、残った親族のために行くもんだ」と言っていたことを思い出していた。あのお方も、結局ひとりぼっちだったんだ。タカもひとりぼっちだったけど、私がいる。イマは、このとき本当にタカを愛したのかもしれない。


世の中には、「ソラ」が溢れ出していた。「ソラ」自身も改良された。ソラは、薄い。ソラは、曲げられる。ソラは、理論上は何処までも大きくも小さくも出来る。ソラは、曲げられたときや横長の大画面の時、何処から見ても同じ画像になるように、マイクロ秒単位で映像を切替えることが出来るようになっていた。円筒形の広告塔もソラを使うようになった。だが、「永久機関」ではないので、街中全てがソラになっては結局真っ暗になってしまう。そこで、初期のソラからの応用で、ごく僅かの電気で発光出来る照明も出来た。


イマは、自分の先見の明を少し自慢したかった。改良された「ソラ」達は、全てイマが中学生の時に応用特許を申請・取得していたからだ。 各国特許も。今頃、あの国の軍事産業は、歯ぎしりしていることだろう。

軍事目的ならば、特許など無視することは出来る。だが、何かをきっかけにして、バレてしまったら大変な事になる。ロビイスト達が、たちまちクレームを上げる事だろう。損害訴訟が起こされたら、あの国の軍事予算の殆どがすっ飛んでしまうだろう。だから、彼らはおとなしく特許に従うことにした。

イマは、中学生の時に、タカの名義で新たに銀行口座を作り、特許使用料は全てそこに入金されるように手配していた。そのうち、その金額がとんでもないことになり、銀行の役員がタカに会いに来た。「どうか、他に口座を移されないで下さい。それから、ご投資されては」「口座はそのままにします。投資はしません」脇からイマが口を出した。タカは、「はい、この子の言うとおりです。これからもよろしくお願いします」と頭を下げた。役員の方が恐縮していた。地方の借家での、奇妙な風景であった。


タカは、あるときある製品の特許表示に「Takafumi Kanazawa,Ima Yoshii」とあることに気が付いた。

タカ「イマさん、やってくれましたねぇ。気が付きませんでしたよ、この特許、私とイマさんの連名になってますね」

イマ「あら、今頃気が付いたの?申請書にも、ちゃんと私のサインと印鑑があったと思うけど。お金は全部タカに入るんだから、名前くらいイマが入っていてもいいじゃない?」

タカ「いいえ、私こそ最初からイマさんと連名にしなくちゃと思いながら申請はお任せしていたので、気が付かなくてごめんなさい。「ソラ」は、間違いなくイマと私の合作、子供みたいなものです」

タカは、来春にはイマが20歳になるな、と考えながら、喋っていた。

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