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mission1

mission1野心家のヲタク出現!!!!

ここはヲタクの聖地秋葉原。今日もこの街で二人のヲタクは買い物に没頭していた。

「木原君、はやくしてくださいよ!!間に合いませんよ!」と叫んだ男。名を吾川寿と言う。長髪で眼鏡にリュックサックと言う正真正銘のアキバ系ヲタクなのだが、生まれも育ちもアキバと言う珍しい男。このようなタイプの人間になってしまうのも当然なのかも知れない。一応16歳と言う年齢のため、高校に通っている。とはいえ、友達も全くいないしヲタクの本性を隠して過ごしているため、彼曰く最悪の環境で、極力休んでヲタクとして活動している。まあ家にこもる行動パターン故に勉強もしているため、成績は学年でダントツのトップだから問題はさほどないが。今日は彼が最も溺愛する「ガンダムSEED」シリーズの非売品グッズが発売するということで、走っているわけだ。

「ったく、お前はなんでガンプラごときにそんな喰いついてんだよ!!!」もう一人の走る男、木原瓜。眼鏡も掛けず、爽やかな短髪の20歳の男で一見は普通の少年だが、中身は筋金入りのヲタクで、長野の農家からからはるばるここへやって来た。彼自身は、マシン系には興味が無く、アニメの女性キャラやエロゲーなどをこよなく愛する「萌」を求めるヲタクである。生まれは新宿青山だが、農業を始めるべく、長野に引っ越した父に不満を持ち、高校卒業後に上京。しかし職に恵まれず、約2年のニート生活と共にヲタクへと変貌していった。また、メイドにも並々ならぬ興味を抱いており、365日欠かさずメイド喫茶に行くと言う側面も持つ。そんな二人は1年前に出会った。異文化とは言え、アキバの細かい知識や、共通の趣味のパソコンで意気投合。毎日の様に共に行動し、メイドやガンダムなど二人でヲタとしての視野を広げていった。確実にいいことでは無いが。そして寿は、成績優秀で東京有数の進学校に合格したのを良いことに親に高校からの一人暮らしを認めさせ、兼ねてからの計画だった瓜の住むアキバのマンションに居候することに成功した。ヲタクとしては最高のステータスだ。もっとも、瓜自身使う部屋が有り余るくらい広々としているし、話し相手もいるため、彼も嫌とは思わなかった。家賃も親の仕送りで十分払えるため、心配の種は全く無い。そして9ヶ月が過ぎた今も、毎日彼らはアキバに放浪していた。

「ハイ、この人までね」店員が次々に並ぶ人たちに言う。決死の走りも虚しく、寿達の少し前の人たちまでで売り切れといことになってしまった。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 寿の絶望とばかりの声が響き渡る。

「ち、チキショウ!!僕はあれのために1週間前から備えてきたのに!!!」呻きながら寿は泣き叫ぶ。いくら、同胞言えども、これくらいで泣くのはどうかと思った瓜は

「おいおい、たかがプラモデルくらいで泣くのよ」と宥めるが、寿の怒りはさらに増してゆき、

「ふざけないで下さいよ!!!!!あれはシン・アスカの搭乗機『デスティニーガンダム』の後ろの赤い部分が輝く100人限定のプレミアですよ!!どんだけ欲しいって言ってたと思ってるんですか!!!アンタって人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」と半ギレで瓜を怒鳴る。いつかのアニメで聞かされた台詞だ。

「だいたい木原君がバイト終わるのが遅くてこんな目にあったんですよ!!ハッキリ言って木原君のせいじゃないですか!!」寿はガンダムの話題になると止まらない。お手上げの瓜は

「分かった。お詫びに奢ってやるからついて来い」と寿を誘った。

「また、メイド喫茶ですか・・・・」 案内された場所に行った寿は不機嫌な顔で言う。

「うるせー、他に行くとこだってねぇだろ!!」二人が行ったのはアキバのメイド喫茶で、名は「デリューション」。意味は・・・・・聞かないで欲しい。瓜がこよなく愛しているここでは、すっかり寿も常連に成り下がっている。全く、こうゆうサービス込みの店はただでさえ高いってゆうのに・・・。まあ今日は奢ってくれるみたいだし、やっぱりご奉仕してもらって悪い気はしない。

「どうぞ、ご主人様」

「あははは、もらっちゃいますよ」どんだけはまってるんだよと寿は思う。何度も来てるけどご主人様って呼ばれ方はなんか嫌だ。

「それにしても、これからどうしますか?最近面白いこと全くないですよ。」気を取り直して寿は話を変える。

「確かに全然無いな。でも、毎日、毎日こうやってメイドちゃんに癒される日常は最高だな!!!」

「そうじゃなくて、何か刺激的な何かですよ」

「なこと言っても俺らアキバ系ヲタクは所詮アニメとかのイベントとかじゃないと刺激的な人生ってのは味わえない運命だろうがよ!!」確かにその通りだ。自分たちアキバ系ヲタクはそんな物でしか、盛り上がることはできない。だからといって24時間365日楽しみを追求していきたいのは人間としての思いだ。まあそれが分かれば全く苦労しないのだが。

「うーん、そうだなぁ・・・・」珍しく瓜が考え込む。

「やっぱり、真面目な木原君はいいですね」嬉しく思った寿は言う。しかし、

「ご主人様、あーんして」と言うメイドを見た瓜は

「はい、あーーーん・・・」と完全に緩みきった表情で応じる。

「はぁ相変わらず変態ヲタクですね、木原君・・・・」寿がため息をつきこう答える。

「ん!?なんか言った?」

「いえ、何にも・・・」結局なにも進展は無いまま二人はメイド喫茶を出た。

結局やることが無かった二人は、家に帰ることにした。

「ハァ…」

「ため息つくな!幸せ逃げるぞ」

つまらなそうにため息を寿に瓜が言う。

「もうすでに幸せ逃げてるから関係ないですよ」寿は全く気にも留めずにとぼとぼ歩いていく。その時だった。一人の女性が向かいから歩いてきた。歳は自分と同じくらいだろうかと寿は思った。とはいえ、生身の女性は嫌いだ。二次元空間の人間になった自分にはもはや関係ない。そう思った寿は避けるようにして通り過ぎる…はずだった。

「あ、あの子かわいいよな…」通り過ぎる前に瓜が寿の肩を叩き言ってくる。何を言い出すんだと寿は思った。メイド喫茶皆勤賞で、エロゲーや、同人誌マニアの瓜は少なくとも自分より二次元嗜好の人間だと思っていたため、寿は驚きを隠せない。

「何おかしなこと言ってるんですか!木原君みたいな女キャラヲタクがあんな普通の人間に反応するなんて甚だ可笑しいですよ!」当然の如く寿は反論するが、

「あの長い髪が俺のヲタク美学にお約束なんだよな」と瓜は聞く気配が全くない。二人がブツブツ話しているうちに結局女の子と鉢合わせになってしまう。

「あぁ、キモチわる…。たまたま遊びに来たら、あんたらみたいなヲタクばっか。キモい格好、キモい髪型、キモい眼鏡、キモいリュックサック、キモい顔。ホント、アキバにはこんな生きてる価値ない奴ばっか…。もう、菌に汚染されそうで最悪だわ…」女性はいきなり鉢合わせになるなり、ヲタクを馬鹿にする言動を連発。これに頭にきた寿は、

「いきなり何てこと言うんだよ!僕らの生き方をいちいち批判されてたまるかよ!君なんかにヲタクの何が分かるってんだよ!」と怒鳴る。

「木原君も何とか言ってやって下さいよ!」

「こうゆう強気な所…マジで萌える…」駄目だコイツ。完全に思考回路が狂っている瓜をみて寿はため息をつく。

「だってそうじゃない!エッチなゲームとか、完全にアニメに没頭したりとか、どう考えてもあんたらヲタクは私達普通の人間からすればイカれた部類よ!」イカれた部類…。女の子からすれば、自分達ヲタクの評価はこれらしい。他の人間からはだいたいこう見られていることは予想つくが、面と向かって言われると最高に気分悪い。

「僕らがヲタクだったとしても君達に迷惑かかる訳じゃないだろ!それに、僕らからすれば君達のが可笑しい部類だ!」寿は自尊心から苦し紛れに言い訳をする。

「ホントキモいよあんたら!この東京のゴミ!こんな奴らと話してるとおかしくなる」女の子はそう言うと足早に通り過ぎようとする。しかし、

「で、電話番号教えて下さい!」と瓜がつかみ掛かる。

「触るな!このヲタク!」女の子は怒って瓜を突き飛ばすと、

「あ〜ヲタクの手が服に…。帰ったら消毒しなきゃ」と帰っていった。消毒って…、どうしてそんなにまで拒絶されるんだ。寿はヲタクなことを馬鹿にされた怒りと同時に、信じられない程にヲタクが社会から拒絶されていることに悲しみを感じた。

帰宅した二人は、疲れた体をソフアに降ろした。

「それにしても木原君、生身の女に発情なんておかしくなってるでしょ?」寿は先程の瓜の行動に苦言を呈す。

「いや、男なら反応のひとつやふたつするだろ!もしかしてお前恋とかしことない?」瓜も瓜で、寿の潔癖めいた行動におかしく思っていたため、逆に聞く。

「そんなことあるわけないじゃないですか! 僕は2次元物にしか恋をしません!!それがヲタクの宿命ですから」寿はイライラしながらテレビの電源をつける。すると信じられない光景を目にした。『千代田区長当選確実と噂の原辰夫。ヲタク撲滅に生涯を捧げる』と言う題名のニュース特集がやっていたのだ。千代田区は秋葉のある区であり、ヲタクの聖地と言うわけである。でも、なんでいきなりヲタク撲滅なんて?

「木原君、どうゆうことでしょうか?これ」あわてて寿は瓜に聞くが彼も

「全然考えがつかめねぇ」と首を傾げた。すると、番組中で原がインタビューということになり話はじめる。

「予てより私はオタクという者は日本人として認めていません。仕事をしない、学校にも行かない、そうやって本来我々があるべき姿を決定的に放棄し、秋葉原の街で低俗なもののために奔走するいわば社会のゴミのような人間を野放しにするわけにはいきません。この千代田区の改革は秋葉原に住みつく汚いゴミ共を一人残らず消さないことには始まりません」原は延々とオタクの悪口を語りそのまま放送は終了した。

「なにぃ!?どうゆうことだよ!」スイッチが入ったように瓜が叫ぶ。

「全くですよ!何でよりによってヲタク撲滅なんて…」寿も戸惑ったように言う。原辰夫は議会で最も勢力のある自明党の傘のしたで、何度も東京の区長をしてきたやり手の男だ。区民に支持される奇抜なアイデアを生み出したきた一方、それを実現させるために反対意見をバックの力で無理矢理押さえ付けて来たという鷹派の側面を持つ。最も、一般人からすればヲタクという存在はかなり忌み嫌われている。当然支持を受けるだろうし、自明党の力の前はヲタクが集まったところで逆立ちしたって敵わない。寿や瓜もまた同じ。ヲタク追放のターゲットになってしまう。

「寿、どうするんだよ!」瓜が心配そうな顔をして言う。

「落ち着いて下さい木原君。いきなりこんなことは出来ませんよ」確かに計画をした段階では何も起こりはしない。しかし、撲滅計画が出るほど拒絶されてるとは。…「東京のゴミ」。寿の頭のなかにさっき女の子に言われた言葉が脳髄に響き始めた。

次の日、驚愕の出来事が二人を襲う。朝、テレビをつけたらなんと昨日の原辰夫が計画前の一仕事としょうし秋葉原の店の強制退去を行っているニュースが報道されていたのだ。当選前に動いてくるとは…。しかも、退去された店の中には寿や瓜がいきつけの店が何軒もあった。

「やり過ぎだ…。何でここまで酷いことを…」寿がうなだれるようにつぶやく。

「全くだ!俺の行きつけのメイド喫茶まで潰しやがって!これじゃジュリアちゃんに会えないだろうがバカタレが!!」

「そうゆう問題じゃなーい!とにかくこれ以上横暴な行動をするなら許せません」寿は怒りまかせに叫ぶ。

「落ち着けって!単純に考えて、日本の最大政党の傘にいる人間に立ち向かう方法なんてないだろ!」瓜の言う通り何をしようと無駄なあがきに過ぎないだろう。だが、

「だからってこのまま秋葉原がなんの魅力の無いさら地同然の場所になってもいいって言うんですか!?」秋葉原が廃れて行くのを黙って見過ごすことなんて寿には出来なかった。

「俺、も…嫌だ。でもどうする気なんだ?」

「待って下さい。いろいろ案を出して見ますから…」寿は、朝の楽しみにしているアニメをそっちのけにしていくつもの計画案を瓜に話した。だが、どれも実行には無理が生じてしまうものばかりで、話は進まない。そんな中瓜がこんなことを言った。

「なぁ、寿。原は自明党の傘にいる人間なんだろ?だったら自明党をぶっ潰してやれば原もおしまいで解決じゃねぇか!?」

「話になりませんよ!自明党は確実に原より力は上で…って自明党!?それだ!!」瓜の自明党の一言が彼にひらめきを与えた。

「寿、やっぱり自明党をぶっ潰すのか!?」

「違いますよ!奴があんなに横暴なことを出来るのも自明党のおかげなはず。だから、自明党からの信頼を失えば後ろ盾が無くなった原は確実に何も出来ません。だから原の人間性を一気に下落させるように工作すればいいんですよ」寿は自信に満ち溢れた表情で言う。

「でもそんなこと出来るのか!?」瓜が不安げに言うと寿はパソコンのスイッチを入れ、

「フフフ、原や部下達はやり手と言われてるけど、所詮堅物な考え方の奴らばっか!この分野なら確実に僕のが上ですよ」寿は微笑むとカタカタとパソコンのキーボードを叩き始めた。

場所を移してここは原の事務所。外での職務を終えた原達が戻って来た。

「いやぁ原さん。ヲタク撲滅なんて素晴らしい考えだ!」一人の部下が原を持ち上げる。

「そうだろ?あんな社会のゴミは消えたほうがいい。奴らの半分以上が今世間で騒がれているニート(Not in Education,Employment or Traning 四つの頭文字をとってNEET〜ニート〜の略。働く意欲がなく定職に就かない人)なんだ。今1番日本が外国から批判される一部分っていっても過言では無いだから私はヲタクを撲滅させる。それでこそ美しい日本だ!ワハハハハ!!!」某カード漫画の主人公のライバルのように原は高笑いする。

「この前作った原さんのホームページにもたくさんの応援メッセージが寄せられています。都民の心を確実に掴んでますよ!」

「そして、私はいずれ東京を征服して自明党もろとも支配し、やがて日本を統べる大日本帝国王(明治)となるのだぁ!!!!」

そんな矢先だった。ホームページの管理を行っている部下が原のホームページを点検すると

「な、何だこれ!?」と大声をあげる。

「どうしたんだ!?」その声に驚いた原はパソコンを覗き込む。すると、自分がカッコつけたポーズを決めているはずの自身のサイトのトップページが大量のアダルト画像で埋め尽くされていた。しかも、そこには「原辰夫様が今日見つけた珠玉の画像だぜ!」と記載されているではないか。そして活動記録などのページも全てアダルトサイトのリンクやゲームにすり替えられている。何がどうなっているんだ?原はあわてふためき

「早く直せ!」と部下に怒鳴る。しかし、ホームページは編集タグが複雑化されて非常に直しにくい造りに変わっていた。

「駄目だ!全然分からない…」精巧に施されたハッキングはパソコンに精通していない部下には到底制御出来なかった。ふともう一人の部下が

「原さん、この前なかったはずの項目が…」と指をさす。見ると、昨日までに無かったブログのページが出来ている。恐る恐るクリックすると、『ヘンタイ王子たっちゃんの変質活動日記☆★☆』と題されたブログができていた。一つの記事に目を通すと、「ファンの皆様待たせたなぁ!ヘンタイ王子のたっちゃんこと原辰夫だぜぃ☆全国の健全な男ども喜びな!メイド喫茶つーのはあまりにもエロさがたりねぇ!つーわけで俺は秋葉原のメイド喫茶を取り壊してピンクビルを建設するのだ!メイド達は現在監禁中で、ソープ嬢にする予定だ(笑)そしてメイド姿で接客。題して『メイドソープランド』だワハハハハ!ヲタクなんかじゃ分からない〇交の楽しみを男達に教えてやるからしばし完成まで待て!PS働きたい女は俺のところへ来い!俺が直々に実技の面接してやるぜ☆」と卑猥な言葉と、不純施設の建設を伝える内容のブログ記事だった。もちろん店を取り壊したのはソープランドを作るためではない。だがこれがある以上、自明党からも市民からも疑いの目が向けられる。焦った原は

「どけ!」と部下を押しのけ、インターネットのページの削除を行う。「パスワードを変えられてる可能性があります」という部下の忠告を聞かずに、原は編集ページでブログの削除の覧にいつも使っているパスワードを入力してエンターキーを押す。次の瞬間、パソコンの画面がノイズの音と同時に無数の暗号で埋め尽くされていく。

「うわぁ!コンピューターウイルスだ!」部下が叫ぶ。部下の予想通り編集パスワードは変えられていた。それだけでなく、違うパスワードを入力すると最新コンピューターウイルスが流し込まれるように細工されていたのだ。ウイルスの破損プログラムにより、パソコンは完全に故障し動かなくなった。

「原さん、このままでは日本中の人にこのページが…」鳥肌を立たせ部下がつぶやく。

「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」原は涙交じりの悲鳴をあげていた。

一人の男が悲鳴をあげた日の夜、二人の若者は夜ニュースを見て腹を抱えて笑っていた。「やり手候補ご乱心!?原辰夫女性の監禁、売買を自白?」という見出しで原辰夫は監禁に快楽を感じる性癖を持つ変態という本性を暴露したのか?という内容でニュースが進むので本当にたまらない。

「相変わらずすげぇな寿のハッキングは!」腹の痛みを堪えながら瓜が言う。そう、原のホームページが無茶苦茶になっていたのは全て吾川寿がクラッキングをしたからだ。ホームページに入り込みいろいろ操ることをハッキング、行う人をハッカーと言うが、実際ハッカーは他人などのためにする人であり、寿のように悪用目的でする人をクラッカー、その行為をクラッキングという。今ではハッキングもハッカーも関係なく使われているが、当然クラッカーが消えてクラッキング行為が無くなったわけではない。まず寿はホームページのパスワードを発見しむちゃくちゃに編集したのだ。それだけでなく、パスワードをかなり複雑化して。素人ではまず、解除出来ないつくりの上、コンピューターウイルスを至る所に仕込ませているため、近付くことすらできやしないだろう。

「しっかし、よくあいつらハッキングだって気付かないよな」

「いづれは気付くだろうけど、もはや原の悪いイメージは覆水盆に返らず。がた落ちですよ」寿が笑みを浮かべる。

「それに、パスワードは暗号化した上、100桁を越えています。名利きのハッカーでも壊すには時間はかかりますよ。間違えたらパソコンが壊れる最新ウイルスの手土産つきだし。あのホームページは当分残り続けるから逃げ場はないですよ」これぞヲタクとしてのこの能力。寿は完膚無きまでにやり手の区長候補を撃沈させた。

その後、ハッキングという弁解はあったものの、ホームページでの一件で原はその煽りを受け選挙に見事に落選。何故原を推薦したのかと世論から痛烈な批判を受けた自明党は、程なくして支援を打ち切り。後ろ盾を失った原は今まで行って来た行為に対し多額の損害賠償を求められ、投票が始まる前にそれから逃れるために行方をくらましていた。結局、寿が原を破滅させこの件を終了させた。寿と瓜は原に退去させられた秋葉原の店の復興のために、協力を仰ぐため街頭でビラ配りを始めた。

「お願いしまーす」

「ふぅ、疲れたなぁ」

「木原君、またメイドに会えると思って気合い入れて下さい」

「よし、ジュリアちゃんにあうためにもうひと頑張りするか!」黙々とビラ配りをする二人だが、ついに瓜が座り込んでしまう。

「なんかせっかく原倒したのに公表しないで、地味なことやってアキバの英雄になり損ねた失望感が大きすぎるぜ…」そううなだれる瓜に寿は窘めるように

「いいんですよ、僕たちヲタクは2ちゃんの掲示板で顔が見えないように顔や名を公表しない縁の下の力持ちなんですよ。それに名前が分かった途端、原に刺されますよ!」と言う。すると近くにいた寂れた格好の男が近寄り、

「ほぉ、お前らが倒したのか」と言ってきた。

「えぇ、まぁ…」寿は男の顔を見ないで照れた様に呟く。

「寿!公表するんじゃなかったのかよ!」

「いやまぁ僕も本来英雄になりたかったし、街で言っても特に、ね」

「そんなの卑怯だろ!」しばし口論をしていた二人だが、男の

「じゃあ俺はお前達を処刑しなければならないのか」という言葉にはっとする。二人は慌てて男の顔覗き込む。

「こんなゴミどもにやられるとはな…」そう声を凄ませた中年男の顔はテレビでなじみの顔だった。

「は、原、原辰夫………」

原に捕われた二人はとあるびるの地下に連行された。そこで二人はローブで壁に縛られてしまう。抵抗しようとしたものの、原が鞄から取り出した包丁に寿と瓜は凍り付いた。

「このまま貴様らゴミどもを処刑する…」そう言って不敵な笑みを浮かべる原に寿は

「ふざけるな!!」と叫ぶ。

「誘拐して、殺害なんて犯罪だ!あんたホントに終わりだぞ!」寿のそんな言葉にも原は全く耳を傾けようとせず、ニヤニヤして

「終わり!?とっくに俺の人生終わってるんですけどぉ!俺をはめちゃってくれた外道どもを道連れにしてやろうと思ったわけですよ、ひゃひゃひゃ」マズイ、寿は思った。この状態になった男にもはや何を言っても無駄だ!このままじゃ確実に殺される。

「あのホームページの一件から、家族には逃げられ、自明党からは見捨てられ、街を歩けば皆が俺を変質者を見る目してくる。ただぼーっとしてても債権者や損害賠償を請求する弁護士が俺を追い回してくる。俺の人生は死を告げられたんだよ!生きてたって意味はねぇ!だから俺をはめた貴様らヲタクを俺共々地獄のそこに突き落としてやるんだよ!!!!」

「ふざけんなよ、そんなの逆恨みだ!テメェがアキバの店を勝手に潰すのが悪いんだろうが!」狂ったように吠える原に瓜は大声で反論する。

「黙れ!そんな店で喜ぶのは貴様らゴミだけだ!ここも取り壊したみせの代わりに水資源を保管して非常事態に備える施設にする予定だったと言うのに…。貴様らはソープランドにすると勝手にでっちあげて、推敲な計画を汚しやがって」

「調べさせてもらったけど、アンタが保存した水資源はダムから無断でとってきたらしいな!結局市民のためってしてきたことは、全部お前がのし上がるためのエゴのためだ。評価を上げるために、国民の応援を使った卑怯な奴だ!そんな奴にアキバを好きにさせるわけにはいかないんだよ!」

「それがどうした!?貴様らなんぞ生きてたって何の価値も無いゴミどもにいちいち言われたくないわ!!!」

「たしかに僕たちは生きてたって日本の恥のように疎まれ続ける存在なのかも知れない。でも命は何だって一つだ!!!!!!!」

「寿、この場面でアニメのセリフ引用するのはちょっと…」

「真面目に話してるのに突っ込むな!!」寿と瓜は再び口論になってしまう。原はチャンスを見計らうと、二人に突進してきた。

「うわぁっ!」ふたりは大声をあげる。このままでは殺される!二人は必死に動こうとするが、どうやったってロープは一向に解けない。万事休す。二人はギュッと目を閉じる。だが二人を刺身にするはずのナイフはすんでの所で止まっていた。助かった!?二人は恐る恐る顔をあげる。

「ふぅ、あまりにも残酷過ぎるな。このような殺し方。もう少しソフトに殺すとするか」結局殺されるのかよ!?二人は絶句する。原は隅にある大きな機械に向かって歩いていく。

「この装置には大量の水が入っている。一歩間違えば街中が水没してしまうくらいな!今この地下の扉は全て鍵がかかっているため、これを壊して水をだせば、お前達は俺と共に溺れ死ぬのだぁ!」原は勝ち誇ったように笑い、装置に拳を打ち付けた。

「いってぇ!!」が、そんなもので壊れるわけが無く、原は返り討ちにあい、手を抑えてうずくまる。

「こいつ、馬鹿か!?」瓜が呆然と呟く。小学生でもやらないような、幼稚で短絡的な行動に二人は口を開くしかなかった。

「チクショウが!!」愚かにも原は立ち上がると、めげずに装置を蹴り始めた。しかし、装置は全く壊れる気配は無い。業を煮やした原は足元の鉄パイプを見つけると、思い切り叩き始める。

「やめろ!これ以上やったら…」危険を感じた寿が叫ぶ。

「今更、命ごいしても無駄だ!!」原は寿の話を全く聞かず、ひたすら叩き続ける。その時だった。叩いていた装置が轟音を響かせ、火花を散らし始める。原は火花に当たったと同時に「ぎゃあ」と声をあげ倒れた。これを見た寿は一気に危険を確信した。

「木原くん、これは水オチじゃなくて爆発オチだ!あの装置が爆発すれば爆風に飲まれて一瞬でオダブツだ!早くロープを解いて逃げないと!」水ならば、浸かるまでの猶予があるが爆発だったらそう言ってもいられない。

「でも、どうやって…」瓜が冷や汗の表情で言う。さっきまで何をやっても解けなかったんだ。今この場で何をすればいいのだろうか!?寿は必死に頭を回転させて、逃亡の一手を模索した。そして、はっとしたように目を開く。

「そうだ!木原君がいっつも持ってるアニメのフィギュア!あれにカッターみたいな鋭い部分ありましたよね。あれを使えばロープを切り落とせる筈です!」さすがヲタクといったところか。寿は起死回生の一手に笑みを浮かべる。それとは裏腹に瓜は怪訝そうな表情を浮かべ、

「えぇ〜!やだよこんなきたねぇロープに触れさせるなんて」と反論する。何故コイツはこの期に及んでこんなことがどうして言えるのだろう?イライラした寿は

「ふざけないで下さいよ!フィギュアと命どっちが大事だと思ってるんですか!?」と怒鳴る。

「フィギュア」何食わぬ顔で言った瓜を寿は無言で叩き、フィギュアを取り上げると、ロープを切ってゆく

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜いやだぁぁぁぁぁぁぁ〜」瓜の悲鳴が響き渡る頃にはロープは切り落とされていた。完全に思惑通りだ。寿は急いでドアに向かう。が、鍵がかかったドアは全く開こうとしない。

「そういや、木原君、声優の事務所張るために中に入る目的でピッキングやってたんですよね!この扉開けて下さいよ!」寿が叫ぶ。しかし、瓜は完全に放心状態になっていて、応じようとしない。どんだけ大事なんだよ?寿は仕方なくもう一度叫ぼうとした。しかし、次の瞬間装置から、爆発音が響く。瓜もようやく我に返りはっとして扉に向かう。それを見た寿は装置の前で横たわる原の元へ行き、

「アンタも早く脱出するんだ!」と言う。だが、原は

「もともと俺は死のうと思って来た。行きたければお前らだけで行け」と覇気なく答える。

「死んだら、もうなにもかも終わりなんだぞ!!」

「フン、生き続けて何になる。俺にあるのは莫大な負債だけだ。それを返すために人生全てを充てて何が楽しいって……」

「違う!!アンタは死んではいけない!」寿の叫びに、原が目を丸くする。

「アンタは自分の野心を満たすためにヲタク達を叩き潰そうとした。さらに、公共の物を悪用したり権力の傘の下で残忍な行為を繰り返して来た。だけど、少なくともアンタのお陰で助かってきた人だっている!理由はどうあれアンタの考えたアイデアで今までの区は結果的にいい方向に向かっていっただろ!?それを考えればアンタは命を捨てる必要は無い!負債は今まで苦しめたり不快にさせた人への罰金だと思って返していくんだ!いつか必ずやり直せる筈だ」寿の言葉に原は、

「ヲタク………」と呟き、黙っていた。そして、少し間を開けて口を開く。

「ありがたいが、もう限界だ。…吾川寿だったな。聞いたことある名前だと思ったら、この前の大学受験の模試で全教科満点を取ったと話題だった少年の名だ。そんな奴が根っからのヲタクとは。人生は本当に分からないものだ。もう少し、様々なものに目を向けて生きていくべきだったと私は思ったよ…」原はそういうと、目を閉じ動かなくなった。死んだのかと思い、思い切り揺さぶるが幸いまだ、息は残っていた。

「オーイ、寿!開けたぞ!」扉の前から瓜の大きな声が聞こえる。寿も思い切り叫ぶ。

「木原君!!!コイツ運ぶの手伝って下さいよ!」これを聞いた瓜はぎょっとして

「ハァァァ!?こんな過齢臭が漂ってそうなジジイ運ぶの!?自殺したいって言ってたしほっとけよ」と反論する。

「いいから、手伝って下さいよ!そんなに、命を無視すると後で祟られますよ!」結局寿と瓜は二人がかりで原を運ぶことにした。腹が大きく出てる原はむちゃくちゃ重い。かなり、スローペースで運んでいた二人だったが装置がさらに大きな爆発音をたてたのを聞き焦り始める。

「まずいな…。木原君急ぎましょう!」

「完全に爆発したら、確実に死んじまう!やっぱりコイツは捨てて逃げよう!」

「それは駄目です!」 とにかく急がなければならない二人は足速に扉の向こうの出口を目指す。そして、二人は何とかビルの外に出ることに成功した。助かった…。次の瞬間、ビルが大きな音をたて、一瞬にして崩れ落ち、辺りは火の海になった。二人は通行人が爆発したビルに目を向けるどさくさに紛れて、原を歩道の端に置くと、路地裏に逃げ込んだ。二人は息を切らしへたりこむように座った。

「危機一髪だったな…」荒い息で瓜が呟く。

「えぇ、後少し遅ければ今頃火の海の中ですよ…」寿も目を虚ろにして答える。

「原はどうするんだ?」

「あそこに置いておけば誰かが救急車を呼んでくれるでしょう。まぁそれからの人生は彼次第ですよ。」

「にしても、寿が原に自慢したせいでこのことに巻き込まれるなんよ〜」

「何言ってるんですか!もとはといえば木原君が愚痴るのが悪いですよ!」

「それはお前が…」

「だって木原君が…」

「フッ、ククク」

「アハハハ」二人は何か凄いことを成し遂げた気がして二人は笑い声をあげる。

「しっかし、こんなことが出来るんだな!ヲタクの俺達であの自明党お抱えの役員を倒してアキバの街を守ったんだからな!もしかして俺達が本気出せば東京だって征服出来たりして…」瓜が面白気に言うと、寿ははっとしたように黙り込む。

「いや、冗談だって!」瓜はそんな彼を見て訂正する。しかし、寿は、

「いや、できる。出来ますよ、東京征服。僕たちが東京の政治、経済、なにもかもコントロール出来るようにするんですよ!そうすれば、僕たちが東京を征服したことになります。話だけは馬鹿げてるけど、かなり刺激的で最高の考えですよ!僕等ヲタクでもこんなことも出来るって世間をあっと言わせてやりましょうよ!」そうだ、これが何か楽しいことなんだ!寿は狭い路地から青空を見上げる。見果てぬ未来に何かを託して。

「よし、吾川隊員!東京を何物かが狙っています!何とかしないとマズイでよ!」

「分かりました!そいつらを倒し、僕等が東京を征服して守るための作戦を決行します!コードネームは…『東京征服計画2007』!」こうして、野心家ヲタクの東京支配の稼業が始まった。しかし、二人がこの計画が東京に棲む様々なもの達が絡んでいく要素になると気付くのはまだ先のことである。《続く》


‖次回‖

ヲタク、ヲタクって馬鹿にしやがって!お前らの作ったギャルサーの方がよっぽど馬鹿げてるだろ!

mission2アキバ系って・・・てめぇらだってシブヤ系だろ(怒)


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