スペーラ使節団 Side:C -10-04-
「国民の中から代表を選出って……大統領制?」
「いや、どっちかっていうと日本っぽい感じ?12人の議員を選出して、その中から首相を決めるんだと」
シズネの疑問にエイダイが答えていく。
「エイダイがそんなことに詳しいと不気味ね……」
「これでも一応社長だからな。いろいろあるんだよ。政治家のオジサマたちとも仲良くしないといけないの」
「社会の暗部……」
「すみません。首相はもう少しで来られますのでしばらくお待ちください」
面会室?のようなところに通されて20分。秘書らしき人がお茶を出しながら述べる。
「首相ってどんな人ですか?」
「まあ、はっきり言うと……有能だけどバカな人と言いますか」
本当にはっきり言われた。
「まあ、仕事は早いのでいいですが。あ、そろそろ来られますね」
腕時計を確認したあと、扉の方を見る。
すると謀ったようなタイミングで扉が開き、一人の男が現れた。
「お前たちがスペーラの使者?予想よりはるかに若いなぁ。オレはこのマーレ=アシア国の首相・アマート・クラムだ。で、これは秘書のオリエッタ・コラル。以後よろしく」
「ギルド代表でスペーラ代表代理兼スペーラ商業組合の代表代理としてきました。エイダイ・キシタニです。そして、隣は自警団副代表のシズネ・ヒビキ。その隣が魔法研究機関の所長代理のヴィクターとゼオンです」
気持ち悪いぐらい淡々と自己紹介を進めるエイダイ。
「それで、単刀直入に聞くが今回の目的は?」
「まあ簡単に申しますと友好と貿易ってところですかね」
「なるほどわかりやすい」
「それではこちらの資料をご覧ください」
いつの間にか用意していた資料を秘書と首相に手渡す。
『そんなものいつの間に用意していたんだ?』
ゼオンが質問する。
『昨日の夜暇だったからヴィクターと創った』
『昨日の夜って飲み明かしてたんじゃなかったの?』
『なんかテンションあがっちゃってさぁ』
『小学生か……』
「いくつか質問いいか?」
アマートが声を上げる。
「友好と貿易については問題ない。双方に利益がある。まずギルドとやらだが……」
「たとえばですね。モンスターが異常繁殖して討伐に自衛組織だけじゃ足りないなんてときに依頼を出してもらえればスペーラの冒険者たちがモンスターを狩りに来ます」
「なるほど。討伐隊を募るよりも安いようなら利用させてもらう。ではこの学園というのは?」
「ヴィクター頼んだ」
「無償で魔法や基礎の教育を行う機関で、現状では200名ほどの生徒を募集する予定だ。内容は魔法とそれに関するいくつかの項目、武器取扱い、数学、歴史ぐらいの予定だ」
「たしかに魔法の才を伸ばせるならそれは素晴らしいことだな。まあ、それも議員の息子あたりから順に募集をかけてみようか。最後に、この招待状なのだが」
「実は4日後にスペーラでお祝いというか祭を行うことになりましてね。各国の代表を招いているんです」
「それで、オレにもお呼びがかかった、と」
「まあそういう事です」
「4日後から3日間か……オリエッタ、スケジュールは大丈夫か?」
「全く問題ありません」
全く問題ないって、逆に不安になる……。大丈夫なんだろうかこの国。
「じゃあ明日にでも出発しようか。スペーラまでは船で丸一日だ。護衛として何人か選んどいてくれ。あまり多いと先方にも迷惑だから最小限で頼む」
「わかりました」
「うちからも警護に自警団を一隊つけさせると代表から連絡がありました」
それも含めて構成するように指示を出すアマート。
「すまんな。これから議員たちと会ってこの話をしないといけないんだ。それと数日分の仕事を纏めて片付ける。明日の10時に港のフリジブーナ・デア号の前に来てくれ」
アマートはそういうと部屋を出て行った。
「話は早く終わるのはいいんだけど、資料とか作ってるんだったら先に言っといて」
「ああ、スマンな」
「ところであの男の警護に着く隊ってどこだ?」
「1番隊」
「何それ!?聞いてないんだけど」
「アマート首相アーシア寮602号室に泊まるらしいよ」
「「えー……」」
シズネ(601号室)とゼオン(604号室)があからさまに嫌そうな顔をする。
「アーシア(水の女神)信仰してる人たちをヘスティア(火の女神)の名前付いた寮にとまらせるのはなんか微妙だろ?」
「4階じゃダメなのか?」
「セキュリティが強くなるのは6階からだ。それに国賓だからあまり粗末な部屋だと問題があるだろう」
ヴィクターが正論を述べる。
「まあ、いつまでもここにいるわけにもいかんから、宿に戻ろうぜ。ハルトに報告もしないといけないし」
「ハルトに文句言わないと」
「ほどほどにしてやれよ」




