形式は無用 -01-04-
さびれた様子と反して、冒険者で溢れかえるこのおかしな村の外につながる門へと歩きながら、スキルポイントの割り振りを行っていく。
当分の間ギルドはもちろんの事、このゲームの醍醐味である多人数パーティ(最大8人)プレイも私にとっては全く縁のない話だ。
とにかくソロで生きていけるように《索敵》や《気配》など補助系のスキルにポイントを振り分けていく。
剣のスキルを上げてもいいのだが、チュートリアルが終わってもらえた短剣は、剣スキルでは扱えないらしい。
まともな剣を手に入れるまで、スキルはいらないだろう。
私は腰に差した錆びた短剣を見ながらため息をつく。
このゲームでは武器にあったスキルがない場合、その武器の特性が生かされなくなる。つまり、私がこの状態で短剣を使った場合『切断』という特徴が生かされず、ただ殴りつけるだけの武器となる。
適当な振り分けが終わったところで、村から出、他のプレイヤーたちのいないフィールドの隅の方へと向かう。
最初に私が出会ったモンスターはチュートリアルでも戦ったスローラビット。
ただし10体。
何某かの悪意を感じる。とりあえず、戦闘の準備を始める。
チュートリアルで戦った奴は適当に使った火の魔法一発で倒せたけど……。
試しに火球を撃ち込んでみるが、HPバーの3割ほどを削っただけだった。
仲間への仕打ちに怒ったのかウサギたちの反撃が始まる。
四方から仕掛けてくる体当たりをなんとかよけながら、隙のあるウサギに蹴りを叩き込む。
罪悪感を覚える悲鳴を上げて転がるウサギ。《蹴り》スキルの効果なのか、STRが高いからなのかウサギのHPは7割近く削れた。
魔法にそれほど威力のない現状では、叩いた方がいいかもしれない。
ということで、大きめのウサギたちを片っ端からボコボコにしていく。動物愛護団体に訴えられないだろうか。
短剣での攻撃は打撃扱いになるのかスキルの効果でかなり威力が高かった。
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EXP +60
ウサギの毛皮×5
ウサギの肉×4
ウサギの爪×2
130G
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ウサギ系のアイテムは一通り手に入ったようだ。
この戦闘によってレベルが上がる。これだけ無理してるのにレベルが上がらなかったら嘆くけど。
得たスキルポイントは、入手できる見込みのない剣には使わずに、火系統の魔法を中心に使えるスキルを上げていった。
とりあえず火魔法を試し打ちするために相手を探す。
茂みの奥の方にスライム3体を発見したので奇襲をかける。
物理攻撃がまるで効きそうにない…。
というかそもそも触りたくない…。
私はすぐにファイヤーボールでスライム1体に80%ほどのダメージを与えた。
これがスキルレベル11の威力か…。ただしスライムたちもやられっぱなしというわけではない。3体とも一斉に私めがけて体当たりを繰り出す。回避もできたのだが、あえてスキルレベル10ぐらいで使えるようになったフレイムシールドを使ってみることにした。
半径1メートルほどの紅い魔方陣が私とスライムの間を隔てる。MPを溜め終わると魔方陣は燃え盛る炎の盾となった。
3体とも火の中に突っ込みダメージを食らう。そのうち1体は消滅した。
間髪入れずにファイヤーボールの連射でスライムを片付ける。
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EXP +21
スライムゼリー×3
45G
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調子に乗って魔法を使いまくったせいで、MPがかなり減っていた。そういえばMP回復用のアイテムは持ってなかったような気がするし、一度帰って回復してみようか。
帰る道すがら、雑草の如く生えている薬草をぷちぷち引き抜きながら帰る。
ポーションに加工しなくてもこれ自体に回復の効果があるが、引くほど苦いらしい。
部屋にいるだけでHP、MPが回復するらしい宿屋で苦い薬草から苦いポーションへ加工する。
先ほど採った薬草(どう見ても雑草)と宿でもらった井戸水を《生産:道具》を使って合成………失敗。まあスキルレベルが低いからこんなものか。
合成………失敗。
合成……………失敗。
合成…………………成功。
できたのはHPポーション×1(HPを30%回復)と謎の液体×1(20%の確率で状態異常付与)、生ゴミ×2。謎の液体は武器になりえるのだろうか?
とりあえず生ゴミ×2を破棄して、私はポーションを作る。
スキル《生産:道具》を使っているのでMPの回復は遅れたが最終的には30個の薬草を消費して12個のポーションを作成。
どうやらスキルの使用で生産に成功すれば経験値を得ることができるようで、HPポーション作成3×12でEXP 36を得た。うん、レベル上がったこんなホイホイ上がっていいもんかと思うけど。
まさか経験値がもらえるとは思ってなかったから最後の一個ができた時にファンファーレがなってびっくりした。とりあえずスキルポイントの割り振りは保留。
途中でできた生ゴミを纏めて破棄し、部屋を出る。
目指すは村長宅。とりあえずまともな武器が欲しいのでクエストでお金を稼いで、次の街でまともな武器を買おう。この村ではクエストを発行してくれるNPCは村長だけなので村長宅には多くのプレーヤーがいた。できるだけ目立たないようにクエストを探す。
ゴブリン討伐 報酬:500G
ウサギの毛皮納品 報酬:450G
薬草納品 報酬:200G
とりあえずゴブリン討伐とウサギの毛皮納品を受け、早速ウサギの毛皮を納品する。ウサギの毛皮は売却しても60Gほどにしかならないので5つで450Gとはなかなか良い条件だ。しかもクエストはクリアすることで若干の経験値を得ることができる。
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報酬:450G
EXP +14
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とりあえずクエストのゴブリン討伐に精を出すとしようか。
先ほど入手したスキルポイントを割り振る。
ゴブリン探しに向けて《索敵》を6上げ、ついでに意外と役立つ《気配》《回避》にも6ずつ、《打撃》《蹴り》に9ずつ振り分けた。
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スキルが進化しました
《打撃 LV 30》+《蹴り LV 30》→《近接格闘 LV1》NEW!
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なんかでた。
スキルの説明は『己の体を武器に闘うあなたに…』って何コレ…。
暑苦しい…。スキルスロット1つ空いてしまったので、適当なスキルで埋めないと、万が一ゴブリン狩りでレベル上がったら、所得できるスキルポイント減ってしまう…。
いったん帰ってスキルを入手するべきかな?ちなみにスキルはスキルショップで買うか、先ほどのように進化させるか、イベントで入手できる。【始まりの村】にスキルショップはないが、初心者向けのスキルのみ商店で買える。一度索敵して、敵が見つからなければ出直そう。スキル《索敵》を使い、周囲を見渡す。
すると…NPCを表す緑のシンボルがモンスターを表す赤いシンボルに囲まれていた。
これは助ける系の突発型イベントだろうか…?とりあえず近づいていくと、巫女さんがゴブリン3体に襲われていた。
私は《気配》で気配を消し、ゴブリンを背後から《近接格闘》で攻撃。すぐさま光の粒子に代わるゴブリン。そのままファイヤーウォールで巫女さんとゴブリンの間に壁を作り、残り2体もすぐに倒す。
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EXP +33
※イベント戦闘のためドロップアイテムは発生しません
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「危ないところをありがとうございます。お礼にスキルストーンかスキル差し上げたいのですが…」
「スキルでお願いします」
「わかりました」
『スキル《舞》を会得しました』
また不思議なスキルを入手したようだよ…。
《舞》…パーティ全体の状態異常回復・各種エンチャントの効果有
超補助系スキルだったけど…私パーティ組めないじゃん。でもエンチャント系の魔法スキルはまだ見つかってないみたいだから、バレたらますます追い回されるね私。
それと、スキル取得した時になんか称号も取れた。
〈祈りを捧ぐ者〉…良い効果の確率を10%上昇、悪い効果の確率を10%下げる
つまり体力を30%の確率で回復みたいなのは40%になって、30%の確率で毒みたいなのは20%になるってこと?まあ意識してつかうことはないでしょう
懸念していたスキル枠も埋まったことだし、ゴブリン狩りに行こう。さっき倒した奴らもカウントされてるみたいだから、あと7た…3時の方角に4体の発見!
さっきと同じ方法で接近し、倒す。一度攻撃すると《気配》スキルは解除されるので、迷わず魔法に切り替え。だって蹴ったり殴ったりするのってそれなりにフィードバック来るんだよ?無事4体を討伐完了。
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EXP +44
小さな骨×3
壊れた斧×1
68G
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ついでにレベルも上がったようだ。
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ベル
LV 1 → LV 4
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ステータス表示若干変えました。
11/11 訂正+描写追加