姉/兄の責任 -Hidden Story-03- After:-07-02-
「ふぅ……」
隊員の去った1番隊の詰所でシズネは小さなため息をついた。
シズネという女性は三姉妹の長女という事もあってかなりしっかりした女性だ。そのシズネがため息をつくという事象を目にしたエンマは、異常事態だととらえた。
「疲れているのか?」
「え?ああ、すこしね」
「こちらの生活に慣れないか?」
「そういうわけでもないんだけど……。三姉妹の長女ともなると心配事が三倍なわけで」
「カナデもオトハもしっかりしていると思うが」
エンマは部屋に置かれていた何の茶葉かわからないお茶を入れ、シズネの前に置く。紅茶っぽい臭いがするからたぶん大丈夫だろう。
「カナデはまあ基本大丈夫なんだけど、鈍いっていうか……。オトハは暴走するし、それにあれでもまだ中学生なんだし、」
「なるほど、お前の苦労はわかるよ」
「エンマは兄弟とかいるの?」
「5つ離れた妹がいる。まあ、あまり手のかからない奴だが、兄としては心配なものだ」
「ちなみに妹さんはこっちの世界に……」
「いるぞ。こっちに来てから一度も話しかけてこないが、何度かメールは来た」
「エンマに妹がいるなんて……すごい意外」
「そうか?」
そういいながらお茶を一口飲む。自分の知っている茶と同じ味がする。詳しくはわからないがアールグレイとかそんな感じの香りだ。
「5つ下ってことはオトハと同い年ね。どんな感じの外見?」
「獣人だったっていう事しか覚えてないが……そういえばお前に会いたがってた」
「なんで?」
「短剣マスターのお前に憧れてたとか」
「マスターっていうほどでもないけど……何て名前?」
「モエっていうプレイヤーだ。たしかどこかの隊にいたと思う」
「今度確認してみるよ。少し話したらすっきりした。ありがとう」
「オレの話しかしてないように思えたが」
「いやいや、同じような立場にいるのが自分だけじゃないってことがわかって少し楽になった。まあよく考えればゼオンのとこもだけど」
「そうか。力になれてよかった」
「どう?この後お昼でも」
「そうだな。一緒に行こうか」
そう言ったとき、ドアが開きエイダイが顔をだす。
「エンマ。これからヨウたちと飯行くんだけど……」
「悪い。今日はシズネと食べる約束をしていてな」
あー……ごめん。と言ってエイダイはドアを閉めた。ドアの向こうで何人かぎゃあぎゃあ言ってるのを必死に抑えている様子のエイダイ。やはり、こういう微妙な気配りのできる男になりたい。
「それじゃあ、どこ行く?」
「ロブの出してる系列の和食屋とか行ってみようか」
「さんせーい」




