スペーラ使節団 Side:B -09-03-
「さて、オトハ達も出たみたいだしそろそろ僕たちも出ようか」
「カナデさんの転移一回経験してみたかったんです。どんな感じなんですか?」
「どんな感じって聞かれても、転移門とそんなにかわらないよ?」
テンション高めのクロエに返答しながら魔法陣を展開する。
「これが時空の魔法陣?なんか他の8系統とは複雑さのレベルが違うね……」
「無系統の魔法陣はこんな感じですよ?」
今まで魔法陣の比較なんてしたことないからいまいち会話についていけない。どうやらレイさんもそうらしい。
「因みに定員は何人?」
「現状だと10人ぐらい?この前7番隊全員転送できたからまあ大丈夫ですよ、たぶん」
「最後の『たぶん』が怖いんだけどね」
視界が光で覆われ、もう何度目かの門が目の前に現れる。
「ここは?」
「街のど真中でもよったんですけど、さすがに警戒されるので門から入ろうかと思って」
「誰も使わない門から入ってきたら警戒するけどな」
声の方を振りかえると、いつもの鎧ではなく騎士服をきたエルバートが立っていた。
「カナデさん、この人は?」
「騎士団副団長のエルバートさん」
「初めまして。スペーラ自治領代表のハルト・オダです」
「レイさんレイさん。ハルトさんの苗字って『オダ』なんですか?じゃあなんで『mori』なんてプレイヤーネーム使ってたんでしょう?」
「さあ?今度本人に聞いてみて」
謎は深まるばかり……。
「副団長エルバート・ヘカートだ。ついてきてくれ、教皇様が待ってる」
3度目のメンシスへと入る。街灯で照らされた石畳の道を歩き、街の中央に位置する神殿に向かう。
多くの信徒?が祈りをささげる神殿を通り抜け、奥の教皇の部屋へと案内される。
「よく来てくれたスペーラの代表。カナデも久しぶりだな」
執務机の椅子に座ったままステラが出迎える。
「私はステラ・ヘカート。この神殿信仰中心の国のナンバー1。教皇だ」
「スペーラ自治領代表のハルト・オダです。それと、右からギルド副代表のカナデ、魔法研究機関副所長のクロエ、商業組合副頭取レイです」
「若いな全員……カナデだけかと思ったら全員成人して間もなくと言ったところか」
「こちらの暦で数えると僕でだいたい17です」
「信じられんな……。私でも若すぎると批判があったというのに」
「ステラ教皇が教皇になられたのは最近なのですか?」
「ああ、去年先代が死んでな。私が16代目ステラ・ヘカートを継いだ。今年で22になる。後ろにかかってるのが死ぬ寸前の母の肖像だ」
そこに移っていたのはステラ(XVI)にそっくりな若い女性。
「先代は若くして亡くなったのですか?」
「いや?これで100歳は超えていたらしい。よくわからんがうちの家系は少し神の血が混じってるらしくてな。まあ私の事ばかり話しても面白くないだろう。聞く話によると君たちグロリア城を落としたらしいな」
「耳速いですね……」
ハルトが若干俯きながら答える。
「私だけに限らず各国のトップが他の国にスパイ潜らせてると思うぞ」
「そんなもんですか……まあ、とりあえず神殿解放の件ですが」
「そちらの冒険者ギルドに正式に依頼を出そう。これでいいんだったな?」
「はい。では次に」
「そちらから鎧一式と対アンデッド用の武器を100セットほど頼みたい。それと一般の行商人がそちらに船で入れるように手配を頼む」
「了解しました。とりあえず武具はでき次第転移門で運べばいいですか?」
「……そちらの職人は転移門が使えるのか?」
「転移門って誰でも使えるんじゃ……」
クロエが質問する。
「いや、魔力が低い者には反応しないらしい。具体的な度合いはわかってないが」
私たちはLV 1で使えてたけどこちらの人はそれよりも低いのだろうか?それともLV 1でも使えたのはゲームの中だけの仕様だったのか……。
「具体的な設計などもかねて一度職人をこちらに送ります」
「わかった。ではこれでサインしようか」
「もう一つ。実はうちの領内で学園を開くことにしまして」
「ほう?」
「無償で魔法を教えようかと思いまして、こちらでいくらか試験をしますが、対象はある程度魔法の才のある12歳以上の子供で」
「なるほど。国力の向上に役立ちそうだな。と言っても魔法をまともに使える子供なんて少ないぞ?」
「それは何とか判別しますよ。それよりメンシスの方で歴史なんかを教えられる神官はいませんか?」
「歴史?神代の時代からの者でよいなら……そうだな、エルバート行くか?」
「は?ちょっと待ってください!私には副団長の仕事が」
「そうだよなぁ……じゃあ神官の優秀な奴適当に選んどいてくれ」
「それは私の仕事ではないのですが」
エルバートさんも大変だなぁと思って眺める。結局私たちがここに来る意味はなかったのでは?
「気にするな。では、その用紙にサインしよう……変わった羽ペンだな」
「持主の魔力をインクに変換します。魔力の痕がわかるので偽造は基本的に不可です」
「なるほど。一つ欲しいな」
「よければ差し上げますよ?」
自分のサインをしたあとコピーを取り原本と一緒にステラに手渡す。
「最近貴族共の中に調子に乗り始めた奴らがあるからな、これでしっかりと誓約書でも書かそう」
ステラ教皇はご機嫌であった。
「カナデさん。この国の身分制度ってカーストみたいな感じなんですかね?」
クロエが私に訪ねる。
「王はいないみたいなこと聞いた気がするけど。ヘカートの家系が代々司祭とかなのかな」
そんな話をしていると窓の外を見ていたレイさんがつぶやいた。
「神官の服いいかんじね。カナデちゃん作ったら着る?」
あの布が果たして服と言えるのか…。
「いえ……あっ!そうだ!ああいうのはシオンの方が似合うんじゃ」
「なるほど一理あるわね」
回避成功。
「一理あるわねじゃなくてね、観光に来たんじゃないんだって」
「いやぁ、ハルトさんが一人でやっちゃうから私たち要らないんじゃないかと思って」
「「そうそう」」
「いちどお前たちの自治領にも行ってみたいな」
「是非来てください」
「教皇様もカナデさんも自由すぎるから」
エルバートさんもかなり困った表情をしている。
「ステラでいいぞ。お前たちとはすでに対等だ」
「その辺の国の王様全員呼んでお祭りでもしましょうか」
「私も他の王に顔合わせせねばならんし、その時は是非呼んでくれ」
レイさんに確認を取る。ハルトは何か言いたそうな眼をしているが気にしない。
「予算とかの都合シェリーに相談してみるわ」
「お願いしますレイさん」
「そこまで気楽に接していい間柄じゃないと思うけど」
男二人は部屋の隅でため息をついていた。




