王の苦悩③ -08-08-
フロール王 ライナルト・フロールはいつも通り悩んでいる。
今しがた自治領の代表を名乗る者たちがやってきて、近衛も含めて騎士団は全滅させていった。
……たった4人で。
補足すると、厳つい歴戦の戦士でもなく、年老いた魔術師でもなく、まだ若い少女たちに。
しかも、ヒューマン?とエルフ?と獣人?という不思議な組み合わせで。
大陸でもなかなかの強さを誇る我が国の騎士団が一瞬でやられてしまった。
目撃した貴族連中もさすがにもうこれ以上手を出そうとはしないだろう。
むしろこちら側から頭を下げて国交していかないと本当に潰されてしまう。あの娘たちなら本当に5分でこのグロリアの都を消し飛ばせるだろう。
メンシスに送った諜報部隊の話によるとメンシスの老女教皇が正式に自治領の独立を認め、貿易までするという。
完全に出遅れた。あの連中の使う武器が騎士団全体にわたればかなりの脅威になるだろう。こちらとしても急いで追いつかなければ……。
とりあえずアジェール家は取り潰してもう少しまともな奴を交渉に当たらせなければ……。
あの街を味方にできるかどうかはこれからの国の発展に係わりそうだ。見たこともない武器に、見たこともない威力の魔法。極め付けには神の域に抵触しているあの転移の魔法。
街にある転移門は古代文明の遺産であり、街の中に転移門があるというより、転移門の周りに街ができたといっても過言ではない。今となっては失われてしまった技術。それを人間?の身一つでやってのけるのだから只者ではない。
とりあえず明日は……屋根の修理からとりかかろうか。




