第二次サイフラ戦役 -08-06-
「さて、みんなに集まってもらったのは…もうわかってると思うけど門の外の騎士だよ」
「会議なんてしてる暇あったら対応したら?そろそろ魔法ぶっ放してくるよアイツら」
エイダイの言葉にキクロが対応する。
「いえ。魔法を撃ってきてもオートで反射するので大丈夫です」
どうやら魔法珠の実験は成功しているらしい。
「と言うわけだから、余裕はあるんだよ。このまま攻められっぱなしても面白くないからこっちから攻撃してやろうかと思って」
「こっちから手だしたら完全に侵略行為だがな」
エンマさんが少し楽しげに述べる。
「まあとりあえず外の対応はエンマとシズネさんに任せる。で、」
「私とカナデおねーちゃんは王都に乗り込みます」
「は?」
意味が分かりませんよ。
「王城落とせば勝ちでしょ?」
果たしてそんな単純な問題なのだろうか…。
「というか2人で行くの?」
「私(LV69)と私の腹心(LV66)とお姉ちゃん(LV46)とシオンさん(LV42)の4人だけど?」
「少なすぎない?」
「余裕だね!」
「まあとにかく2人は転移門で王都に向かって、エンマとシズネさんは手早く消してきて」
「「「「了解」」」」
「やっと出てきたか」
「すまんな。たいした相手でもなさそうだったのでゆっくり支度してきた」
エンマが悠々と歩きながら返す。
「まあいい。一応名乗っておこうオレはアルバール・ナビス。3番隊隊長だ」
「フォルクなんたらってやつじゃなかったのか」
「あいつはなんかダメージでかかったらしくてなぁ…腹立つ奴だったけど剣の腕は確かだったのに」
「それじゃあこちらも名乗ろうか。俺は自警団団長エンマ。こっちは副団長のシズネ」
「イフリートにウンディーネとは…女!映像で見たフォルクハルトを潰した指揮官じゃないのか!?」
「いや。似てるけどアレ妹」
「しかし、映像の女はウンディーネではなかったようだが…」
「まあいろいろあるのよ。でも血は繋がってるから」
「いったいどういう…いや、そんなことはいい。既に魔術師たちが準備を終えている。いつでも魔法をうて「撃ちたいなら撃てばいい」は?」
「お前らごときの魔法で城壁が破られるとは微塵も思わない。どうぞ撃ってくれ」
「く…後悔しても知らんぞ」
アルバールは背後に控える部下に合図を送る。5人の魔術師たちが一斉に火球を放つ。
城壁に触れた火球は、空間にできた波に飲み込まれ、もう一度現れた波から発射された。
来た道を戻り、魔術師たちが立っていた場所に迫る火球。
「なにぃ!?」
「だから言っただろう。その程度の魔法では無理だ」
「宮廷魔術師っていうからちょっとは使えるのかと思ったけど、ダメね」
「「本当の魔法を見せてやろう(あげるわ)」」
エンマの眼前に展開された巨大な真紅の魔法陣。
シズネの眼前に展開された巨大な深青の魔法陣。
相反すると思われた二つの魔法陣を重ね合わせ一つの魔法にする。
「イフリートとウンディーネでもここまでの術は…」
「隊長。逃げましょう」
「…総員撤退だ」「総員撤退―!」
「火神の悪戯」「零度の世界」
「「炎獄を纏う凍獄!!」」
アルバールが見たのはたぶん地獄だった。
撫でるだけで燃え上がるような灼熱の風を吹き出す炎とすべてを凍てつかせる悪魔の息吹がどういうわけか共存している。
平原だったところは凍てつき、燃え上がり、砕け、消し炭となっていく。
こんな現象は見たことがない。
それは地獄としか形容できない。
そんなことを思っていた矢先、
自分の右半身が凍てつくのを感じた。自分の左半身が焼け焦げるのを感じた。
「騎士団って言ってもこんなもんか」
「予想の10倍は弱かった気がするわ」
周囲に敵の影が残っていないことを確認しながらシズネが続ける。
「まあしかし…ちょっとやり過ぎたわね」
「樹の魔法使える奴に直させようか…」
「そうね。ま、とりあえず帰りましょう」
周辺一帯をまんべんなく破壊した2人はゆっくりと自分の街に向かい始めると、ハルトから念話を受けた
『やり過ぎだよ』
「なんだハルト。見てたのか」
「それより妹二人の調子は?」
『極めて順調だよ。既に王城の門は突破したらしい』
「たかだか城一つ落とすのに4人も送り込むなんてオーバーキルにもほどがある」
『まあその気になれば一人でやれるよね。あの4人』
「今回はオトハ+制止役3人って感じだと思うが」
「カナデには止められないだろうなぁ…ルイがどれだけ頑張ってくれるかにかかってる」
『まあできるだけ壊さないように言ってるから大丈夫だと思うけど』
「まあ最悪城ぐらい落ちても大丈夫でしょう」
「…いやダメだろ」




