白と黒の刃 -08-01-
新章突入&今年最後の更新 (たぶん)です
日間ランキング19位…動揺を隠せない(((・・;)
50万PV&5万ユニークありがとうございます!
会議のあとヨウジさんに刀をどうしても見せてほしいと頼まれた私は、一晩限定で貸し出すことにした。
そして、受け取りに向かっている。職人区のお店に興味があるというシオンを伴って、石畳の道を歩く。組合本部の正面に構えられたヨウジさんのお店に向かう。
武器専門店・鋼の鳥。こんなにいい立地条件にあるにもかかわらず、ほとんど客が入っている様子はない。外観も綺麗で、女性でも抵抗なく入れるような店だが、客が入る様子はない。
その理由はこの店が特殊な武器しか取り扱ってないからだ。店主であるヨウジさんは何故かその類の武器しか作らない。腕はすごくいいらしいが、何分彼の創った武器を扱える人は限られてくるため詳細は不明だ。
「おはようカナデさん、…と」
「シオンです。初めまして。7番隊で副隊長をしています」
「そうか。よろしくね。ちなみに得物は」
「大鎌です」
「大鎌!いいね!是非じっくり見せてほしいところだが…まずはこの刀を返そう」
白奏刀を受け取り、腰に差す。この重みがないと落ち着かなくなってきてる気がする…武士か、私は…。
「何かわかりました?」
あー、それだけど。と話を始めるヨウジ。
「無系統++の効果だけど…まず普通の系統付加だと魔力を込めると武器がその系統を纏うのはいいね?」
「「よくないです」」
即答する私とシオン。
「…たとえば火+の剣なら、魔力を込めることで若干の火系統の効果が得られる。火+++となると燃え盛る炎剣になると聞く。ただこの刀…無系統++は流す魔力によって変わるらしい」
「というと?」
「火の魔力を流したら火の効果を得るし、水なら水を得る」
「そもそも魔力で系統の使い分けなんてどうするんですか?」
シオンが質問する。
「そこはなんかこう…イメージで」
「わかりやすい説明ですね」
「しょうがないだろ。僕は攻撃魔法のスキル1つも持ってないんだから魔法を使う感覚なんてわからないよ」
試しに白奏刀を構え、光をイメージして魔力を流す。この時消費するのはMPが減ったとわかるような量ではないらしい。魔力を流してから刃に目を向けると、確かに光っている。
「ちゃんとできたみたいだね。エイダイの光+++の大剣はもっと凄まじく輝いてたけど、++だとこんなものなのかな?」
「これより光ってたらまぶしくて戦闘の邪魔になりません?」
シオンの言葉に苦笑いを浮かべながら、刀を鞘に収める。
「それで、無系統ってのを参考にミスリルと無系統の魔法石であるダイヤモンドを使って作ってみたんだけど…」
「できたんですか?」
「いや…有能ではあるんだけど無++には及ばなかったよ。でも僕の最高傑作と言える一振りができた。よかったら使ってくれ」
全体的に真っ白な白奏刀と違い、所々に黒が散った不思議な色合いの刀を渡された。
「え…でもお金は」
「いいって。ちょっとテンションあがって徹夜で打った奴だから。店に出しても買う人いないし」
「そうですか?じゃあ遠慮せずにもらっときますけど」
「その黒啓刀は白奏刀をモデルに作った武器で光++と闇++が付与されている」
「二系統も!?」
「ホントはもっと行けると思ったんだけどね…。まあ錬金術で直せないような状態にはならないと思うけど、もしそうなったときはうちで修理させてね」
「わかりました」
「じゃあ…シオンさんの大鎌を見せてほしんだけど」
「…構いませんが」
シオンが大鎌を出現させ、ヨウジに手渡す。街の中では結構邪魔になるので、シオンは街の中ではアイテムバッグに格納している。
「なるほど…闇系統がついているのかと思ったけどMP吸収がついているのか…なるほどこういう付与もできるなら…」
ヨウジは完全に自分の世界に入ってしまった。
「さて、これからどうしようか」
『カナデ!王国から騎士団が来たからちょっと対応してきて!』
姉の声で急に念話が入りびっくりする。
「え!?それって姉さんたちじゃダメなの!?」
『1~3番隊は昨日の模擬戦でしごきすぎて使い物にならないし…』
「何やってんの!?」
『いいから、急いで!最悪殺っちゃってもいいから!今動けるのは7番だけなの!何故か!』
「なぜはこっちのセリフだけど…わかったわ」
『そう?じゃあ急いで!』
はぁ、とため息をつく。
「7番隊各員に告ぐ フロール騎士団の襲来に伴い、ウチが対応することになった
戦闘も考慮した装備で全員門の外へ集合…シオン行くよ!」
「はい。すみませんヨウジさん続きはまたの機会に」
「…有事なら仕方ない。武器は使われるためにあるんだから」
潔くあきらめたヨウジに礼を言い、すぐに門の前に転移する。
確かにサイフラ平原にずらっと並んだ白銀の甲冑。フロール王国の国旗を掲げた騎士団がゆっくりと近づいてくる。
「うわ…マジでいるじゃん」
「交渉できるんですかね?というかする気あるんでしょうか」
「まあどっちにしても、こちらが悪者なんだけどね。侵略とか言われても言い訳できないし」
「…最終的に戦うことになりそうですね」
『カナデさん。ツバサです。全員集まりました。すぐにそちらに向かいます』
「早くきてね。もう目と鼻の先まで来てるから」
腰に差した2振り目の刀の感触を確かめながら、迫ってくる敵を眺めていた。




