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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第7章 自治領とその役割
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月の都再び -07-07-

転移(トランジション)を使い、西門の近くまで転移する。

やはり門の前に立っていたエルバートさんに挨拶をする。


「お前ら、絶対そっちから来るんだな…」


「一昨日振りです」


「今日は多いな…というかその服、お前軍の人間だったのか」


「いえいえ、ただの自警団です。後ろの10人は全部私の部下です。入国許可もらえますか?」


「わかった。全員ギルドカードを出してくれ」


何のことかわからず困っている後ろのメンバーに助言する。


「アイテム欄の底探してみて。いつの間にか増えてるから」


全員無事発見したそうで、カードをエルバートさんに渡し確認してもらう。


「よし、いいだろう。かなり気前のいい恰好をしているようだが…兵の目に毒だからさっさと行ってくれ。転移門は自由に使ってくれて構わない」


「ありがと。別に私たちだって好きでこんな格好してるわけじゃないんだけどね?」


門を通り、街が見える。一昨日まで開くことのなかった門から入る一団に好奇の目が集まる。


「隊長。さっき騎士の中でやたらとおびえてる人がいたんだですけど…なんかしたんですか?」


「あー…シオンが腕斬りおとした人ね」


「え?」


「まあ気にしないで」


真実を答えると、ナナミは青くなってしまったので、大丈夫だから安心するように言う。


「そういえば、みんな私の事を隊長副隊長って呼ぶけど…アレやめてくれない?なんかくすぐったくて」


「私も名前でお願いします」


「えっと…いいんですか?4番隊とかは隊長って呼ばせてるらしいですけど…」


アスカが口を開く。


「ええ、構わないけど。それに、あんまり自警団に頻繁に顔を出したりできなさそうだし…」


「たい…じゃなくて、カナデさんとシオンさんがそういうのであればそうさせてもらいます。むしろ光栄です!」


なぜか敬礼を決めるタツヤ。

下心あるのがバレバレで女子からは白い目で見られる。


「カナデさん。ここの屋台ってどんな感じの料理が中心ですか?」


モエが質問する。男子2人はテンション高めのタツヤを担いでどこかに消えた。一応13時には戻るように告げたので大丈夫だろう。


「揚げ物系?あと乳製品が多いかも」


「なんか胃に来そうなメニューですね…」


それぞれ適当なメニューを食べる。フィッシュアンドチップス的な料理があったのでとりあえずそれにした。ここのメニューはイギリスっぽいかもしれない…。


その後、市場で乳製品を大量に買い付ける。どうせアイテムバッグに入れておけば腐ったりしないので、いつかお菓子を作るために…。


13時の集合時間の10分前には既にイーリス、リゼット以外のメンバーが集合していた。さすが日本人…。その後少しして、遅れることなく、イーリス、リゼットが合流する。

さて、帰ろうかと転移門を目指したとき、エルバートさんがこちらに走ってくるのが見えた。


「よかった。間に合ったようだ」


「どうかしましたか?」


シオンが訪ねる。


「教皇様がお会いになりたいとおっしゃっている。すまないが神殿まで頼む」


懇願された…。


「みんなどうする?先帰っててもいいよ?」


「いえ、ご一緒します」


答えたのはナナミだったが、全員ついてくる気のようだ…。


「全員でも大丈夫ですか?」


「まあ…大丈夫だろう」


街の中心にあるという神殿を目指す。

神殿の外見は以前見たフロス神殿と似ていたが、装飾につかわれている色の系統が違っていた。


「ここには女神がいるんでしょうか?」


「いや、ここにはおられない。女神様の住む神殿はこのメンシス神殿ではなく、ここよりさらに東にあるといわれているフーロル神殿だ」


「あるといわれている?」


「それはだな…」


「私が説明しよう」


神殿の奥から現れたのはかなり美人な女の人。フロス神殿の巫女さんたちが来ていた服を黒くして様な服を着ている。


「初めまして。教皇のステラという。お前たちは自治領の者で間違いないな?」


「はい、私はスペーラ冒険者ギルド副代表兼スペーラ自警団7番隊隊長兼魔法研究機関第3研究室室長兼商業・金融組合錬金術部門部長のカナデと言います」


噛まずにいえた。


「どの肩書きが一番上位なのだ…」


「我々の自治領では代表の下に冒険者ギルドを設置しています。なので私の立場は実質国のナンバー4と言えるかもしれませんね」


「そうか。第4位の権力者ならば話せるかもしれんな。まずはこの国について話そう。この国は船と転移門以外の出入国ができないようになっている。原因はこの永久に続く夜と一向に減らないアンデッドだ」


「そのアンデッドのせいで神殿に行けないと?」


「そうだ。もともとこの街の東と神殿の間には村が一つあったといわれているが、今や完全にアンデッド共の巣窟になっている。女神さえ目覚めてくださればすぐに問題は解決するといわれているが…その神殿にすらたどり着けない始末だ」


「私たちに神殿を解放しろという事ですか?」


「ああ、そうだ。ノクト墓地へ行って涼しい顔をして帰ってきたお前たちならできるだろう。頼めるか?」


「…今すぐには難しいですね」


「何?」


「フロール王国との関係が不安定なこの状況では少し…そのことさえ片付けば、ギルドを通して依頼を出してくださればすぐに着手できます」


「なるほど…ならば関係が安定するまでの間待とう」


「それまでに2つ頼みたいことがあります。1つ、国として我々の自治領の独立を容認すること。2つ、神殿を守るとされる龍についての情報を探すこと」


「龍…だと?」


「ええ。私たちの伝承によると、女神が眠る神殿では龍が女神と神殿を守っていると…おそらくそれを倒さないと女神は目覚めないでしょう」


「わかった…古い書物から探してみよう。自治領の独立だが…お前たちの装備を見る限り職人たちの腕はいいようだ。ここはひとつ貿易でもしてみるか?自治領との貿易で国力が強化できれば、諸国も挙って同盟を組みたがるだろう」


「なるほど…その場合手段は船ですか?」


「そうなるな。ここを出た後ニックスとマーレの港を経由してスペーラに行くことになるだろう」


「…私の一存では決められないので近いうちに代表者と共に出直します」


「わかった。その時は念話でもいいから教えてくれ。国賓としてちゃんともてなそう」


「ありがとうございます。では今日の所はこれで」


丁寧に礼をして、神殿を出る。


「よくあれだけ堂々と話せますね…」


シオンが感心してるのか、呆れているのかわからない言い方をした。


「まあ、結果的に神殿の情報と一国家の後ろ盾、それに貿易相手まで確立できたんだから結果オーライじゃない?」


「帰ったら代表会議ですね」


なぜか無口になった部下たちを連れて、転移門を潜る。


12/29 訂正

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