7番隊親睦会⊂トラウマ -07-06-
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朝9時。比較的賑やかになり始めた朝の屋台で朝食を買う。
今日のメニューは堅いパンにハムと野菜を挟んだサンドイッチと野菜のスープ。シオンは例のお店の鶏肉入りの御粥。はやくも定位置となっている(並んで食事をする二人を眺めるために、向かいのベンチを確保するのがスペーラ流)ギルド前のベンチに腰掛け、食事をする。集合は10時を予定していたが、早くもやってきたものがいるようで。
「おはようございます隊長、副隊長」
カイト、ツバサ、タツヤの男3人。
「おはよ。まだ50分前だよ?いくらなんでも早すぎない?」
「いえ、隊長を待たせてはと思いまして」
「デートじゃないんだから…」
私の返答に顔を赤くするカイト。
「朝食まだなんですけど、何かおすすめのものはありますか?」
ツバサからの質問。すぐにシオンが粥を勧めていたが、男子的には物足りないかもしれない。
「あ、でも、スプラッタとかニガテなら食べないほうがいいかもね」
今から行くのは「墓場」だし。
え?と言葉を止める3人。それはどういう事かと質問をしてきたが、行ってみてからのお楽しみという事にしておいた。
30分ほどしてから、女子メンバーも到着したので少し早いが目的地に向かうことにした。
「まずは、パーティー登録だけど、パーティー組んでも経験値は分割されない、さらに、戦闘に関与していない分の経験値はもらえないので気を付けてね」
これは、先日の墓荒らしで判明したことだ。全員がはいと返事をする。
それから二人一組でペアを作らせる。得物と系統を考えたペアだ。
「多分これから対人戦もあだろうし…君たちにはヒトに近いものと戦ってもらいます」
「は?それはどういう…」
「まあ行ってみたらわかるから…全員私の周りに集まって」
転移の魔法陣を展開する。見たことのない魔法陣に驚くシオン以外のメンバー。
「できるだけ魔法陣の内側に入って…バラけたくなかったら」
魔法陣から離れようとしていたので、警告をしてあげる。腕一本でも魔法陣の外に出てたらどうなることやら…。全員が割とぎゅうぎゅうに詰まっている。シオンは何故か私にしっかり抱きついている。そこまでしろとは言ってない。
「転移!」
真っ白な光に包まれ、次に見た風景は月明かりだけが照らす、不気味な墓場だった。女の子はかなり萎縮している。
「あの…隊長。ここは…」
ミサキが訪ねる。
「ここはメンシス=へカテー神国とフロール王国の国境にあるノクト墓地…主なモンスターはゴースト、ファントム、スケルトン、そして動死体」
女の子たちは小さく悲鳴を上げる。男子陣も若干引いている。
「とりあえず対策として合成魔法を教えるから、さっき組んだペアでやってみて。ゴーストは物理攻撃無効、ゾンビは再生が異常に速いから魔法使えないときついよ?」
自分の手に火の魔法陣を展開しながら話す。となりではすでにシオンが光の魔法陣を展開し終わっている。二つの魔法陣を合わせ、より複雑な魔法陣へと昇華させる。
「「浄化の焔!」」
放たれた青い焔は眼前の敵すべてを焼き払い、浄化する。
あまりの威力に驚くメンバー。
「じゃあ、今からシオンがメンシス側の出口に移動するから、あなたたちはここからさっき言ったペアで、順にシオンの所まで行ってね」
ええ!?と言う声が上がる。挙手のち発言をしたのはリゼット。
「隊長は参加しないんですか!?」
「私はここで待機中のメンバーのためにバリアでも張ってるから」
「そんなぁ…」「マジかよ…」
「じゃあまずはカイトとナナミから」
緊張した面持ちで進んでいく二人の後姿を見送る。いきなりゾンビに足を掴まれてこけるが、腕を斬りおとし脱出するカイト。ナナミが火の魔法で追撃をかける。
「ああやって地面から急に湧いてくることがあるから気を付けてね。あと、光以外の魔法はあんまり効かないから」
燃えているにもかかわらず、普通に行動を始めたゾンビに顔を顰める。
「隊長。ほかにも気を付けておくことはないですか?」
モエとツバサの質問。
「ああ、えーと…「隊長後ろ!」ああ、そうそう」
背後から光の壁を無理やり突破して鎌を振り下ろすファントムの鎌を刀で受けながら続ける。
「ファントムは物理効くのは効くんだけど、この大鎌と頭の骸骨だけだから」
そういうと、大鎌を思いっきり弾き、状態を反らせ、頭を思いっきり蹴り飛ばす。
完全にこのスカートの存在を忘れていた。立ち位置的に中を目撃したタツヤとリゼットがおもいっきり鼻血を噴いた。見ても楽しいもんじゃないだろうに…。というか、タツヤはまだいいとして、リゼットはなぜだ…同性だぞ?
女子に白い目で見られているタツヤ。生理現象?なんだ!と言い訳をしている。それをツバサがあきれ顔で見ている。
『カナデさん。前のペアそろそろこっちにつきます。合成魔法もコツをつかんだようです』
「わかった。じゃあ次は…モエとツバサだったね」
行ってきます。と告げてバリアの外へ行く。その十分後にマナミと鼻血をぬぐったタツヤが向かう。
「隊長。ここってボスとかいるんですか?」
「いたよ。たぶん私とシオンで潰したからもう出てこないだろうけど」
「ちなみにどんな?」
アスカとミサキが目を輝かせて尋ねる。
「骸骨夫人って名前だったかな…スケルトンを無限に召喚してくる」
「うわ…そんなのよく二人だけで行けましたね…」
と言うアスカ。でも慣れたら余裕だけどなぁ…。
「…隊長。骸骨夫人ってもしかして、アレですか?」
イーリスが前方の奥の方を指さしながら言う。
「…出てきちゃったか…シオン!夫人がおいでになったからマナミとタツヤの救援に行く。残りのメンバーもつれていくから」
『了解しました』
ここのモンスターのレベルは平均45。対して、私とシオンを除くメンバーの平均は37。
かなり厳しいかもしれない。
既に夫人は結構な量のスケルトンを召喚している。
「リゼットとアスカでマナミとタツヤを回収。ミサキとイーリスはここから魔法で二人を援護」
「「「「了解」」」」
すぐに走り出すリゼットとアスカ。援護がうまくいっているのを確認し、
「《三重起動》ライトバリア……熾天使の息吹!断罪の宝剣!「天界の師団」!!」
同刻。シオンはすでに到着していたカイト、ナナミ、モエ、ツバサを率いて、援護に向かっていた。既に骸骨夫人の魔法を発動し、辺りはスケルトンであふれていた。
「すいませんが、私が詠唱している間、前を頼めますか?」
わかりました、と答えスケルトンを抑えに入る4人。
「熾天使の息吹!断罪の宝剣!「天界の師団」!!」
ほぼ同時に放たれた、二つの師団はその光の剣でスケルトンを次々駆逐していく。その剣を一太刀でも浴びたスケルトンは炎のように揺らめく光に包まれて浄化されていった。
その様子を見ながらポカンとしていた10人だが、カナデとシオンがボスに止めを刺して帰ってきたときには既に思考に決着がついていた。ああ、この人たちだからできるのか、と。
「予定とかなり違ったけど、これで終了ね。メンシスの街で食事でもしましょうか?」
全員がスキルポイントを割り振るのを待って、転移を決行した。
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スキル進化
《気絶耐性Ⅱ》→《気絶無効》*
《毒耐性Ⅱ》→《毒無効》*
《麻痺耐性Ⅱ》→《麻痺無効》*
《火傷耐性Ⅱ》→《火傷無効》*
《凍傷耐性Ⅱ》→《凍傷無効》*
《石化耐性Ⅰ》→《石化耐性Ⅱ》
《気絶無効》+《毒無効》+《麻痺無効》+《火傷無効》+《凍傷無効》→《状態異常無効・甲》*
*印がついているスキルはこれ以上レベルを上げられません
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補足ですが
《凍傷無効》以外の無効系スキルは前回の戦闘で既に取得していました。




