隊長不在の7番隊 -07-03-
「副隊長に質問があるんですが」
カナデが出て行った後の部屋で、シオンへの質問を浴びせたのはアスカと名乗った隊員だった。
「私にこたえられる範囲なら答えますが…」
「隊長はいったい何者ですか?」
「は?」
一瞬どういう意味か分からず首をかしげるシオン。さらに、カイトと名乗った隊員が続ける。
「オレたちは結構前線で活躍してましたが、あの人のうわさなんて聞いたことないんですが。隊長に選ばれるほど強いんだったら、耳にしないわけないんですが」
ああ、そういうことか。と、理解する。
「まあそれはあたりまえでしょう。カナデさんは第二陣ですから、貴方たちとは時期が違いますし…掲示板なんかでもかなりトップの間でしか話題になってなかったようですし」
「第二陣!?そんな奴が隊長で大丈夫なんですか!?」
タツヤが口を開く。シオンは若干イラッとしながら答える。
「ゴーレム単独撃破できる人ですから…そもそもレベルは私と同じですし」
「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」
全員の声が重なった。美しいですね。
「ゴーレムってあのゴーレムですか!?」
ツバサが食いつく。さっきからコイツら他の女の子が若干引いてるのに気づかないんでしょうか…。
「他にどのゴーレムがあると?」
ツバサがまさに絶句という顔で固まる。
「えっと質問いいですか?」
言葉を投げかけたのはリゼット。
「どうやってたった5日でそこまで行けるんでしょう」
「詳しくはわかりませんが、一緒に戦った感じからするにソロでモンスターの群れを壊滅させてたかんじですね」
今度は全員固まった。
「えっと…私もそれぐらいできますよ?」
さらに固まった。
彼ら曰く、ただでさえパーティーとして戦う専用に5体以上の同時に出て来ることが多いこのゲームでそんなことができるのか、とのことで。
「範囲魔法撃ったら一発じゃないですか」
「いやいや、その前に攻撃されるでしょ!」
シオンに食いつくマナミ。
「隠密を使えばいいじゃないですか。それとも攻撃を避け続けるとか」
無理だよ!と抗議の声。
「それに、ただの広範囲魔法では一撃は難しいかと…」
イーリスの疑問にシオンが答える。
「合成魔法って勝手に呼んでる…というかカナデさんがうちの姉と私とで開発したんですが…それを使えば一撃で十分です。たぶん使い方は明日説明されると思いますが」
「副隊長のお姉さんってウンディーネのゼオンさんですよね?」
「ええ、そうですが」
その話は特に話すこともないのでいいでしょう、と話を切り、カナデさんの話に戻す。
「そもそもギルドの代表に選ばれるような人が弱いわけがないじゃないですか」
「え…そうでしたっけ?」
驚くカイトにロード画面見てねーのかよとツッコむタツヤ。
「それに何にも選ばれなくても、あの人のお姉さんも、妹さんも有名人ですから、あの容姿も合わせてすぐに名は売れていたでしょうし」
姉?妹?と疑問が上がる。
「お姉さんはシズネさんで、妹はオトハさんです」
3姉妹揃って幹部入り…と誰かが言った気がした。
「まあ、あとのことは明日本人に聞いてください」
あ、それと、と続ける。
「明日の親睦会はちゃんと本気装備…というかたぶん悔しいことにこの制服が一番強いでしょうが…できてください。ちゃんとポーションとか補給しといてくださいね?手抜いたら死にますよ?」
笑顔での死にますよ?宣言に固まる一同。では明日10時にと去るシオン。
シオンだ去った後の部屋では残された部下たちが、言葉の真意を測りかねていた。




