王の苦悩① -07-01-
珍しく別視点。
1000字もないド短編ですが。
フロール王 ライナルト・フロールは悩んでいた。
長男、次男共に優秀に育ち、長男は先日妃を娶った。次男は騎士団副団長として優秀に働き、心配していた末の娘は先日、隣のフランマ王国の若い王の所に嫁に行った。
そろそろ長男に王位を譲り、隠居しようかと考えていた矢先の事件である。
偵察に行かせた騎士によると、元はサイフラ村という小さな農村だった場所に、巨大な街ができているという。しかも、そこへ冒険者たちが続々と集まっているらしい。
そして昨日、自治領・スペーラとして独立することが書かれた書が私のもとに運ばれた。
戦争好きの無能な軍部の貴族たちは今すぐ攻め込めというが、見たこともない魔法を使い、プリマの城壁を消し飛ばした魔術師がいるような相手とそうそう戦争できるわけがない。
いくら神のご加護によって兵が死なないからと言って、負け戦ばかりでは民に見限られる。しかし、この阿呆どもを黙らすために一度派手に負けてもらうのもいいかもしれない。
宰相、騎士団長と話し合った結果、サイフラの地域を収めていた貴族に費用を出させようという事になった。
彼の地へは騎馬で2日。それほど大きな支出にならないだろう。そもそも、我が国の騎士団が負けると思っていない馬鹿どもばかりだ。喜んで金を出す。
王宮の悪い膿を息子に引き渡す前に絞っておくのもいいだろう。
さて、件の田舎貴族・アジェール家には騎士団の部隊長を務める息子がいるようで、今回の戦を彼が指揮を執るとなって、ますます息巻いているようだ。
彼らの息子 フォルクハルト・アジェールはラルフ(次男)に言わせると、「口ばかりの無能」とのことで、ますます勝てる気がしない。
どうせ負け戦なのだから、馬はできるだけ出さないようにしようか。
何はともあれ、この件が片付くまで玉座を降りるわけにはいかんだろう…。
ああ、頭が痛い。




