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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第6章 繋がるセカイと囚われの冒険者
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異世界遊戯 -06-06-

閉じ込められて四日目。カナデは暇を持て余していた。

ギルドの方はしっかりとした部下のおかげでエイダイともども全く仕事がない状況だ。ほかの部署にしても、明日の顔合わせまで大した仕事もない。

というか下手に顔を出してレイさんに捕まるのも嫌だ。

ということで…


「シオン。ファントム狩りに行こうか」


「え?構いませんけど…どうやって」


転移(トランジション)つかえば日帰りで行ける」


「なるほど。じゃあ、行きましょうか」


ああ、ちょっとまって。と、立ち上がったシオンを止める。


「もしよかったらこの魔導師のローブ使って…あんまり着てなくてもったいなし」


「ありがとうございます。たぶん制服がもらえるまでは着させてもらいます」


メニューを操作すると、昨日まで私が来ていた装備に着替えたシオン。


「じゃあ行こうか」


魔法陣を足元に描き、目的の森まで転移する。


ゲーム中で幾度か来た場所だが、現実だと思うとかなり気味の悪い場所である。


「どの辺に転移したんですか?」


「ファントムの出たあたり」


「…ショートカットしすぎでしょう」


そういいつつも魔法の起動を始めるシオン。さっきから背後でガンガン殺気を放ってくる亡霊(ファントム)に先制の一撃をくらわす。


2人同時に打ち出したホーリーランスは思いのほか効かず、まだ95%以上の体力を残していた。常時MP吸収の効果で私のMPは地道に減っていく。


「前戦った時より強くなってません?」


「試しに前と同じ奴を当ててみようか?」


「お願いします」


「《二重起動》ホーリーランス!サンダーランス!「雷光の一撃(ライトニング・スタブ)」!」


ファントムの体力は10%ほどしか減らない。が、


「前からそんなに変わってないと思うけど…」


「そうですか?」


器用に鎌で相手の攻撃を弾きながら答えるシオン。


「そろそろ交代しよう。疲れるでしょ?」


「わかりました」


刀を抜き、シオンに斬りかかる大鎌を思いっきり弾く。敵の攻撃はどうやらこっちに向いたらしい。スキルの補助か、体は動き、易々と攻撃を弾き続ける。


「シオン!適当に光の魔法撃って!」


「わかりました。黄金の十字架(ゴールデン・クロス)!」


地面を走る十字の光に合わせて、刃を振るう。


「【結び・破軍】!」


【重ね】は、文字通り魔法に重ねて打ち込む技で、その威力はほとんど通常の斬撃と変わらない。

しかし、【結び】は触れた魔法を結び、その威力を刃に乗せて打ち込むことができる。

魔法は解除されるが、対象に当たらず、拡散してしまう部分の威力も上乗せされるので、かなりの破壊力を持つ。


一気に50%ほどの体力を削られたファントムは苦しげに揺らいでいる。


「すごい威力ですね」


「やってから気づいたけどすごいMP消費するコレ…」


シオンが苦しむファントムにひたすら光弾(ホーリーショット)を打ち込みながら答える。


「刃に魔法を抑え込むためにMPを消費してるって感じですね…あ、そろそろ倒せそうですよこのファントム」


既にHPが5%を切ったファントムに容赦なく光弾(ホーリーショット)を浴びせ続けるシオン。カナデも加わり休む間もなく攻撃を浴びせられたファントムは青い光の塵となって消えた。


――――――――――――――――――――――――――

サブクエスト ハジメテのボス戦 が達成されました

報酬:

スキルクリスタル(青)×3

スロット・ストーン×1

――――――――――――――――――――――――――


目の前に現れた表示枠(フレーム)を確認すると、一つため息をつく。


「これ、まさかプレイヤー全員に出てないよね?」


「そうでないこと祈りましょう…ファントムのいたところに箱が見えますが…どうしますか?」


たしかに、朽ちた小さな木製の箱があった。しかも2つ。


「1人1個ってこと?っていうかドロップしないんじゃなかったの?」


「このタイプのモンスターは体がないので特別措置では?」


まあ、いいか。と箱を開けてみる。中には銀の綺麗なペンダントと金貨が3枚入っていた。


「…これはもらっといていいんだろうか」


「結構かわいいですよこのペンダント」


――――――――――――――――――――――――――

星刻のペンダント

亡霊と化した戦士の恋人が持っていたもの。30%で魔法を反射する。

――――――――――――――――――――――――――


「呪われたりしないよね?っていうか私とシオンで2つあるけどその辺は大丈夫なの?」


「さあ?」


と言いつつも、しっかりと装備する。


「この先に街があるみたいです…ずいぶんと朽ちた看板なので現存するかわかりませんが」


「マップで確認してみたら?」


マップを開き、確認する。現在地はティーモルの森の東端に位置する。そこからしばらく東に進むと街がある。


「行ってみましょうか。転移門で行ける範囲が広がるのはいいことですし」


「そうね」


ここから街までは徒歩で半日ぐらいの距離…およそ30kmほどであるが、神速で時速120キロまでスピードを出せる2人にとっては15分ほどの道のりだった。


森を抜けて街道らしき道に出ると霧が晴れたが、まだ昼前だというのに暗いままだった。

街道も使われている様子もなく、かなり荒れている。


「…ホントにこの先に街あるの?」


「転移門が普及したので街道が使えなくなった…という感じだと信じたいです」


暗い道を進むこと10分。向こう側に、灯が見え始めた。どうやら街自体はあるらしい。

門にたどり着くと、警備をしていた兵士たちにギョッとされた。


「森の方向から女だと!?アンデッドではないのか!?」


「いえ、生きてます。フロール王国から森で迷って気づいたらここにたどり着きました」


淡々と返すシオン。


「ちなみここは…?」


「…ここはメンシス=へカテー神国。女神へカテー様の庇護下にある国だ」


「女神…?ってことは神殿とかあったりするんですか?」


カナデの問いに兵士が答える。


「あるらしいが、邪教徒たちが邪魔をしていてな…現存しているのかどうか怪しい」


「で、入れてくれませんか?」


「フロールの国の者なら身分証があるだろう」


「無いですね。フロール出身じゃないんで」


「なら、何か代わりになるものはないか」


アイテム欄を探してみる。私が何をしているのかわからない兵士は怪訝な顔をしている。

アイテム欄の底の方に「ギルドカード」なるものを発見した。シオンも同じく見つけたらしい。それを見せてみることにした。


「スペーラ自治領?あのフロールが問題にしてたとこか…よくここまで来れたな。まあ入るといい」


「入れてしまって大丈夫ですか?フロール王国と問題になったり…」


「大丈夫だろう。一応上には報告するが、あの国とはずっと仲が悪いんだ。それに、お前らの強さを見る限り、自治領側についた方が得だとオレは思う。」


ああ、忘れていた。とつぶやくとこう続けた。


「ようこそ日の昇らぬ国メンシスへ。この門を通る50年ぶりの客人よ。オレは騎士団副団長のエルバートだ」


「ご丁寧にどうも。私はカナデ、連れはシオンです。観光と転移門の使用許可をお願いします」


「わかった。ただ、転移門の許可発行は少し時間がかかる。ゆっくり観光を楽しんでくれ。発行が終わったら連絡しよう」


そういうと、エルバートさんの背後の門がゆっくり開いた。


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