冒険者の街 スペーラ -06-02-
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白い光の次に見たのは青々とした平原の風景だった。
「ここどこ?」
シオンが急いでマップを確認する。
「サイフラ平原…?」
「そんなとこあったっけ?」
「たぶんここは始まりの平原です。名前がサイフラ平原というのでは?」
「あー、そうかもね。じゃああっちの方に小さく見えるのはプリマの門かな?」
「位置関係的にもそのようですね」
「じゃあ反対側に歩いていけばスペーラとかいう場所にたどり着くわけだ」
進行方向を定め、歩き出す二人。ここからスペーラまでは徒歩一日?そんなに距離あったっけ?
『カナデ今どこ?』
「あ、姉さん。今、プリマ出たぐらい」
『よく出れたわね。北門完全に閉鎖されてて出れないんだけど』
「そうなの?シオン、プリマの北門閉鎖されてるらしいよ?」
「姉さんもそこに?」
「姉さん。ゼオンさんも一緒?」
『うん。オトハもエイダンもカルラもいる。誰かさんが王都で騒動起こしたおかげでプリマまでは来れたみたい。ほかにも何万人かいるんじゃない?まだ結構な人数、街の外周ってくることになりそうだけど』
「全部吹き飛ばせば?」
『なんか騎士団が魔法制限の結界みたいなの張ったせいで無理』
「外側から吹き飛ばしましょうか?私とカナデさんなら行けると思います」
『ホント?お願いするわ』
「姉さんはとりあえず冒険者の皆さんを遠くまで避難させて。派手にやるから」
『りょうかーい』
通信を終え、歩く向きを変更する。《神速》を使えば門まで1分かからないだろう。
「カナデさん。どれぐらい派手に行きますか?」
「一つ考えてたことがあるんだけど」
「なんですか?」
「二重起動と二重起動で四重起動っていうのを」
「面白そうですね。是非やりましょう」
「《二重起動》断罪の宝剣、冥府の門」
「《三重起動》熾天使の息吹、神代の洪水、大地鳴動」
『避難終ったわ。あれ?カナデー?』
「「神々の黄昏!!」」
五重に重なった魔法陣から灰色に近い白の光があふれだし、二人の視界を塗りつぶしていく。
その光景を目にした二人はこう思った。
ああ。やりすぎたな、と。
「シオン。逃げようか」
「そうですね。それがいいかと思います」
今しがた無に帰した城壁にくるりと背を向け、スキルを発動させ全力で走りだした。
『誰が城壁ごと消し飛ばせって言ったぁーっ!』
「出れたんでしょ!?よかったじゃん!」
「早急に道から離れることをお勧めします」
『さっきの魔法でこっちからも何人か逝ったからね!?』
「その場合はどこに?」
「スペーラの転移門に落ちるらしいです」
「結果オーライ?」
「そうですね」
『いやいや違うでしょ!』
眼前に浮くフレームから何やら文句が聞こえるが、聞かないことにする。
カナデはその宙に浮くフレームを手刀で叩き割った。
「さて、ここまで走れば姉さんたちとて追いつけまい」
「ここでおよそ半分ですね。もう少しで街が見えてくるかもしれません」
「神速使ってる時って時速300キロぐらい出てるんじゃないの?」
「多分車ぐらいだと思うんで…120キロぐらいじゃないかと」
その後、神速によって加速し、10分ほどでその美しい街の風景を見ることになった。
美しく整えられた形をしている石畳がまっすぐ引かれ、その真ん中にはギルドの建物が存在している。一応この街にも向こう側の住人がいるようで少なくはあるが、宿や飲食店が軒を連ねている。道具屋や武具関連の店がないということは、自分たちで造れということか…。
道に沿うように流れる水路をたどり、ギルドの向こう側の海を臨む場所には魔法研究機関が堂々と立っていた。
他の街のように城は存在せず、正面の門付近に設けられた迎賓館のような場所で応対を取るようだ。
「やあ。速かったね。と言っても何人か死んだのが帰ってきてるから一番ではないけど」
目の前には茶髪の青年が立っていた。
「初めまして。僕がこの街の代表ハルト。お噂はかねがね、カナデさん。シオンさん」
「初めまして。主戦力の皆さんはプリマで足止め食らってたから解放してから来ました」
「なるほど…。彼らはその犠牲者か」
証言によると『プリマにいたら目の前を白に包まれて気が付いたらここに立っていた』と。
「エイダン…いやエイダイが着き次第ギルドの運営をやってもらうことになるから頑張って」
「ええー…」
「カナデさん私も手伝いますから元気出してください」
「まあとりあえず部屋でも見てきたら?僕はヘラ寮の最上階なんだけどかなりいい部屋だったよ?」
「そうなんですか?行ってみますか?カナデさん」
「うん。ちょっと気になるね。ヘシオドス寮ってどこですか?」
「あの一番高い奴だね。あの寮だけ何故か7階建なんだよ。ほかは全部6階建てなのに」
「カナデさん?何階ですか?」
「7階だね」
「その手の幸運は絶対引くと思ってました」
シオンに半ばあきれられながら寮への道をゆくのであった。
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