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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第5章 墜天使と不死の森
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現実世界の夜明け -05-07-

これで5章最後になります

年が明ける寸前に眼鏡部長から電話が入った。

文芸部で初詣に行きたいと誰かが言い出したらしく、強制的に行くことになった。と言っても、自宅から徒歩10分圏内なのでさほど苦ではないのだが。


外に出ると冷たい風が吹き付けた。しっかりとコートを着込み、マフラーで口元まで覆う。

着物ぐらい着てきてもよかったのだが、ほんの数時間前に呼ばれたところで用意できるはずもなく、かなりラフな格好になっている。


集合場所に行くとしっかり着物を着込んだ女子(たぶんこいつらが集合の犯人)とその他。

特に何もなく普通に参拝を終える。

まったくこれだけのためにこの寒い中来たのだと思うと嫌になってくる。最近の若者なので初詣なんかもぶちゃけ面倒だ。


普段は見向きもしない癖にこういうときだけ集まってくる人たちをかき分けながら参道を逆流する。VR世界(あっち)でも現実世界(こっち)でも人混みはキライだ。

賑やかなのとうるさいのとは別次元なのだ。


「北条先輩。先帰りますね私」


「…ああ。急に呼び出してすまなかった」


先輩が帰るなら私も、俺もと解散していく後輩たち。もちろん振袖組は全員残って北条先輩にべったりだ。


「響先輩」


珍しく苗字で呼ばれた。声の方向を振り返ると後輩のうち一人が手招きをしていた。どこかで見たことある気がする…というか同じ部活のはずだけど。


「明けましておめでとうございます…ベルさん」


「!?…って、シオン?同じ学校だったんだ…」


「うちの姉さんは静音先輩と違って有名人でないですからね」


「漸苑さんもいるのか…」


「いえ。姉さんは一駅向こうの高校に行ってます。中学までは静音さんと同じ学校だったはずです」


「そうなんだ。っていうかよくわかったね」


「響先輩、全くアバターいじってないじゃないですか。眼は暗い赤になってましたけど」


「響先輩って呼ばれるの慣れてないから、奏って呼んで」


「奏先輩?」


「リアルで接触されると案外恥ずかしいものね…」


「そうですか?私は特に何も」


「今日はどうするの?」


「今日こそファントムと決着をつけようかと…」


「一緒に行く?」


「是非」


いつの間にか人混みを離れ住宅街の中まで来ていた。他愛もない話や某ゲームについて話してながら歩く。前を歩く奏に半歩さがってついてくる紫苑。大変かわいらしい。

静けさの中に鳴るのは紫苑の携帯。


「すいません…姉が迎えに来るそうです」


メールを確認しながら、過保護な姉で…。と笑う紫苑。


「ここから家近いの?」


「いえ、20分ぐらいかかるんですけど、自転車は止められなさそうなので歩いてきました」


「なるほど。もう家につくんだけど、うちで待ってる?」


「お邪魔でないなら。もう家を出たそうなので姉さんもすぐ来るでしょうし」


「じゃあ上がって行って。どうせ母さんも父さんもいないし。あ、漸苑さん家わかるかな?」


「大丈夫だそうです」


「そうならよかった。姉さんただいま」


玄関のドアを開けながら呼びかける。リビングからテレビの音が聞こえるのでたぶん寝てはないと思う。


「お帰り。早くない?…って紫苑?なぜ?」


「お久しぶりです静音先輩」


現実(リアル)で逢うのは2回目ね」


「なんか文芸部だったみたい」


「あんた幽霊部員だもんね。そりゃ知らないか。まあ上がって、寒いから。おとはーお茶入れてお茶」


「お構いなく。姉さんが来たら帰るので」


リビングに設置された炬燵へと入る。年明けの3時に何やってんだろ…。


「おねーちゃんお茶ないんだけど」


「あれ?なかったっけ?で、何を持って来たの?それ」


「お汁粉。いや奏お姉ちゃんたち冷えてるだろうし」


「お茶なら新しく買った奴が戸棚の下の段に入ってたと思うけど」


「え?先に言ってよ!」


「お汁粉って食べたらのど渇かない?甘すぎて」


「あ、それなんとなくわかります」


「ほら二人もお茶欲しいって。あと私もお汁粉欲しいなぁ」


「自分でしてよもう。私は自分のお餅を焼くのとお茶を入れるので忙しいから」


インターホンが鳴る。たぶん漸苑さんかな。


「私出て来るから。音羽!私のお餅も焼いといてね!あと漸苑の分も」


りょーかいと音羽が返事をする。


「久しぶり静音。妹がお邪魔していると聞いて」


「うん。入って。寒いでしょ?」


「すまない。じゃあ上がらせてもらう」


「今音羽がお汁粉作ってるから食べて行ってよ」


「本当?私甘いものには目がなくて」


「姉さん…はやかったね」


「初めまして?漸苑さん」


リビングに入ってきた漸苑さんはVR世界(あっち)で見た世界とあまり違いはなかった。紫苑よりも髪は短く、カッコいい。女子にモテそうな人だ。


「自転車飛ばしてきたからな。この家に来るのも4年ぶりぐらいかな?」


「そうね。まあVR世界(むこう)では毎日会ってるんだけど」


「お姉ちゃんお汁粉できたよ」


「ありがと。かなでー寝るなー起きろー」


「…ええーもう良くない?寝てもよくない?年明けたし」


「紫苑。こんな時間だし早めにお暇しよう」


「お餅うにょーんって伸ばしながら言われても説得力ないですよ」


「おとはー!寝るなら部屋で寝ろー!」


「大変だな静音…」


「まったく…あれ?紫苑寝てない?」


「ホントだ…さすがの私も背負って帰るのは辛いかな…」


「いやそこは起こそうよ!」


「なんか完全に寝てしまった人を起こすのってかわいそうじゃないか?」


こうして朝日が昇り始めたころには、ほぼ全員が眠りの世界に落ちて行った。炬燵に突っ伏して寝る奏、その隣に紫苑。紫苑の正面に漸苑、横で寝転がっているのは音羽。

静音はと言うと漸苑が寝た時点で起こすのを断念し、自分の部屋で眠りについたという。


※ちなみにこのまま全員昼まで目を覚ましませんでした。


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