火の子祭り -04-07-
「それでボスってどんなモンスターなんですか?」
「エイダンとスクルドは見ているだろうが、お前らは初めてだったな」
「ボスはアイアンアントっていうモンスター5体だけなんだけどビッグアントが湧きまくるから近づけないし、火の魔法で一掃しようにも魔法無効で、魔法撃ってる間に増えるし最悪だった」
「えぇー…」
「また虫かぁ…」
「ウルさん!元気出して!」
「ボスのところでこの笛使ったらどうなるんだろ…」
「やったらたとえリリーでも許さない」
「あはは…やらないって。その眼怖いよ?」
「やっぱりアイアンアント狙いで武器攻撃か…私、杖なんだけどなぁ」
ゼオンさんが冷静に考えて、その結果落ち込んでいた。
「お姉ちゃんの刀って魔法じゃなくて斬撃扱いなんでしょ?じゃあ火系統纏わせたら一撃じゃない?」
「否定はしない」
「なにせあの熊一撃で屠ってたもんなー」
「…おい着いたぞ。結局どうする?」
「私とお姉ちゃんだけで十分でしょ?」
「えー…」
「まあさっきのアレに比べればあそこで蠢いてる50いるいないかの虫なんて可愛いもんだろ」
「というかここまで来るのにあれ以来ほとんどエンカウントしなかったんだが、絶滅したか?」
「なんか策があるならやってみたら?というかぶっちゃけ私はもう吐きそう。ワーム系だったらもう吐いてるけど」
「まあ、私に任せてよ。私が魔法で取り巻きを焼くからお姉ちゃんは後ろからそのまま本命のところまで行ってね?」
「うん、わかった」
「成功するかわかんないけど《二重起動》ファイヤーランス×ファイヤーランス!「炎の二つ牙」!!」
両手に生み出した炎の槍は以前何処かで見た時よりも猛々しく、遠くからでも火傷しそうなほどに燃え盛っていた。カルラがそれを見ておお…と小さく歓声を上げていた。
蟻の群れに向けて駆けだしたスクルドを追う。二つの炎の牙は魔法に耐性を持たないそれを容赦なく薙ぎ払っていく。炎に包まれ、燃え尽きるようにして散っていく。
「そろそろかな…《神速》からの[重ね・火焔]!」
紅を纏ったやい刃で切裂いた虫の体は、皆様のご想像通り、一瞬で散った。魔法無効の奴らは弱点の系統攻撃喰らったらこんなものか…。
結果として、5分もたたないうちにすべてを討滅した私たち二人。
「…本当にやるとは思わなかった」
「それでこの後どうするの?」
「まあ一応王都にでも行ってこようかと…ここは相性が悪いから私たちはできれば別のところでレベル上げしようかと思ってる」
「水の都とか行ってみれば?」
「あーそれいいかも」
「とりあえず王都に行こうか」
「ベルちゃんちょっと私の魔法談義につき合ってくれないか」
「ゼオンさん?いいですけど」
「アン?なんかテンション低くない?え?…ほとんど活躍できなかったって?私なんて笛吹いてただけだよ?」
「あそこの蟻んこどもオレたちがどれだけ苦労したと…」
「私もあんなにあっさりいけると思わなかった。さすが私のお姉ちゃん」
「ウルまだ吐きそうか?大丈夫か?」
「ちょっとテンション素に戻ってきたら急に来た…」
「そういえばお姉ちゃん虫ダメなのによくあの森で耐えたね…」
「前提から聞くけど…吐いたりできんの?」
「さあ?」
「やっぱり風をベースに魔法を組み合わせた方が範囲は広がるか…」
「ブリザードとトルネードとかやってみたいですね」
「しかしそれだと…、やってみるしかないか…」
「やってみるって…あれ?前方からモンスターの大群がまっすぐこちらへ」
「よくわかったな…確かに土煙がこっちに近づいてきてる」
「どっかの馬鹿がモンスターをトレインしてるように見えるんだけど?」
「どこかで見たことあるバカがトレインしてるように見えるわよ?」
「ヨウだな」
「ベル、ゼオン。さっき考えてたやつ打ち込んで。ああ大丈夫馬鹿は死なないから」
「あれ?お姉ちゃん。バカって不死身の生き物だっけ?」
「「《二重起動》ブリザード!トルネード!「輝く暴風」!!」」
きらきらと日の光を反射しながら、迫りくる大軍を、凍らせ、砕き、裂き、吹き飛ばしてゆく。
途中、プレイヤーの赤いエフェクトが散った気がするが無視する。
「ヨウー死ぬなー」
「死んでから言っても」
「もうすぐ王都?」
「王都についたら解散でいい?」
「名残惜しいが、そうだな」
「エイダン、またギルドから呼び出し?」
「おう、【精霊の湖】へのルート見つけたらしい」
「うそ!?先こされた!?」
がやがやと会話を続けながら、途中現れたゴブリンナイトを片手間に倒していく御一行。
彼らの目の前には王都の巨大な門が見え始めていた。
もうそろそろ異世界とか言い出すので覚悟しといてください(@A@)




