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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第28章 戦士たちへの鎮魂歌
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王に捧ぐ七重奏 -28-03-

自らの館に戻り、今後の予定や、法整備の資料を眺めていたゼリは部屋に飛び込んできたゼロアの声に集中を乱された。


「ゼリ様!」


「どうしたゼロア。五月蝿いな」


「あ、すいません……じゃなくて!」


「ニージェルが落されたの?」


「それについてはまだ連絡が来てませんが……」


ゼロアの後ろからレヴァインが現れ、告げる。


「魔王様がこちらに」


「……面倒なことになったな」


「どうしますか!?」


「ゼロア、今すぐスペーラに行ってくれ。それと転移門を誰かに潰させておいてくれ。移動されるとまずい」


「了解しました!アニマード!ちょっと手伝ってくれ!」


ゼロアが外へ出ていくのを見送る。

そして、レヴァインが切り出す。


「それで、どうしましょうか」


「今、アレはどこに?」


「応接間に通しています」


「わかった、とりあえず会おう」


「よろしいんですか?」


「君らじゃ話通じないだろうしね。いざとなったら館ごと吹き飛ばして時間かせぐから、レヴァインは住民の避難を」


「了解しました」


ゼリはため息をつきながら、重い足取りで応接間に入る。


「……どうかされましたか、シークエスト様」


突如、狂い始めたと思うと戦争を始め、女神たちに打たれて死してなお黄泉返り、狂気を増幅させて戻ったかつての友。

どこで踏み外してしまったのか、止めることはできなかったのかと後悔が残る。


「何時の間にやら、忌まわしき女神たちが戻ったようだ。城も落とされた」


「本当ですか」


「ああ、全く。どうして奴らは私の邪魔をする!」


拳をテーブルに叩きつける。


「……シークエスト、君は何になりたいんだ?」


「そんなことは決まっている。この世界を―――この9つの世界を統べる王となる、それだけだ」


「それならば、今あなたは王としての資質を試されているんです」


「なるほど、つまり、女神どもを跪かせれば良いのだろう。マクロファーの奴がそういうのは得意だったな」


必死に口説き落としたアイツと貴様の下衆な計画を一緒にするなと言いそうになったが、


「……しかし、マクロファーに連絡を取る方法は」


「そうだったな……ゼリ、少し王都まで兵を率いてあ奴らを滅ぼしてこい」


「……おそらく、我々が行くよりもシークエスト様が単騎で乗り込んだ方が勝率は高いと思われますが」


「謙遜をするな。我が友よ」


「……いえ、やはり行くことはできません」


「何故だ?私の守りならば気にすることはない。お前の領地は兵の数が少ないが、手練ればかりだ。大丈夫であろう」


「そうではなく、」


ゼリが地図を取りだし、ペンを持つ。


「デヴァ―ス、クピディタス領、マクロファー領、イラム領、リビード領、アルガンディ領、グリティア領―――そして、アルブルとアカントスそのすべてが既に陥落しており、もはやシークエスト様の指揮下にはありません」


地図の地名に1つずつ×を付けていく。


「なんだと!?そんな報告は受けていないぞ!?」


「私も先ほど報告を受けたところです。どうやらここ1週間ほどの間に全て落されたようですね」


「そんなふざけた話があるか!」


「事実です」


「あれほど軍備を整えろと通達しておいたというのに!」


「そのせいです」


「なんだと?」


「軍事力は上がったかもしれませんが国力は大きく下がりました。民衆はおろか兵たちもかなりの割合が飢えています。それもすべて、あなたが纏う瘴気、それが原因です」


「一般兵などには期待していない!一騎当千の将たちはどうした?」


「彼らとて、負ける戦はしないでしょう。さて、ここで問わせてもらいますが、あなたは今、王としての資質を試されています。あなたは自分が、民を統べる王にふさわしいと思っていますか?」


「無論だ」


「わかりました」


ゼリが急速に魔力を溜めはじめる。


「何の真似だ!?」


「愚王を、討ち取る。それだけです」


極限まで濃色した破壊の魔法、それをシークエストに向け、放った。

黒紫の閃光が吹き出し、館諸共シークエストを吹き飛ばした。

自分が背にしていた部分以外の屋敷はほとんど消し飛んだが、


「意志は統一できなかったけど、君を討ち取らなければ他の皆に面目が立たないからね。さすがにこれで――」


「甘い」


「ぅぐ!?」


突如横からの打撃に襲われ、激痛に顔をゆがめる。


「―――なぜ!?」


「まさか貴様に裏切られる日が来ようとは。しかし、私が再生力が高いのは知っているであろう?」


「それはもはや再生という範疇を越えているぞ、シークエスト!いや、魔王デストラード」


かなり痛む脇腹を抑えながら、ゼリが叫ぶ。


「友人として、せめてもの優しさだ、一撃で葬ってやろう」


「くっ……」


「さらばだ」


「それはこちらの台詞だぁ!」


こちらに高速で走り込んできた少女の勢いを全く殺さずに繰り出した蹴りによって、魔王の身体が激しくバウンドしながら転がっていく。


「間に合ったみたいだね」


「さて、さっさと終わらせるぞ」


「まったく、面倒かけないでくれる?あと、オトハ。全然元気みたいだけど」


「次は逃がさん……というかそれ以前に、体力が一瞬で回復したのだが」


「……これは厄介な相手ですね」


スズネが険しい表情で立ち上がる魔王を見る。


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