駆け抜けろ勝利へ -28-01-
『作戦開始時刻15秒前です』
スズネのアナウンスが響く。
エイダイたちは既に門を破れる位置に待機していた。
「結局シオンは間にあわなかったか」
「カナデさんの手当てとかありますもんね。まあ具体的に何をしてるかは言えないですけど」
「それお前の妄想だろ。シズネに殺されるぞ」
エイダイが剣を担ぎ、準備をする。
『開始です!』
号令と共に、一斉に隊員たちとともに走る。
まだ昼間だというのに魔都ニージェルの門は閉まっており、外部との交流を断っているというよりは、中にいる十人を逃がさないようにしているようにしか見えない。
「ぶち破るぞ!」
扉を全力で攻撃し、破壊する。
「なんかこんなことばっかやってますね」
「攻城戦なんかこんなもんだろ。お前ら、一般市民には迷惑かけないようにな!」
声をかけながら自らも石畳を蹴る。
ニージェルの中心に存在する城までは思ったよりも距離がある。
『残りの魔将ですが9位、10位が残っています。因みに魔王が1位のようです』
「了解、お前ら気引き締めていけよ!」
「応!」
「はっは、ここはオレが大金星を、っと、ぬおわ!?」
「おい、バカがこけたんだが」
「ほっとけ」
「おい、ちょっとは構えよ!泣くぞ!」
「ヨウさん、一応街の中なので、えっと、オブラートに包んでいうと――黙れ」
「お、おう」
カケルのマジトーンにビビるヨウを無視して進む。
『アレ?なんかしゃしゃり出てきた魔人轢き潰したんだけど……』
『綺麗に頭に蹴りいれてたくせに……あ、封印はしておきましたよ』
「こっちも来たら誰が担当する?」
「ヨウだろ。手柄が何とか言ってたし」
「隊長前、前」
兵たちがずらりと並び、その先頭には一人異なる雰囲気を持つ男。
「序列第9位、ロア。参る」
「おい、任せたぞ」
「強そうですね」
「じゃあ、がんばってください」
「え!?マジで」
敵はヨウに押し付け、こちらは兵たちの間をすり抜けて一気に城まで進む。
「こちら2、4。所定位置に着いた。これから展開する」
『3番もオッケー』
『こちらも大丈夫です』
『おわあああああああ!?こいつ強いし!』
「大丈夫だ気にするな」
念話で届いた泣き言を無視する。
「総員構え」
『10カウントで攻撃』
「長い、3で」
『3――2――1――今です!』
扇状に展開した隊員たちが一斉に放つ魔法は、まっすぐ魔王城へと進み、そして、途中で消滅した。
「――は?」
「どうなってるんですか」
『わかりません、急いで検証します!』
「タロウ、ちょっとそこの壁に魔法剣撃ってみてくれ、カケルは普通に物理攻撃だ」
「了解」「わかりました」
2人が城壁へと攻撃を仕掛けるがその威力は壁に触れた瞬間に消滅する。
「……何かものすごい結界が張ってあるみたいだな」
「こちらの攻撃が完全に消されましたね」
「大陸を隔ててたあの結界と似たような物じゃないか?」
そう判断したところで、スズネから連絡が入る。
『城を半球型の結界が覆っていることがわかりました。城壁もそれに沿って円形に作られているようです』
『あはははは、ちょっとおじいちゃん〆倒してくるね』
『オトハ、老人虐待はダメよ。ゼオン、やってしまって』
『了解』
シズネがゼオンに無慈悲な命令を下したため、一人の老人の命が散った可能性があるが。
「オトハ、これ解けないのか?」
『たぶん、装置を壊さないと結界自体は消えないかな……もしくは高火力で一点突破するか』
『一瞬隙ができれば、そこに攻撃を集中させて城を破壊してしまえば』
『そうね。それがいいと思うわ』
「でもそうなると、一人でコレをぶち破れる人材がいるだろう」
『わっはっは、勝ったぞ!そっちに合流する』
『それでは、オトハさんお願いします』
『とりあえず、みんな一回集まろう。そんな広範囲は抜けないと思うし』
オトハの号令で正面部に全員が揃う。
そして、最大限強化したオトハが結界に向かって攻撃を叩き込む。
光の衝撃によって大きくひびが入り、連打によってわずかな空間が開く。
「直り始めてる!急いで!」
「全員撃て!」
一斉に放たれた魔法の一部が城へと辿り着き、爆炎を上げる。
しかし、
「いや、偶然結界を維持してる装置が壊れてくれたり……しなかったね」
「オトハの攻撃でこの様じゃあ穴から突入ってのも難しそうだな」
全員が思案顔で俯いたその時、東の方から銀の髪の少女が飛来する。
『状況は理解しました。皆さんは攻撃の準備をしていて下さい』




