安寧への礎 -27-04-
「ハルトさんから、神殿が無事起動したという報告を得ました。これより、リビード領の攻略に入ります」
『了解。4番隊。出る』
「よし、二番隊も突っ込むぞ」
「「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」」
エイダイたちが駆けだすのを見送ってからカナデ達の出発となる。
「門を潜って北西に少し進んだ先ね。行くよ!」
カナデが駆けだすのに応じて、マクロファーを含む潜入組が進む。
「1,5先行。門より西側の壁抜いて」
「了解!」「わっかりました!」「はい!」「よし、行こう!」
4人が先行する。エイダイたちは既に門にたどり着いている。
『4番交渉失敗、手紙の受け取りも拒否。戦闘開始』
『2番も同じく。お前ら、派手に行くぞ!』
「了解です。気を付けて―――ハルトさん、交渉は無理そうです。とりあえず、領主館まで行きます」
『了解』
「非戦闘員への攻撃は全面的に禁じる!戦闘員もできるだけ封じるように」
了解、という声が上がる。
『カイトです、あと一撃で通ります』
「了解、全員。加速!2番はマクロファーさんを補助、3を先頭に1,5続いて突入。殿は4班!」
「わかりました!」「アスカ、索敵に入ります」
「3班行きます」「行きます!」
マナミとタツヤが先行して壁をくぐり抜ける。
それにカイト、ナナミ、ミサキ、イーリスが続く。
走りながら少し後ろを走るアスカに問いかける。
「アスカ、敵は?」
「大体門の方に行ってるみたいですけど、領主館の前に3」
「了解。マナミ、タツヤ気を付けて」
『おっと、ちょうど接敵です』
『1班援護入ります!』
『イーリスです。サポートに入ります。ミサキさんは中へ潜入します』
「了解」
カナデとシオン、そしてツバサ、モエと共にマクロファーがついたころには、領主館の前でも戦闘が激化していた。
しかし、戦闘は一方的で、達也たちが傷を負ってもすぐにイーリスが回復してしまうためかなり一方的な勝負になっていた。
「ゼノム、エリゴス、パルック……かなり上位のものを集めているようだが」
「問題ありません。カナデさん、どうしますか?」
「アスカ、リゼット。ここは任せた。指揮はアスカに移譲」
「了解です!」
「突入するよ!」
『こちら、ミサキ。内部執務室内に上位の魔人。おそらく魔王直属の将です』
「了解。部屋探すの面倒だから入口まで全部壁抜いてくれる?」
『お安いご用です』
バキバキ、と凄まじい音が響き扉が内側から吹き飛んだ。
「カナデさん」
「ありがとう、ミサキはこっち側を護ってくれる?」
「はい、わかりました」
「モエ、シオン、先行」
「了解」「はい!」
壁に開いた穴を通って執務室だと思われる扉の前へと走っていく。そして、確認のためか外へ顔を出した魔人に斬撃を浴びせた。
「ぐおおおおお!?何だ!?」
「目標、18位ファンク」
「行きます」
ドアを破壊しモエが魔人を廊下に引きずり出す。
「カナデさん、こちらで片付けておきますので」
「お願いね。それじゃあ、マクロファーさん」
「……ああ」
「どうかしました?」
「私も抵抗したらこうなっていたのかと思うとな」
「さて、どうでしょうね」
カナデが敢えて後ろに下がり、マクロファーを前に出す。
「……ずいぶんと賑やかな訪問だな」
「貴様がゼリからの親書を拒まなければこうはならなかった」
「……魔王様はわかっていないだろうが、あの男が魔王様をよく思っていないというのはわかっていた。だからお前に合わせないように画策していたというのに」
「ふん。御託はいい。時間が惜しい。降伏しろ」
「悪いが、マクロファー。私は二君に使えるつもりもない。それに、あの方に剣を向けることはできない」
「イラムと同じようなことを」
「あの男も不器用な奴だ」
リビードはおもむろに短剣を取り出す。
「悪いが、私は死を選ぶ。私の部下には適当な職を与えてやってほしい」
「待て、リビード」
詰め寄ろうとしたマクロファーをカナデが抑える。
「何をする!」
「短剣はフェイクです。すでに彼は服毒しています」
「なんだと……」
「よくわかったな」
口元からゆっくりと血を流す。
「イーリス、すぐに」
『了解です』
「符術――時間停止:5秒」
時の紋様が描かれた符を大量に放つカナデ。
「な!?」
「き、来ました!」
息を切らせたイーリスがやってくる。
他の地点ではもはや戦闘は終了しているようだ。戦闘音は聞こえない。
前方のリビードは展開された陣の中で硬直している。
「解毒できる?」
「……私には無理です。ですがあと10秒待ってください」
そういうとイーリスは転移を使用する。
「な、なにが!?」
「ごめんなさい、あと5秒」
再び硬直させられるリビード。
同時に転移でクロエを連れたイーリスが現れる。
「地質改善のためにクピディタス領に行っていてよかったです」
「解毒します!」
注射器に一番強い血清のカートリッジを装填し、停止が解けた瞬間のリビードに突き刺した。
「何が!?痛!?なんだ!?」
「――はい、大丈夫です」
「ありがと、クロエ」
「いえいえ、じゃあ戻りますね」
クロエが戻っていくのを見送る。
そして、呆然とするリビードは。
「さて、リビード。自殺を阻まれたわけだが、どうする?」
「……おい、解毒薬まだ見つかってない薬なんだぞ。理不尽だ」
「諦めろ」
「ツバサ、手錠」
「封印でなくていいんですか?」
「まだ聞かないといけないこともあるし」
「わかりました」
こうして、迅速にリビードの制圧を完了した。
「カナデです。終了しました」
『わかった。少し休憩していて――『カナデ、増援……というか魔物の大群が!?』
「すいません、まだ終わってなかったようです!」




